本日の映画レビューは、アカデミー賞でオスカー本命と叫ばれながら無冠に終わったケイト・ブランシェット主演の「TAR/ター」です。
ケイト・ブランシェットが女性指揮者を演じ話題となった映画TAR/ター。5月12日にようやく日本公開となり楽しみしてましたがレイトショーもなくタイミングも逃しながらようやく鑑賞できました。
ベルリンフィルの女性指揮者でコンサートマスターの女性と同性婚で養女を迎え生活を共にするリディア・ター。7年間首席指揮者を務めエミー、グラミー、アカデミー、トニー賞の4冠を受賞する天才は自伝出版も控え順風満帆の日々を送っていましたが、ある事件をきっかけに彼女の人生の歯車が狂い始め転落していく人生ドラマです。
先ずは傲慢でありながら理知的なカリスマ独裁指揮者を演じたケイト・ブランシェットの演技に終始魅了されますが、権力者の持つ孤独と不安を転落までの過程で見事に演じています。
映画会社は監督のトッド・フィールドに依頼したのは現在のミーツー運動に代表される権力者が陥いるパワハラやセクハラ行為を男性指揮者を主人公でしたが、トッド・フィールドはケイト・ブランシェットを主演として脚本を作っているところがLGBTQをテーマに進めているところが、この作品のキモです。
また、エンドロールを最初に持っていきラストシーンを彼女の再生のスタートとしている手法も面白く、2時間38分の長編でありながらもう一度疑問点を探り出したい衝動に駆られます。
昨今の映画事情は、エンターテーメント性の高い作品と難解な作品のベクトル軸はっきりしていて映画の好みが二極化する傾向にありますが、TAR/ターに限ってはクラシック音楽の崇高さの中にあるエンターテーメント性と強烈な個性を持つ主人公のカリスマ性、LGBTQの持つ社会問題を物語の中に多彩に組み込んだテーマ性が三位一体となっています。
長編作品ですが、クラシック音楽ファンにも映画ファンにも2023年の映画を語る上で欠かせない作品ですのでぜひ鑑賞してみてください。
※なお、町山&藤谷アメTubeの前後半の映画評を参考にしてみると謎の部分が解けます。