65オヤジのスタイルブック

自画像の証言

昨日は、終戦企画で興味深いテレビ番組が二本あった。
一本は、昨年、海の特攻隊として知られる人間魚雷「回天」を描いた「出口のない海」

そして、もう一本は、東京藝術大学で開催されている「自画像の証言」展をテーマにした「日本人と自画像~東京藝術大学 4800枚の証言~」の番組だ。

この展覧会は、創立120周年を記念して開催中で、卒業制作の課題として与えられ、大学に永久保管される自画像5000点余りの中から160点が展示されている。
その展示品の中から明治31年卒業の北蓮蔵から青木繁、熊谷守一、藤田嗣治、佐伯祐三など洋画界の巨匠、無名の卒業生など、自画像を通して作家がどう向き合い、その時代を生きて来たかを語るドキュメンタリー作品だ。

なかでも、興味を惹いたのは、黒田清輝と藤田嗣治の確執。当時の外光派の傾倒した教官の黒田が、藤田の黒を使った自画像を痛烈に批判する。

それは、実は藤田の黒田に対する反骨の表現だった。彼は、黒田の流儀である黒い絵具を使わせないことへの反発として自画像に黒を使う。

後にパリに渡り、藤田の黒い描線を使った作品はパリで高い評価を得る。藤田の黒田への反骨心が原点となりその地位を確立する。

また戦争により表現の自由を奪われた学生たちの自画像には目が描かれていないことや卓越した写実力をもっていた、熊谷守一や浜田知明が後にその表現を捨て自己への踏襲や社会への批判精神へ変化していく様も描かれ興味深い。

東京藝大は、日本に於ける美術学校の頂点であり、またそこで学ぶ学生は超エリートと言って良い。

そんな彼らが、自画像と言う自分と向き合うテーマを与えられることにより、あるものは、あるものは、時代の波に呑まれ、あるものは自己表現を変え、あるものは描き続け、あるものは、己の未熟さに筆を折る。

自画像を出発点にして、それぞれの人生に向き合う最高のテーマを与えられように思えてならない。
僕は、一部の人間が唱えるところのエリート主義への批判は、この展覧会と番組を通して、決してあてはまるものではなく、東京藝大は表現者にとって最高の学び舎であることを新たにすると感じる。

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