白石一彌監督に役所広司、松坂桃李など豪華俳優陣が揃う、東映が放つ映画「孤狼の血」を観賞
僕の家の前は、かつて東映系の映画館で、否応なしでヤクザ映画の大看板が目に映る環境にいました。高倉健主演の任侠映画から深作欣二監督の仁義なき戦いで、いわゆるヤクザ映画が誕生し、菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、梅宮辰夫などの名優が誕生します。あの北の国からの田中邦衛も仁義なき戦いで新境地を開いています。その後の人たちの活躍は周知の通りですが、子供ながらに現実の怖さを味わい、ある種の憧れを持ったのも「仁義なき戦い」でした。
今回の作品は原作者自身も仁義なき戦いに影響を受け、さらに警察小説を組みわせたニュータイプのヤクザ映画と言えます。
物語は、広島の架空の町で起こる組同士の抗争に、役所演じる暴力団との癒着を噂されるベテラン刑事大上と県警から移動になった松坂演じる新人刑事の日岡がコンビを組み、ある失踪事件を追う中で組同士の抗争が激化、警察内部の秘密にまで発展するミステリーです。
舞台は、暴対法前の昭和。夏の酷暑と共に今では、目にすることのない暑苦しいほどの濃い男たちの姿がリアルに描かれています。白石監督は、北野武監督のアウトレイジとは異なる昭和のヤクザ像を今の空気に合わせています。そこには、かつての仁義なき戦いに登場するどこか親近感のある人物像はなく、今の世代には嫌悪感を抱くかもしれません。
僕の場合は、朝ドラに出演中の滝藤賢一や中村倫也なども主要な人物として登場するなど、善人役のイメージが強い俳優が多くキャラクターに入り込めないところもありました。今の時代は、出演数の多さも災いしているので致し方ないですが、そこは、時代設定が昭和であることも影響しているかなと思います。
ただ、作品としては評価でき、あの時代にある独特な悲哀も感じられ、新しタイプの東映ヤクザ映画としては成功しているなと思います。
