映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、第67回カンヌである視点部門グランプリの異色作「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」です。
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門とは別にある視点部門が設けられているのは、映画ファンなら周知のことかと。日本では黒沢清監督が審査員賞、監督賞を受賞していることで有名です。また、グランプリには様々な国の監督が受賞し、中国、韓国、カンボジアなどアジア監督も受賞。作品も多岐にわたり異色な作品が多いです。
今回の作品はハンガリー監督コーネル・ムンドルッツォによるもので、2014年にグランプリを受賞。少女と犬のそして、理不尽な人間世界を描いた異色作です。また、カンヌの優秀な演技の犬に与えられるパルムドッグ賞も受賞しています。その受賞は、今回出演した250匹の犬に対して与えられました。
母親と恋人とのバカンスのために離婚した父の元に、預けられることになったリリの友達は雑種犬のバーゲン。犬にわずらわしさを感じた父親はある日、バーゲンをリリから引き離します。捨て犬となったバーゲンは、野良犬たちと暮らす中で、闘犬家の男に連れ去られ、凶暴化していき、闘犬場から脱出したバーゲンは、野良犬たちのリーダーとなり人間社会に戦いを挑みます。
動物を取り上げた、パニック映画は、ヒッチコックの「鳥」やマイケルジャクソンのべンのテーマで有名なネズミによる「便」などの名作がありますが、今回の作品は、ヒッチコックの鳥に匹敵するほど脅威的でベンの少年とネズミを描いた作品のような少女との愛を取り戻す秀作です。
リリと深い愛情で結ばれていたバーゲンが、人間たちの理不尽な躾で凶暴化していく姿や町中を駆け巡り、虐待した人間たちを襲う250匹の迫力あるシーンの対比が冒頭の5分がヒントとなってラストの感動シーンへとつながれていく美しさをもった社会派パニック映画です。
DVDでぜひ犬たちの名演技を観てほしい名作です。