映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は団地の中だけで生きていくと決めた少年の12歳から30歳までの人生を描いた異色作「みなさん、さようなら」です。
アヒルと鴨とコンロッカー、ゴールデンスランバー、ジェネラルルージュの凱旋などを手がけた中村義洋監督の団地を舞台にした作品で中村作品には欠かせない存在の濱田岳主演の青春ムービーです。
1981年、巨大団地に住む12才の少年が小学校卒業後に、中学入学くを拒否し団地の外から出る事無く団地の中で生きることを決意。18年間にわたる団地生活の変化と恋愛、就職、婚約などの人生を描きながら、彼がなぜ、団地から外に出ることを拒否した理由が明かされるなか、思いもしない出来事に見舞われる18年間が団地内だけで描かれています。
濱田岳は、12歳から30歳までの主人公を、普通の青年の青春を団地内の生活で演じきっています。そして、団地を去り変わっていく同級生の姿とかつての栄華を極めた団地が、次第に荒廃していく姿とダブらせながら、ある事件によりもたらされた使命感の様なものを純粋無垢な彼の姿を通して浮き彫りにしていきます。
甘酸っぱい思い出だけを描いた青春映画ではなく、団地と言う巨大な箱の中にある日本の時代変化や事件も描き、その時代が少年に及ぼした影響をも描いた社会派作品でもありヒューマン作品でもある秀作でした。