ー 実 家 ー
「ゴールデンウィークには実家に帰った」ということばをよく耳にする。
正月や盆、日本人はなにかにつけて実家に帰る。
この実家と言うことば、何度聞いてもストンと腑に落ちることがない。理由は二つある。
まず、実家とは広辞苑によれば、ひとつには自分の生まれた家。父母の家のことであり、もうひとつは婚姻または養子縁組によって他家に入った者から元の家をさしていうことばであるという。
この他家とか元の家というあたりに、結婚は家と家の取り決めという昔々の考え方が垣間見えるのである。
古く昭和22年に旧民法が廃止されて、新民法になったというのに、日本人の頭には未だに古い考えがこびりついているのではなかろうか。日常でも憧憬をこめて、 “ お嫁入り ” という言い方をするがこれは明らかに A 家から B 家に入るということだろう。
あるいは、特に田舎では年頃の娘に向かって、「お前の勝手にはさせない。相手はおれが決める」などという父親もいると聞く。ここに至っては無粋の極みとしかいいようがない。駆け落ちの憂き目をみるのが関の山だ。
それでもって、「実家」という言い方である。この際、「実家」はやめて、「生家」にしたらどうか。
代わりに今住んでいる家を「実家」と呼ぶのである。なにしろ苦労して夫婦で買った家、子どもを産み、育て、この先何十年も住もうという家である。これこそ実の家と呼ぶにふさわしいのではなかろうかと思う。
紙幅が尽きた。理由の二つ目は他日。
後者は「家制度」でいう家であるから、これは新民法の制定により76年前になくなっている。