(皇后様みたいな肩幅でなくって良かった)
高畠華宵《新柳》
敬宮殿下は今日学習院大学を卒業なさいました。スーツかと思っていましたから、まさかの“おいとぼしい”(御所言葉・可愛らしい)袴姿を拝見出来まして、感激しきりです。あらためまして、ご卒業おめでとうございます。
高畠華宵《春の丘》
前髪が・・・・桜の髪飾りを付けられた敬宮様。
お振袖は桜色の綸子地に地白の笹に橘を散らし金箔地に菊、紅梅白梅、桜の文様等に恐らく染ひったの菱形手描き振袖。
(京都の室町京正製の既成品のお品との事です。やはり京都のお品は違いますね。ちょっと寛文風)
赤の半幅帯。そして濃紺の袴をはかれています。振袖と合わせて桜の時期に相応しい申し分のない装いです。袴の膨らみ具合で又朝鮮風と言われそうですが、勿論全然違います。
現在の袴姿はそもそも女子学習院教授であった下田歌子が昭憲皇太后が女子学習院に行啓なさる時、失礼の無い様にと切袴と指貫と折衷させて考案したのが、始まりでした。袴スカート状の行灯袴。
御所風の切袴
色は宮中の女官が若い時にはく、濃色に似た海老茶色の袴でした。
《ミカドの淑女(おんな)》こと、下田歌子女史の後年の姿
こちらは女史のお若い時(37歳)の姿です
藤井豊(紫水)《卒業帰途》
つまりは卒業式等での袴姿の始まりは学習院からです。戦後は一時期途絶えましたが、大和和紀先生の描かれた
『はいからさんが通る』がヒットし南野陽子さんの主演で映画と主題歌が話題となったお陰で、
又袴姿で卒業式に臨む人達が増えたということです。
戦前の女子学習院の規定では紬地に紫の紋付きの小振袖に海老茶色の袴でした。それぞれの家庭が、呉服屋で誂えたので各々、小振袖の紫色が微妙に違って見えたということです。
昭和4年3月に卒業された高松宮喜久子妃殿下
昭和18年にご卒業された照宮様
学習院女子中等科をご卒業された時の照宮様
照宮様のご学友の酒井美意子さん
当たり前ですが、皆様髪はバッチリと決め手いらっしゃいますね。
(大叔母様の照宮様の時と比べて内親王の心構えとしての時代の移り変わりが分かります)
昔から『髪の乱れは心の乱れ』ともいいますから。
袴といえば普通は小振袖(二尺袖)を合わせるのが一般的ですが、
現在では振袖でも着る人も多いようです。
振袖姿も又一段と華やかですね。
栗原玉葉口絵《花咲く頃》
袴がスカートの様に広がって素敵ですね。まことに桜の花のような可憐な姫宮様でいらっしゃいます。
風の戯れのせいで前髪が・・・・
宮様の卒業論文は「式子内親王とその和歌の研究」です。式子内親王といえば、百人一首の
『玉の緖よ たえなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする』
(わたしの命よ、絶えるなら絶えてしまいなさい。生きながらえていると忍ぶことが出来なくなり、恋心が外に現れてしまうかもしれないから)
式子内親王は、藤原定家?や法然上人との恋?が有名ですが、敬宮様が式子内親王の和歌を選ばれたのは、なかなか興味深いことです。式子内親王は若いときは賀茂の斎院でした。
(敬宮様が絶対に読まれたであろう本)
式子内親王が歌人として名を残したのは新古今集の時代ですね。それと定家との恋情絡みでお能の演目に《定家》もされております。
定家葛(ていかかつら)は式子内親王の死後も定家は慕情し、死後は葛となって内親王の墓にまとわりつくたという伝説から名付けられたそうです。
高畠華宵《傍流・挿絵》
指導教授は宮様を「明るく、粘り強い」と表現されています。
学習院大学文学部、中野貴文教授
卒業論文に取り組む愛子様の印象は━━
「私の宮様の印象は朗らかな人 明るい方そして粘り強く真摯な方というのが、指導教員としての私の印象です。宮様がこだわられたという点でいうと、やはりともかく最後の最後まで自分の言葉で少しでもよりよくするために時間をかけられたことだと思っています」
「穏やかな笑顔の愛子様が一番印象に残っている」
と話さております。
敬宮様は卒業にあたり━━
「友人たちと一緒に授業を受けたり直に話をして笑いあったり━━私にとって忘れることの出来ない一生の思い出となりました」
と話されたことです。
皇后様も今日の姫宮様のご卒業をさぞやご満足さんであらしゃいましょう。
(何時までも手元に置きたい一人娘)
それにしても皇后様の髪型が・・・・
心なしか段々と髪型が二百三高地化しています。
高畠華宵 題名不詳
学習院大学『院歌』
シロガネ世代は「勇気を翼にこめて~~」の《旅立ちの日に》でしたが、昭和の頃はこちらが定番だったようです。
《巣立ちの歌》
『花の色 雲の影 懐かしいあの思い出
過ぎし日の窓に残して 巣立ちゆく 今日の別れ
いざさらば さらば先生 いざさらば さらば友よ
美しい明日の日のため
風の日も 雨の日も 励みし学びの庭
かの教え胸に抱きて 巣立ちゆく 今日の別れ
いざさらば さらば先生 いざさらば さらば友よ 輝かしい明日の日のため』
栗原玉葉口絵《蜻蛉》