以前、私がいる組合にてこんな事がありました。
日本俳優連合30年史より。
■日本俳優連合30年史■
本編 1986年~1990年
ショッキングな実態公表
1988(昭和63)年9月号の「オール讀物」(文藝春秋社)にショッキングな記事が掲載されました。筆者は永井一郎氏。1984(昭和59)年9月から1986(昭和61)年8月までの1期間、外画動画部会の委員長を務めた声優の重鎮です。「磯野波平ただいま年収164万円」と題したそのレポートは、テレビの人気アニメーション番組「サザエさん」に主人公の父親(波平)役として毎週レギュラー出演している人間の年収が如何に低額であるかを赤裸々に記したものでした。「国民的番組のレギュラー声優なのに、収入が生活保護世帯より劣るとは…」との副題が付けられているのを見て、はじめて、ヤヤッ! と感じ取り、真剣になって読むのですが、とても信じることの出来ないようなその内容には、心ある者は憤りを覚えずにはいられないものでした。
永井氏は
「サザエさん、家中で見てるよ。あれ、どれくらい貰うの。1本、30万くらい?」
この書き出しで7頁にもなるそのレポートは、世間の常識と声優が実際に製作会社から受け取るギャラの額との違いを表現しているのです。1本30万円のギャラを受け取ることが出来れば、年間52週の出演で収入1560万円。源泉徴収税10%を差し引かれたとしても年収は1404万円になります。
だが、実際のギャラは1本につき4万3200円。年52本で224万6400円。それに予告編への出演が年7回あって、それが出演料の10%だから4320円×7=3万240円。合計227万6640円。ところが、これが全部永井氏の収入かというとそうではありません。所属事務所に手数料20%、手数料を差し引いた残高からさらに源泉税が引かれるますから、最終的には契約出演料の72%しか受け取ることが出来ません。その額が正確には163万9181円、丸い数字で表すと164万円にしかならない、というわけなのでした。
164万円を12ヶ月で割れば、1ヶ月の収入は13万7000円足らずになってしまいます。永井氏が、手元にある「情報データブック」(平凡社刊)で調べてみたら、6年前の1982(昭和57)年現在で、標準4人世帯に対する生活扶助基準額が14万3345円。なんと、国民的人気番組のレギュラー出演者の収入は生活保護世帯よりも低いというショッキングな事実が分かったのでした。
永井氏は、その後、“闘争”と“交渉”で、30分番組の基本出演料を4万5000円と設定出来るようになります。それに2001(平成13)年の時点では、1本の番組出演時には基準出演料に「目的使用料」80%が加算されるという出演料計算方式が確立しましたから、永井氏の「30分アニメーション番組出演料」は4万5000円×1.8=8万1000円が確保されるようになりました。しかし、そうはなっても…。
1年間の総出演料は8万1000円×52週=421万2000円。これに予告編出演料が基準出演料の10%(1988年時点では出演料の10%でした)で、4万5000円×0.1×7回=3万1500円。両方を足した1年間の出演料総額421万2000円+3万1500円=424万3500円から所属事務所の手数料424万3500円×0.2=84万8700円を差し引くと339万4800円が年間収入額となり、最後にここから源泉税339万480円を差し引かれて305万5320円が永井氏の手取り収入になるというわけでした。
高視聴率を誇り、日本を代表するアニメに出演するベテラン俳優の出演料が年間305万円強。永井氏はこの声優残酷物語を、是非広く、世間に知らせなければならない、と強調しているのです。
ちなみに私のいた劇団では5日間の公演(お客様約3、000人)、移動日5日、そして30日の稽古、合わせて計40日拘束でギャラは3万ぐらいでした。
・・・これじゃ生活できません。
日本俳優連合30年史より。
■日本俳優連合30年史■
本編 1986年~1990年
ショッキングな実態公表
1988(昭和63)年9月号の「オール讀物」(文藝春秋社)にショッキングな記事が掲載されました。筆者は永井一郎氏。1984(昭和59)年9月から1986(昭和61)年8月までの1期間、外画動画部会の委員長を務めた声優の重鎮です。「磯野波平ただいま年収164万円」と題したそのレポートは、テレビの人気アニメーション番組「サザエさん」に主人公の父親(波平)役として毎週レギュラー出演している人間の年収が如何に低額であるかを赤裸々に記したものでした。「国民的番組のレギュラー声優なのに、収入が生活保護世帯より劣るとは…」との副題が付けられているのを見て、はじめて、ヤヤッ! と感じ取り、真剣になって読むのですが、とても信じることの出来ないようなその内容には、心ある者は憤りを覚えずにはいられないものでした。
永井氏は
「サザエさん、家中で見てるよ。あれ、どれくらい貰うの。1本、30万くらい?」
この書き出しで7頁にもなるそのレポートは、世間の常識と声優が実際に製作会社から受け取るギャラの額との違いを表現しているのです。1本30万円のギャラを受け取ることが出来れば、年間52週の出演で収入1560万円。源泉徴収税10%を差し引かれたとしても年収は1404万円になります。
だが、実際のギャラは1本につき4万3200円。年52本で224万6400円。それに予告編への出演が年7回あって、それが出演料の10%だから4320円×7=3万240円。合計227万6640円。ところが、これが全部永井氏の収入かというとそうではありません。所属事務所に手数料20%、手数料を差し引いた残高からさらに源泉税が引かれるますから、最終的には契約出演料の72%しか受け取ることが出来ません。その額が正確には163万9181円、丸い数字で表すと164万円にしかならない、というわけなのでした。
164万円を12ヶ月で割れば、1ヶ月の収入は13万7000円足らずになってしまいます。永井氏が、手元にある「情報データブック」(平凡社刊)で調べてみたら、6年前の1982(昭和57)年現在で、標準4人世帯に対する生活扶助基準額が14万3345円。なんと、国民的人気番組のレギュラー出演者の収入は生活保護世帯よりも低いというショッキングな事実が分かったのでした。
永井氏は、その後、“闘争”と“交渉”で、30分番組の基本出演料を4万5000円と設定出来るようになります。それに2001(平成13)年の時点では、1本の番組出演時には基準出演料に「目的使用料」80%が加算されるという出演料計算方式が確立しましたから、永井氏の「30分アニメーション番組出演料」は4万5000円×1.8=8万1000円が確保されるようになりました。しかし、そうはなっても…。
1年間の総出演料は8万1000円×52週=421万2000円。これに予告編出演料が基準出演料の10%(1988年時点では出演料の10%でした)で、4万5000円×0.1×7回=3万1500円。両方を足した1年間の出演料総額421万2000円+3万1500円=424万3500円から所属事務所の手数料424万3500円×0.2=84万8700円を差し引くと339万4800円が年間収入額となり、最後にここから源泉税339万480円を差し引かれて305万5320円が永井氏の手取り収入になるというわけでした。
高視聴率を誇り、日本を代表するアニメに出演するベテラン俳優の出演料が年間305万円強。永井氏はこの声優残酷物語を、是非広く、世間に知らせなければならない、と強調しているのです。
ちなみに私のいた劇団では5日間の公演(お客様約3、000人)、移動日5日、そして30日の稽古、合わせて計40日拘束でギャラは3万ぐらいでした。
・・・これじゃ生活できません。