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合言葉はヒュッゲ

映画 八月の家族たち

家族を描いた作品の多くは、強い絆で結ばれて共に苦難を乗り換え幸せに向かっていくあらすじが多いが、この物語は真逆。愛がないわけではないけれど、互いを思いやる力に欠けていて、口にする言葉は錆びたカミソリのように相手を傷つけ化膿させる。

主である父親が失踪、それを機に妻である母、その妹と息子、3人の娘とその伴侶、孫娘らが集う。父親も哀れだが、母は長年の薬物依存が影響してか認知度もどこか怪しい。食事の席でも不穏な空気とブラックジョークが飛び交いギクシャクしている。やだなあこの一族。観ている人の心をこれほど暗くする物語は珍しい。相続は自分が全て受け取ると言い切る母の独断に娘達は返す言葉もなく承諾。年頃の孫娘にすら冷たい言葉を投げつける容赦なさ。
薬中の母役はメリル・ストリープが演じている。そのギラギラとした眼光に彼女の激しい気性と孤独さが宿っている。長女役はジュリア・ロバーツ。美しさの中にどこか厭世観が漂っている。
次女は従兄弟を愛していることを告白するも、その従兄弟は実は腹違いの弟だったと残酷な事実を知る。
三女は婚約者を連れて来ていたが、その婚約者をクズ男だと母は見抜いていた。
大麻を孫娘に教えセクハラを企んでいた男で、その事件が起きた事で姉妹の仲は分裂し、夫とも険悪になる。3人の娘は散り散りに実家を後にして去っていく。砂埃を残して走り去る車の音が物悲しい。残された母はメイドにすがって子どものように泣き崩れ家族の夏物語は終わる。

こんな救いようのない映画なのに、何故か心を奪われた。元々は舞台の作品だとのことですが、この物語のお芝居なら観てみたいなと強く思いました。


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