相手の個性に合わせた対応
「人を見て法を説く」ということばがあるが同じような物のいい方をしても理解をしめしてくれる人がいるかと思えば、なかなか理解してくれない人もいる。資料を十分用意し説明しなければ納得しない人がいるかと思えば、簡単な資料でも納得してくれる人もいる。早く仕事の本題に入りたいにもかかわらず世間話が延々と続きなかなか肝心な話をさせてくれない人もいまる。このように相手によって対応の仕方は異なってくる。
他者対応のレベル
ロバート・ボルトン&ドロシー・ボルトンは「Social Style/Management(対人能力を伸ばせ)」の中で他者対応には次の4段階があると述べています。
1、基本的対応
これはいかなる人に対しても共通している基本的な対応といえます。例えば「他者に対しては誠意を持って、公平に接することが大切である」など人間としての基本的対応です。社会人としてのエチケット・マナーなどもこの基本的対応になります。
2、タイプ別対応(十人四色)
これは他者を分類し、相手のタイプに応じた対応の仕方を行う方法です。人は経験的に無意識に他者を分類し、対応の仕方を変えています。他者のパーソナリティー特性に合わせた対応がこのタイプ別対応になります。
3、個別対応(十人十色)
人間はそれぞれのパーソナリティーや価値観も違います。この個別対応は個々に合わせた対応の仕方を行う方法です。
4、実存的対応(一人十色)
人間はパーソナリティーなどの心理的概念で説明し尽くされるものではありません。また人間は遺伝、過去の経験、環境の影響を受けますが、自ら主体的に決断しています。まさに、今生きているそのただ中において自分を変えていく存在です。この全人格的なふれあいが実存的対応になります。
タイプ別対応
他者への対応については個別対応、実存的対応がレベルの高い対応といえます。しかし相手の個性がつかみにくい人やつかめないときに役に立つのがタイプ別対応です。このタイプ別対応を学ぶことによっていままで苦手としていた人との個別対応の糸口を見出すことができたり、現在問題なくいい人間関係やコミュニケーションが取れている人との関係もより強固なものにすることができる。そのためには相手のタイプを知ることが大切になってきます。
相手のタイプを知る方法
相手の個性には価値観、欲求、性格や行動特性などいろいろな要素があるが、ここでは相手のパーソナリティーについて見ていきます。相手のパーソナリティ-はすぐにつかみにくいので相手の行いや言動から手がかりをつかみます。相手の人は能動的なのかそれとも受動的なのか、その人は感覚的なのかそれとも論理的なのか、人間はいろいろな側面をもっているのであえてどちらの要素が強いかで決めます。
各特徴をまとめてみると次のようになります。
・能動的(♥♠)とは積極的、自分の意見を主張する、リーダーシップをとりたがる。
・受動的(♦♣)とは消極的、余り自分の意見をいわない、リーダーシップをとりたがらない。
・感覚的(♦♥)とは感情を表出する、友好的である、直感的である。
・論理的(♣♠)とは感情を抑制する、ビジネスライクである、志向的である。
各タイプの印象
1.社交家(♥)型の相手への効果的対応
① 最初の話題は世間話から入っていくのが望ましい。すぐに本題に入らない。
② 論理的な話題はできるだけ避けるか、少なくする。感覚的なタイプなので余り理屈っぽくならない。
③ 仕事はできるだけ任す。人に指示されたり、指導されたりされることを好まないので何かを頼むときはできるだけ任せる。
④ 仕事を与えるときは気になることだけを伝える。自由裁量があることを好むので、細かいことをいわれるのをいやがる。
⑤ できるだけ長所を見つけてほめる。賞賛されることがこのタイプのエネルギー源。いいところを探し出して誉める。
2.友好家(♦)の相手への効果的対応
① 最初の話題は相手の個人的なこと。すぐに本題に入らず相手の個人情報についての質問から入るのが望ましい。そのためには日頃から相手の趣味、家族、仕事の内容などについて情報収集しておくことが大切。
② 論理的な話題はできるだけ避けるか、少なくする。社交家(ハート)型同様感覚的なタイプなので余り理屈っぽくならない。
