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父の終戦と満州ひきあげ記 4〈開拓団本部と青酸カリ〉

2021-03-02 20:34:00 | 日記
スマホでブログを投稿できる、そして誰かに読んでもらえる。

父の残した満州からの引き揚げの記録も
どこかで誰かに読んでもらえたら嬉しいです。




日本人じゃ

カラスが飛んでいった方向へとわたしたちが移動していると、明かりが見え始めた。

それは焚き火の明かりで、周りにはたくさんの人がいるようだった。


建物のようすから「開拓団本部だ」とおじさんが言い、
「満人かもしれない、偵察してくる」と地面を這うようにして出ていった。





帰ってきたおじさんは
「日本人がおるど!みな日本人じゃ!」と叫んだ。


そこには、よその村からも集まった日本人がたくさんいた。
市村の人もいた。


どこにもいなくて、心配していた峰さんも、そこで無事に再会することができ、みんな大喜びをした。
峰さんは槍で突かれて、頭と腿にひどい怪我をしていた。



避難した開拓団本部

開拓団本部では、 広い板間の一角にわたしたちはいて、身動きがとれないほどの人の多さだった。


すぐ次の日だったか その翌日か

どうせ日本へは帰れない死ぬ以外にない と市村の人たちで話し合った。
 


死のう、と決まり
誰かが開拓団本部の診療所へ青酸カリを取りに行った。





青酸カリ

開拓団本部の診療所に取りにいった青酸カリを水に溶かして、市村の人だけが集まって次々に飲み始めた。

飲んだ人は口を押さえて表に走って出ていく。

母の隣にいた、高村のおばさんが便所に行ったので、次の番だった母がガラスのコップで飲み、弟の照男に飲ませた。

わたしはそれが何だかわからなかったので、白っぽくて砂糖水のように見え、早く飲みたくてしかたがなかった。

そのコップをわたしが受け取った瞬間に誰かが叫んで コップを取り上げた。
水の入った鍋もとりあげられた。



母は建物の様子がわからず、みんなが出た方角とは逆の裏へ 照男を抱いて出てしまった。


早く表に出た人たちは、苦しくて、みんなが出てくるのを待ちきれず、円陣をくんで、手榴弾を何発か投げ、自決した。


腕や足や肉片がそこらじゅうに飛び散っているのを、わたしはあとで見た。


裏へ出てしまった母は、随分狂って死んでいったそうで、
それ以上に照男はなかなか死ねず、相当の時間が かかったらしい。


”こんなちいさな子が生きのびてくれたらどうしよう “
と心の中で思った とあとでおばさんは言った。









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