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田舎ぐらし(209)

 ー 年 賀 状 ー

 

 最近〇〇じまいということばをよく聞く。
墓じまい、家じまい、果ては家族じまい・・・。
そういうことばの周囲には決まって専門家を称する御仁が現れて蘊蓄を傾け、あるいは商売っ気旺盛な業者が現れて宣伝に精を出す。

 見聞きする側としてはそれを風潮と捉え、世の中そういうものならと、風潮に合わせる人もいれば、頑として旧来のやり方を通す人もいる。

 そこで、年賀状である。
確かに現役の頃にくらべると届く枚数も出す枚数も減った。その減り方たるや1万メートルの高空を飛んでいた飛行機が急降下して今や太平洋の波しぶきを胴にぴちゃぴちゃ受けながら飛んでいるに等しい。

 ただ、それを寂しいとか悲しいとは思わない。元が会社員であれ、経営者であれ、現役時代の付きあいは今より多いのが当たり前、一方、リタイアした今は付き合いの輪が小さくなるのが当たり前である。

 ただ長く人間をやればやるほど足を向けて寝られない人、あるいは友だちの中にもあいつだけは・・・と思う悪友が現れる。そういう別格の人には世の中がこうだからと、安易に風潮に乗って年賀を怠るわけにはいかないのである。

 考えてみると、世話をしてやった人など無きに等しく、お世話になった人のほうが断然多い。布団の中でぼーっと天井を眺めながら逝ってしまった父や母がまだなんとか生きていた頃のことを考える。
 そうすると、あの人にも、あの人にも間違いなくお世話になったはず、それなのにと今更ながら思う。罰当たりである。
 
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