透明人間たちのひとりごと

オオカミ少年の物語 <1>

 桜咲くいつも通りのが訪れることを心待ちにしていた
北国の人々のまえに大自然が唐突に牙を剥いたのです。

 悲痛な叫びと絶望的な悲鳴を覆い隠すほどの怒涛となって
惨禍は突然に襲って来ました。

 いったい誰がこんな惨劇を想像しえたというのでしょうかeq

 そう。 ひとり、あの男を除いては …


 一瞬にして2万人を超す人々が波にさらわれ、死亡するか
行方不明となってしまった東日本大震災 の発生から
きょうで2週間になりますが、被災者の数は数十万人に上り
死者・行方不明者の数は日々増大して、被害はさらに広がる
可能性を見せています。

 日々緊迫の度合いが増しては、小康状態を続けて、やっと
一段落ついたかと思えば、またまた、新たなトラブルの種を
発生させる。

 福島第一原発の事故も終息するどころか、むしろ拡大の
様相を見せ始め、近隣に暮らす被災(被害)者を困惑・震撼
させるばかりか、日本中の人々の動揺を誘っているのです。

 福島の原発事故はあらゆる意味で人災と言えます。

 しかも、その人災が広範囲に拡大しようとしているのです。

 効率やコストパフォーマンス(低コストコントロール)信仰に
ドップリと漬かって得々として疑わない東電の経営陣たち…、
いや、彼らだけではなく、そうした多くの日本人が自ら招いた
災厄(人災)としか思われないのです。

 この未曾有の大災害と大惨事は、今月初めまでの政治の
混乱などを、一時にして吹き飛ばして、日本人の心
いまこそひとつにさせようとしているのかもしれません。

 もっともっと大切なものがいくつもあるだろうということを
気付かせようとしてくれているのかもしれないのです。

 計画停電と物不足に加えて、目に見えない放射性物質の
新たなる恐怖 …。

 好きな物を好き勝手なままに、いつでも手に入れることの
できる平時からすれば、足りない物ばかりに見える昨今の
生活環境も、そんな考えを捨ててみれば、何が本当に必要
なのか自ずと見えてくるはずです。

 そういう意味でも、あえて誤解を恐れずに言えば …、

 村はずれに暮らす少年の 『オオカミが来たexclamation2
と叫ぶ必死の訴えを無視した村人こそが私たちの姿なのだ
と知るべきなのです。

 今回の災害が人災であるとするもうひとつの理由は、
『オオカミ少年』 の話を間違ったままに解釈していた
ことに他ならないのです。
 
 不謹慎であることを承知のうえで俎上すれば、なにゆえ
東北地方が悲劇の舞台とならなければいけなったのかquestion2
ということなのです。

 厳密に言えば、主に三陸地方を指しますが、この地方を
過去に何度も津波が襲っている事実は日本人なら誰もが
よく知っていることです。

 明治三陸大津波、昭和三陸大津波、そして、チリ地震の
時の津波など、しばしばマスコミ等を介して知らされていた
周知の出来事です。

 ここに暮らす人々も先人から津波の恐ろしさを教えられ、
チリ地震の時には実際に津波を経験した人々も多数存在
していたはずです。

 リアス式と呼ばれる特殊な地形を有する海岸線を津波が
襲った場合には、一瞬にして狭い湾内に大量の海水が流入
するわけで、その高さも威力も膨大なものとなって、港や街
に押し寄せ、甚大な被害をもたらすという怖さは十分に認識
していたはずです。

 なのに、なぜ犠牲となった多くの人たちは大地震が起きた
のにもかかわらず高台に避難しようとはしなかったのか
という疑問です。

 海岸近くで暮らしていると仮定した場合に、もしも激震に
見舞われたとしたら、すぐに高台に逃げるのは当然のこと
で、今の私たちならば逃げないはずはないと思うでしょう。

 ところが現実には、多くの人々が直ちに逃げ出したわけ
ではありません。

 ここに大きな 落とし穴 があったのです。

 たびたび起こる地震とその度ごとに鳴り響く津波警報。

 しかるに一向に姿を見せない津波という名のオオカミ。

 こうしたことが繰り返し何度となくあったとすれば、誰も
彼も気がゆるみ、警戒心がうすれてしまい警報もただの
日常のひとこまになってしまうのです。
 
 もしも私が、被災地で生活していたとしたら、果たしてどう
だったのだろう。 無事に逃げ遂(おお)せたのだろうか

 自信をもって断言できない私にイソップの声が聞こえます。

 だから何度も言ったのに。 

 「オオカミ(津波)が来たぞexclamation2 って …、

 結論から言えば、

 イソップ物語の 『オオカミ少年』 の話は、少年の嘘
を戒める内容ではなく、油断しがちな警戒心や常時慣れっこ
になって緩慢となりがちな避難への喚起とそのための訓練と
実践を怠らないための警告の物語だったのです。

 『狼と羊飼い』 というのが元々のタイトルなのだそうですが、
『嘘をつく子供』,『狼と羊飼いの少年』,『羊飼いの悪ふざけ』,
『オオカミが来た』 などの題名になっていることもあります。

 さて、次回では、『オオカミ少年 <2>』 として

 オオカミ少年の謎を推理し紐解いてみたいと思います。
 
 そう。  そのことの真実をたったひとりだけ知っていた

 イソップの意志を継いで …


  被災された方々に謹んで震災の
        お見舞いを申し上げます。


 一日も早く復旧されますようお祈り申し上げております。

コメント一覧

透明人間2号
緊急地震速報も津波警報も、空振りかチップする程度が
大半で、いつしか慣れっこになってしまう。

だから、その名称の響きほどには警戒しなくなるものです。

所謂(いわゆる)、「オオカミ少年」現象ですね。

結果、羊飼いの少年のようになってしまうことも …。

悲しすぎます。
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