アカデミー賞衣装デザイン部門でオスカーを獲得、ダニエルデイ=ルイス引退作品「ファントム・スレッド」を観賞
先週は、犬ヶ島、レディ・バード、ゲティ家の身代金とアカデミー賞ノミネート作品を観てきましたが、どの作品も魅力的で見応えがあり楽しく鑑賞できました。なかでも、今回紹介するファントム・スレッドは、僕にとって忘れられない作品となりました。
監督は、ポール・トーマス・アンダーソン、主演はダニエルデイ=ルイス。二人の完全主義者がゼア・ウイルビーブラッドから10年。再び競演し、美しくも、恐ろしい映画を作り上げています。後にインタビューでダニエルデイ=ルイスが本作後に引退に導き出されたことで、さらに作品の重みも増したような感じがします。
物語は1950年代のイギリス。オートクチュール界で絶大の人気を誇る孤高の仕立て屋レイノルズ・ウッドコックが、運命的な出会いを感じたウエイトレスのアルマをミューズとして招き入れたことで、彼の完璧な日常に波紋がおこる愛憎劇がミステリアスに描かれています。
孤高のデザイナー、ウッドコックを演じるダニエルデイ=ルイスは一年をかけて仕立屋としての技術を学び、その所作に加え、日常の振る舞いも究極のダンディズムにあふれ、そんな彼の振る舞いから生まれる衣装もエレガンスで美の極致を感じます。また音楽は、クラシックの静かで優しい調べがシーンを包み込むように流れ優雅です。
それだけでは済まされないのがアンダーソン監督。多彩な才能を発揮し、映画評論家の町山氏が語ってる、本作のエンドロールにで捧げられたジョナサン・デミ監督の「羊たちの沈黙」のオマージュとして、ウッドコックとアルマの愛の支配がこの作品の中心となっていました。二人の愛のかたちから背筋が凍るような戦慄と愛の調べの旋律を感じられると思います。