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肺癌でなくなった父が私たち家族に残した幼い日の記録を
ブログをとおして誰かにも読んで欲しいと思い書き残します。
父の満州の思い出を。
ソ連兵の侵攻
開拓団本部を幾重にも取り巻いていた満人たちは、しばらくは騒いでいたが、そのうち居なくなり落ち着いてきた。
治安もよくなり、近くの空き家になっている民家に、わたしたちは移り住み 生活するようになった。
そんなある日、ソ連兵が侵攻してきた。
噂は聞いていて、若い男はみな連れて帰って働かされる。とか 女は暴行される。というので
女性はみな、丸坊主になり、男性の服を着て男性の格好をし、若い男性は隠れていた。
兵隊たちは噂どおりで
一軒一軒、探し歩いた。
たくさんの人たちが捕まって連れていかれたし
「用の済んだ女性をむごい殺しかたしてる。」
と 大人たちが話していた。
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他のサイトより引用
うちにも来た。
家の中を探し回ったが、わたしとおじさんだけがいて、峰さんとおばさんは屋根裏に隠れていた。
何回もやって来た。
日本人から取り上げた腕時計は、両腕に何個も、肩のほうまではめていて、万年筆はポケットにいっぱい差していた。
珍しいものはどんどん掠奪していった。
とは言うものの、皆 着のみ着のまま逃げてきているので、ろくなものはなかったはず。
わたしたちも、空き家になった日本人の家へ生活道具を探しにいって、役に立ちそうなものは持って帰っていた。
ソ連兵は ところかまわず やたらと自動小銃を乱射していた。
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中国人同志の戦争
ソ連兵がいなくなって しばらくすると中国人同志の争いが始まった。
侵攻してきたのは、国防軍と呼ばれるもので、大人たちが話しているのによると、わたしたちに危害を与えない、いい軍隊だ とのこと。
しかし 悪い軍隊が攻めてくる という噂が出始めると、いつのまにか国防軍がいなくなり、
服装の悪い、武器のお粗末な兵隊が侵攻してきた。
大人たちは この軍隊を八路軍と呼んでいた。
これらの兵隊の中には、日本人もたくさん混じっていると噂されていた。
当時のわたしにはわからなかったが、これが蒋介石と毛沢東の戦争だったようで、
この内戦のために、道路や鉄橋が爆破されて、そのために日本への引き揚げが随分おくれたことは、大きくなってから知った。
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衣食
終戦まで使用人として働いてくれた満人の家に、食べ物や着るものをもらいに行った。
くれるのは、家畜に食わせるコウリャン、エサのトウモロコシで 真っ赤なコウリャン飯やトウモロコシの粥を食べた。
それでも 食べ物があるのは大変にありがたいことで、栄養失調で死んだ人はたくさんいた。
春になると、食べられる草やつくしを山ほど取ってきて食べ、満人の家の豚を野原へ峰さんと連れていって草を食べさせ、お礼に食べ物をもらった。
大きな豚の背に乗って、野原へでかけた。
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秋には、満人だか朝鮮人だか覚えていないが、稲の穂だけ摘み取って収穫しているので、
稲穂がたくさん落ちている。
それを田んぼに拾いに行き、瓶に入れて棒で突き、もみ殻をとって玄米ご飯。
どんなに美味しくてどんなに幸せを感じたことか!
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冬には、雪の山にワナをしかけ、ウサギを捕ったり、雪をはねてエサをまき、雀を捕って食べたり 、わけのわからない幼いわたしには、楽しいことばかりだったような気がする。
また 近所の畑で何か作って収穫していたような気もする。
着るものも満人にもらった。
布で縫った靴、布に綿をいれた手縫いの服。
おかげで冬も凍え死ぬことはなかったが、一年中それ一着だから、ぼろぼろになっていた。
頭にも服の縫い目の中にも 、縫い目に頭を突っ込んで尻だけをだしたシラミがびっしりいて、
これをつぶすのも日課のひとつだった。
のみと違い、シラミは逃げ足が速くないので、つぶすのは簡単だった。