ー 相 続 ー
「相続会議の主催なんかするものではない。」
友人がこぼした。田舎ぐらし(26)に登場した友人の言である。相続人は数人いるが、「話し合おう」と音頭をとる者が誰もいない。友人はひとりで相続人を調べ、土地家屋の名義を調べ、借金の現状をまとめた上で相続会議を召集した。
会議の目的は遺産分割協議書をつくることである。
しかし、分割協議書など作れないことがすぐにわかった。もともと仲のいい間柄ではない。相続とはハンコを押すものだと思っている。ある者は農業の経験もなく、やる気もないのに田畑は全部欲しいという。ある者は無断で欠席する・・・。絶望的である。
友人は弁護士事務所を訪ねた。弁護士は友人がA41枚に書いて持参した資料をみて、「これは共有ですね」と言った。これとは家屋、宅地、田畑、つまり不動産のことである。
がっかりした。不動産を共有にすると、面倒なことこの上ない。税金ひとつとってみても相続分に応じて分担することになる。そうすると、誰かが納税通知書を受け取り、まとめて支払い、後で集金し、ということになるのだろう。
売る時も全員の同意がないと売れない。
なによりも共有は早晩分割される運命にある。そうするとまた弁護士事務所を訪問することになる。弁護士料は倍になるかもしれない。
結局、弁護士は外すことにして、自分で家庭裁判所の調停に持ち込んだ。まず、パソコンから申請書をプリントアウトした。それに相続人の名前やら遺産やらを記入し、裁判所で教えてもらったとおり、1200円の印紙と相続人の数に応じた切手を添えて受付に出した。
調停で折り合いがつかず手続きは審判へ進んだ。審判となれば相続分は法律で決まっている(民法900条)。調停に持ち込んでから数か月で決着がついた。
審判に納得できない場合、高等裁判所に再吟味してもらうことができる。その準備もしていたが、なんとか納得できる審判内容だったので高等裁判所に持ち込む面倒はなくなった。登記も自分ですませた。
友人の話を聞いてこう思った。
裁判所のお墨付きをもらえば誰も文句は言わない。
それに、なんでも自分でやれば早く済むしお金も節約できる。そもそも弁護士や登記が稼業の司法書士は代行人にすぎない。自分でやるのがスジである。
( 次回は ー 除草剤の季節 ー )