ー 春 耕 ー
菜 園 の い ち ご
春耕、好きなことばである。
家を出て少し歩けば、昨日までは水を張っただけだった田が今日は苗でいっぱいになっている。
菜園の土いじりはいつもより1週間ほど遅れた。土を耕す前に、菜園と向こうの家との境界に仕切りを埋めたのである。幅1.2メートル、高さ60センチ、厚手のプラスチック板、これを10数枚埋め込んだ。
なぜこんなことをしたかというと、向こうの家が境界ギリギリに杉や桧を植えているので、その根が菜園に延びてきて、しょっちゅう耕耘機の爪がひっかかる。落ちてきた小石を爪が巻きあげる。
交渉して、木を抜いてもらうかコンクリートの塀を打つ方法もあったが、“ 面倒くさい ” が先に立った。実際、同じような問題は以前ご近所でも持ち上がったらしく、木を抜いてもらうまで何年もかかったという。ともあれ、長年の頭痛の種が解消。
仕切りを埋め終わるのを待っていたかのように、いちごが赤い実をつけ始めた。このいちご、3年前、二株買ってきて道路のそばに植えていたら、一株だれかに持って行かれた。これは大変だと、残った一株を奥の方に疎開させて辛抱強く世話していたら、今では3メートルの畝4本を占めるまでに増えた。
うちだけでは食べきれないので、家内が知り合いのおばさんにも送っている。スーパーで買ったものよりモチがいいと喜んでくれている。なにしろ、雪の降る日も霜の朝も、ビニール一枚かけてやらずに育てたいちごである。
最近、いちごは認知症の予防にいいという記事を見た(「命の野菜スープ」高橋弘 宝島社)。認知症だけは御免蒙りたい。玄関に迎えに出た家内に「あなた、だれ?」と言ったらきっと殺される。