球春を迎て思い出すのは、70年代後半の昭和54年夏の箕島高校対石川県星陵高校の一戦である。高校球史に残るこの試合は延長18回を追いつ追われつのまさに神懸かり的な展開で、全国民の耳目を奪う名勝負であった。当時私は紀南地方が任地で、休日に遊びに来ていた友人一家とともにマイカーに分乗して和歌山の自宅へ帰る途中であった。この年の春、箕島高校は春の選抜大会に優勝し公立高校として初の春夏連覇がかかっており、ラジオを聞きながら選手の一挙手一投足に一喜一憂していた。相手のエラーの後でホームラン、二死走者なしの後で予告ホームラン等まるで空想小説でも見ているような展開に皆が酔っていた。もう35年も前のことであるが両校の交流は今でも続いていると聞く。海草中学の嶋投手とともにチームを率いた尾藤監督の偉業も後世に伝えられている。今はご子息が後を継いで後輩の指導にあたっておられるが箕島の再現を願わずにはいられない。 平成26年4月5日(土) ニュース和歌山掲載