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父の終戦と満州ひきあげ記 7〈また襲撃〉

2021-03-01 20:22:00 | 日記
スマホで簡単にいろんなブログを読めるようになっている現代。

5年前に肺癌でなくなった父が
残した幼い日の記録を

私たち家族だけではなく
どこかの誰かにも読んで欲しいと
ふと 思いついて書きます。
父の満州の思い出を。


夜 ふたたび襲撃

しばらくすると
また、バケツや金だらいを打ち鳴らし、うわぁーと叫ぶ大勢の声がして満人が襲撃してきた。

馬はおどろいて 馬車にあきらさんを乗せたまま走り去り、わたしたちは必死でトウモロコシ畑を駆け抜け、湿地の中に逃げこんだ。



どのくらいたったのだろう、わたしは腹が減り、水が飲みたくてたまらなくなった。
それを母に言うと、足元にあった水を両手ですくって飲ませてくれた。
それは泥水だった。

こんな水でも飲めるんだなあ と思ったので、強く記憶に残っている。

そのうち、皆が死ぬ話をはじめた。
じゃあ薬を取りに帰ってくる とおじさんが戻っていった。

しかし おじさんは「薬はなかった。」と戻ってきた。
家の中の物は 何一つ残ってはいなかった。
土間やオンドルの下も 鉄の棒でトントン突いて、音の違うところは全部掘り返したらしく、
箸一本も残ってはいなかったそうだ。

わたしは、みんなが死のうと言っていたとき、死にたくないなぁと思っていたから、この話を聞いてホッとした。



カラスの案内

湿地の中で 死ぬことをあきらめたわたしたちは、移動をはじめたが、辺りは木や草が繁り、足元はべとべとの水溜まりで、真っ暗な中 どっちに行けばよいのかわからず 困り果てていた。

頭上で一羽のカラスが カァカァ鳴いて ぐるぐるまわり始め、しばらくして飛んでいった。

大人たちは「 カラスが案内してくれている。あっちへ行ってみよう。」と言い
カラスが飛んだ方角へ歩きだした。

どのくらい歩いたか
何時間歩いたかわからないが
遠くで 人の声が聞こえ始めた。

満男が乳を欲しがって泣きやまないし、
この声が満人に聞こえたらまた襲われる との心配から母は意を決し、わたしたちから離れ、自分の腰ひもを使って満男の首を絞めて殺し、その場に置いてきた。

照男は母の静かにしなさい と言うのを守って、ずっと静かにしていた。








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