③ 仕事は誰かと一緒にやらせる。このタイプは「赤信号皆で渡れば恐くない」という傾向がある。一人では心配で寂しがり屋なところが強いので、チームで何かをするほうが力を発揮しやすい。
④ こちらがリードしながら仕事をさせる。相手が年長者や組織の上位のポジションであっても、こちらがリードしていくほうが話や仕事が進む場合が多い。
⑤ できるだけ感謝の気持ちを伝える。このタイプは人に喜んでもらえることがエネルギー源。感謝を忘れずに。
3.理論家(♣)型の相手への効果的対応
① 最初の話題は相手が関心を持っているテーマがよい。このタイプの人は人間より課題に関心を持つ傾向が強いので話題も相手が関心のある仕事や課題のテーマがよい。
② 話をするときは論理的に体系づけて。話があちこちに飛ぶ人や大げさな話し方をされることを嫌う。したがって話の内容も論理的に筋道をたてて話をする。
③ 仕事を教えたり任せるときは納得するまで説明する。仕事や何かについて指導するときは相手が納得できるまで話をする。
④ リスクの少ないようにサポートしてやる。このタイプは石橋を3度たたいても渡らない傾向にあります。何か新しいことをすすめるときは危険や失敗などリスクが少ないようにサポートしてあげる。
⑤ 説明資料を準備する。何か説明するときは資料を準備しできるだけ書面で説明を行う。
4.実践家(♠)の相手への効果的対応
① 話は単刀直入に短気なところがあるので話はできるだけ早く本題に入ったほうがよい。
② 仕事の目的、期待する結果などを伝える。何か頼むときや指示するときは目的やねらいをはっきりと伝える
③ 報告するときは結論から このタイプは結論が早く知りたいので結果や結論から説明する。
④ 仕事は相手に任し、必要とするときのみ相談にのってやる。仕事は任されるほうを好むので相手に任せ、要所要所で報告をしてもらう。
⑤ 決定は相手に任せる。自分で物事を決めることを好むので決定は相手に任せるほうがよい。
「人間力を高めるセルフ・エンパワーメント」 八尾芳樹 角本ナナ子より引用。一部筆者加筆
バックアップスタイル
タイプ別対応の方法を知っても、「対応したくない、顔を見たくない」「なぜ顧客といえでもこちらがあやまらなければならないのか」と思うときがある。家族や親しい友達との関係においてお互いが何日も口をきかないときがある。このような状況を前述のロバート・ボルトン&ドロシー・ボルトンはバックアップに入っているといっている。SPのタイプでみると、♥♠のタイプの人は攻撃的(責める)になり♦♣タイプの人は逃避的(逃げる)になる。そして♥♦タイプの人は感情的になり、♣♠タイプの人は論理的(理屈っぽく)なる。そして♥タイプの人は感情的に責める「攻撃的」になり♦タイプの人は感情的に逃げる「盲従的」になり、♣タイプの人は論理で逃げる「回避的」になり、♠タイプの人は論理で責める「独裁的」になる。そしてこれらはストレスの程度によって下記のように変化していくと述べている。
バックアップは緊張を軽減させ正常な行動に戻る作用もある。しかし相手とコミュニケーションしている時ひとりがバックアップ・スタイルになると、他の人もバックアップ・スタイルに入り悪循環が起こる。(コミュニケーションのテーブルから離れる、土俵やリングから降りている状態)そして対人関係に葛藤が生じ、生産性は低下する。バックアップスタイルは緊張がさらに高まるとそれぞれ左右に移動し、次いでななめに横切り最後には対角上に変化する。例にとると普段社交的なハートが黙り込むといった回避的行動をとるときは緊張度(ストレス)が高いといえる。
よって上記のSP(例 切れ屋、責めたがり、言い訳さんなど)は対人関係に葛藤を生じさせるためにguiltySPになる場合が多い。
タイプ |
ハート♥ |
ダイヤ♦ |
クラブ♣ |
スペード♠ |
緊張度1 |
攻撃的 |
盲従的 |
回避的 |
独裁的 |
緊張度2 |
盲従的 |
攻撃的 |
独裁的 |
回避的 |
緊張度3 |
独裁的 |
回避的 |
盲従的 |
攻撃的 |
緊張度4 |
回避的 |
独裁的 |
攻撃的 |
盲従的 |
緊張度1は各タイプの基本的欲求(賞賛・受容・安全・達成等)が担保されている状態。緊張度2以降は担保されないと感じている状態。
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