本日の映画レビューは、石井裕也監督、宮沢りえ主演の映画「月」です。
今回の作品は、実際に起きた障がい者施設殺傷事件を基にした辺見庸の同名小説を原作に舟を編むの石井裕也監督が脚本によりもので、新聞記者で知られる河村光庸氏の突然の死により実現が難しくなりましたがようやく実現にこぎついたものです。
物語は、宮沢りえが演じる元人気小説家の堂島洋子が、定職につけない夫との生活を支えるために重度障がい者施設に働き、作家志望の陽子やさとくんと呼ばれる青年と共に働く中で入所者たちへの同僚のイジメや隔離された入所者や寝たきりの入所者などとの出会いを通じて、正義とは何か使命感とは何かを問う内容となっています。
と、書けばとても清々しい内容のように思いますが、見たくないものにふたをしてしまう人間の偽善的な心根を突き付けられ重苦しさだけが残る感覚を与えます。そして実際に起きた傷害事件の中で語られる加害者の言葉に対して、どう立ち向かい進んでいくかを問われるのです。
主人公洋子や二階堂ふみが演じた同僚の陽子、後に加害者と磯村優斗演じるさとくんが抱えるものの重さも相まって、それぞれの迫真の演技も見事で映画での救いは夫演じるオダギリジョーとの家族の決断が突き付けられた刃からふと胸をなでおろす瞬間を感じました。
しかしながら、この映画を通じて心の中にあるわだかまりだけは持ち続けていかなければいけないと思い、こうした映画の存在価値を強く持ちました。