3月28日のアカデミー賞2022の発表まで作品賞(9作品のうち8作品鑑賞可能)ノミネート作品完全レビュー。今回はネットフリックスオリジナル、ジェーン・カンピオン監督、ベネディクト・カンバーバッチ主演のヒューマンミステリー「パワー・オブ・ザ・ドッグ」です。
カンヌでパルムドールを受賞し、本作でもベネチアでの銀獅子賞を受賞したオーストラリアの女性監督が、トーマス・サページの自伝的小説をベースに脚本監督、1920年代のアメリカモンタナ州の牧場を舞台にカンバーバッチ演じる無慈悲で横暴な牧場主フィルと弟ジョージ、ジョージの元に嫁いだ未亡人ローズと連れ子のピーターとの関係を章ごとに描いています。
大牧場を営むフィルとジョージは、放牧の途中で止まった宿の未亡人ローズと出会い、彼女を見初めたジョージはローズと連れ子のピーターを家族として迎え入れます。二人をよく思わないフィルは、ことあるごとに冷酷な仕打ちを行います。居心地を悪いローズは心身を患い、ピーターもフィルを避け無視しますが、ある出来事によりフィルとピーターの距離が近づいていきます。
そんな二人をよく思わないローズは、彼の意向にそぐわない行動を起こしてしまいます。その行動が発端となり予想だにしない結末へと進んでいきます。
常々思うのですが、マーベルヒーローよりも屈折した男を演じるカンバーバッチの演技は秀逸で、男らしいカーボーイの姿とは異なるフィルの真実が牛の皮をはぐように徐々に明らかになるのところが、この作品の肝だと思ってます。そしてXmenのミュータント役で有名なコディ・スミット=マクフィーの華奢で中性的な少年ピーターとの絡みも緊張感があり、フィルの人間像を深めています。
ここ数年、マイノリティーをテーマにした作品がオスカーを獲得する状況下でもっともオスカーに近い作品ではないかと手ごたえを感じる映画でした。