原作読まずに映画から入ったら、地味な作品だけに良さがわからず終わってしまったかも。
辞書の名前が「大渡海」とは、何と壮大なのでしょう。
言葉が海なら辞書はその海を渡る舟。
いやはや、たかが辞書、されど辞書。現代ではネットで検索すれば何でも調べられる世の中となり、紙の辞書の存在が薄くなり、でもやはり辞書の力、信憑性は確か。言葉の水先案内人である辞書を侮る事なかれ。
新しい辞書大渡海の制作におよそ15年。大渡海の立ち上げは、わずか五人のチームで粛々と始まった。
主人公馬締役は松田翔平。どちらかというと軟派なイメージの彼が少々ダサくてその名の通り真面目一本なのが良い味。
一目惚れした下宿屋の孫娘、後に妻となる香具矢役を宮崎あおい。若い女性だけど高級料亭の板前を生業にしている。包丁選びにうんちく語る姿がカッコいい。
辞書編集部は不思議ちゃんの集まり。長老松本先生役を加藤剛、定年間近の荒木さん役を小林薫、チャラさを売り物にしているムードメーカー西岡役をオダギリジョー。無愛想だけどどこか親しみのあるおばさん職員を伊佐山弘子が好演。
うーん.癖の強いこのメンバーいいよねえ。
大渡海が出来上がるまでにおよそ15年という歳月を要し、その間にメンバーも多少入れ替わり、松本先生は刊行を待たず逝去する中、物語は淡々と優しく流れて行く。
言葉ってあらためて生き物だと思う。言葉の意味を明かすのもやはり言葉。
自分が常に口にする言葉についてもふりかえるきっかけとなった作品でした。