映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。ポルトガルの最高齢監督が描くファンタジックで狂喜に満ちた作品「アンジェリカの微笑み」です。
2015年に106歳で亡くなるまで、現役最高齢の監督だったポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ。今回の作品は第63回カンヌのある視点部門のオープニングを飾った作品で監督が101歳で撮ったもので、僕も本来なら劇場で観たかった作品です。
物語は、ポルトガル郊外の富豪の娘の突然に死に際して、写真を依頼された青年が、死んだ娘に魅了され恋に落ちていく様を現実と幻想を交えながら描かれています。
美しいドレスをまとった死装束のアンジェリカ。かすかな笑みをたたえる表情は、誰もが今にも目を覚ましそうで主人公の青年でなくとも、その美しさに魅了されます。事実、この映画を見たいと思ったのは、一枚の絵画のようなカットからでした。
今回の作品は、1952年の大戦下での迫害を逃れたユダヤ人青年が設定の後に、現代に書き下ろして撮られているそうです。過去の所在がわからない、何かに怯えながら暮らす主人公。死に人アンジェリカと出会い、狂喜の旅に導かれる姿に、感動と共に切ない儚さを感じました。