クリムトの名画にまつわる実話に基づく作品「黄金のアデーレ 名画の帰還」を観賞
先般紹介した、ミケランジェロ・プロジェクトに続いて今回の作品も、ナチスによるユダヤ人の美術品を含む資産の略奪がまねいた事件。クリムトの大作を所蔵する美術館のある愛知に住む僕にとっても興味深い作品でした。
主人公のマリア・アルトマンは、戦時中ナチスにより国を追われ戦後アメリカ人となった女性。その彼女がオーストリアの国の美術館に飾られていたクリムトの名画「黄金のアデーレ(アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像1)」のオーストリア政府に対し返還訴訟を行った実話を詳細に描いています。
マリアを演じたのは、イギリスのオスカー女優・ヘレン・ミレル。エリザベートでの演技やREDなどの演技で日本でもなじみのる彼女が、一族の誇りを取り戻すために、敢然と政府と闘う力強い女性を見事に演じています。また、彼女を支える弁護士にはライアン・レイノルズが。新米弁護士が、アルトマンとの出会いにより人生を賭けた仕事に挑み成長していく姿も、もう一つの見どころともいえます。
クリムトのパトロンだったマリアの叔父ブロッホ=バウアーと妻マリアの姪にあたるマリアは、マリアとの思い出を取り戻すために、若き弁護士と共に挫折を繰り返しながら、8年にも及ぶ法廷闘争の経過と、戦前、戦中、戦後にわたるマリアの一族の運命を重ねながら 美しきも力強く描かれ、この闘争劇により真実に誰もが共感すると思います。