今も、あるかもしれないが、昔は、会社に入ると直ぐに、人事部が主催する、新入社員歓迎会があった。
その席で、たまたま、酔っ払った人事部の人が、言っていた。「会社にいる時間なんて、一日の一部に過ぎないのだから、素の自分を決して出すな」と。
これを聞いたとき、少し、驚いた。この人は、自分を殺してまでも、偉くなりたいのかと。
それと、もう一つ驚いた。人事の人でも、酔っ払うと、口が軽くなって、自分のマル秘処世術を、簡単に披露してくれるということに。
そもそも、処世術なんて、ストイックなものでは、長続きしない。会社の中では、素の自分を隠して生きろ、なんて処世術は無理。素の自分をさらけ出して、相手の懐に飛び込む方が、私の性に合っていたからだ。
今、思うと、人事部の人が言っていたのは、偉くなるために、どうすればよいかというハウツーではなかったのだろう。これから、大組織の中で生きていく新入社員に、「素の自分など出していたら、叩き潰されるぞ」と言いたかったのだと思う。
入社当時、従業員は4万人。会ったことが無い人が、ほとんど。しかも、「素の自分」を出せる程、深い付き合いができる人なんて、昔も今も、あまりいない。
そんな、大会社でも、最初が肝心。素の自分を出し過ぎて、「新人の○○は、こう言う奴だ」とレッテルを貼られると、実に厄介なのだ。レッテルは、デジタルタツーのように、いつまでも付いて廻るからだ。
大組織には、ゲシュタポかCIAかと言われる「人事部」がある。人事部の連中は、「個別人事」と称して、社員の情報を集めまくっている。だから、一度付いたレッテルは、退職後までついて廻る。恐ろしいが、これが大組織だ。
新入社員諸君、素の自分を出し過ぎないよう、くれぐれも気をつけて下さい。会社にいるときばかりでなく、アフターファイブも。