晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

森絵都の最新作「この女」

2011年08月25日 | 

昨日腰を痛めて(古傷)、自分に言い訳せずにゆっくりソファーにひっくり返って朝から読み始めた一冊でした。堂々と家事もほったらかして一気に読み上げました。昔は日に2冊の勢いがあったのに、最近は目が衰えて無理すれば読めないこともないのだけど後で支障をきたしますからそれはしないように心がけています。とても秀逸な作品でした。「この女」というタイトルに相応しい、女主人公の結子はたくましい女性でした。本当は語り手である礼司を指して「この男」としたいところですが、礼司を「この男」に変身させたのは他ならぬ結子ですから・・・。

(内容)  震災後15年して見つかった小説。そこにはある青年と彼の人生を変えた女の姿が書かれていた。釜ヶ崎の地をめぐる陰謀に立ち向かう彼は、小説の作者でもあった。作者である甲坂礼司は釜ヶ崎で働く青年だったが、二谷啓太に妻の結子を主人公に小説を書いてくれと頼まれる。二谷啓太はチープ・ルネッサンスを標榜するホテルチェーンのオーナーだった。甲坂礼司に小説書きのバイト話を持ってきたのは大学生の大輔。彼は礼司に神戸の住まいを提供する。松ちゃんは釜ヶ崎の名物男で、礼司が頼りにしなにかと相談するおっちゃん。彼らを交えて震災前夜、神戸と大阪を舞台に繰り広げられる冒険恋愛小説。

言わへんよりは言うたほうがええし、じっとしとるよりは動いたっとほうがええ。方向なんか適当でも、動いとればあとからついてくるわ 。作中のこのセリフが一番心に残りました。

最後まで読み終えた後で、冒頭の文章を読みなおすとつながりがわかるようになっている構成も憎い!大輔はたぶん、当時のオウム教から離れて新生活を送っていることが伺え、礼司も震災にあったのだけれどどこかで生きていると読者と思わせるエンドで救われた気がしました。それにしても阪神大震災が起こった頃の状況が、今回の東日本大震災に類似しているのに驚きました。

今のところ、森絵都さんの作品の中で一番好きな作品となっています。

(腰痛のため書けずにそのままになっていたのですが、没にしたくないので少しだけ付け加えてアップします。書きたりない部分はいつか触れるかもしれません)


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