透明人間たちのひとりごと

よど号が映し出す景色

 尖閣諸島上空を含む東シナ海に迎撃戦闘機が緊急発進
(スクランブル)する基準となる防空識別圏を中国が新たに
設定したことで無用な緊張が高まっていますが …

 経済力をバックに、急速に軍備の拡充と近代化を図って
いるようで、陸軍に対して相対的に脆弱であった海軍力と
空軍力の充実(空母遼寧その他、航空戦力や防空体制の
整備)が可能となった現在、覇権国家 中国が防空識別圏
を設けるのは、むしろ自然な流れなのかもしれません。

 陸軍中心主義で航空戦力が弱かった中国軍はこれまで
防空識別圏を運用するだけの能力を十分に持ち合わせて
いなかったゆえに防空識別圏の設定には関心が低かった
わけですが、2000年代以降の急速な軍拡で戦闘機の性能
が大幅に向上し、空母遼寧の運航もあり、識別圏の運用を
開始したものと思われますが、実際、識別圏の運用は容易
ではないようです。

 地図(海図)に線を引いたところで、防空網が穴だらけで
不審機の侵入を許せば単なる「絵に描いた餅」
すぎませんし、現に米政府は米軍のB-52戦略爆撃機2機
を事前通告なしに識別圏内を飛行させています。

 28日の記者会見で菅官房長官は、自衛隊機が中国への
通告なしに識別圏内を飛行した事実を明らかにしましたが
、現時点で中国側からの反応はないと説明し スクランブル
はなかったことを示唆しました。

 これらに対して中国国防省は、「米軍機の動向を完全に
把握しており、自衛隊機その他 関係する航空機の状況も
全面的に捕捉している」 として、今後も監視を続けていくと
一歩も引かない構えですが、国土が広い中国では領空も
広大で、防空識別圏を設けても運用能力が伴わなければ
、逆に周辺国から侮られるような結果となることでしょう。


 1970(昭和45)年 3月31日午前7時30分過ぎ、日本航空
351便は、羽田から板付(福岡)に向けて飛び立ちました。

 やがて機体が水平飛行に入ると武器を手にした男たち
が客席から立ち上がり、乗客131人を窓際に追い込むと、
コックピットに乱入した 2人が 「われわれは共産主義者
同盟赤軍派だ。 このまま 『ピョンヤン』 に向かえ
」 と
機長を脅迫したのです。

 これに対し石田真二機長は、燃料がもたないことなどを
理由に彼らを説得し、8時59分に板付空港に着陸します。

 こうして、共産主義者同盟赤軍派が突如として起こした
日本航空351便(ボーイング727-89型機、愛称「よど号」)
での出来事は、日本における最初の 「ハイジャック事件
となったのでした。

 ところで、今から43年前に防空識別の監視体制が、どの
程度のものだったのか 見当もつきませんが、領空侵犯に
ついてはどの国もそれなりの警戒を怠っていなかったもの
と思われます。

 … と言っても、これから書き進める予定でいる日本初の
ハイジャック機 「よど号」 が見せてくれるだろう景色は
ボク が生まれる十数年もむかしの話ですので、現在の
防空体制や領空侵犯に対するスクランブル(緊急発進)の
レベルと比較するには余りにも程度に差があることは到底
否めないものなのですが …

 さて

 赤軍派を名乗る 9人の犯人グループは、朝鮮民主主義
人民共和国(北朝鮮)へと亡命する意思を示して、同国へ
向かうように要求しましたが、機長の機転で一旦、福岡に
とどまります。



 ここで当局は乗客の解放を求めますが、赤軍派が応じた
のは老人と女性と子供や病人を含む23人だけでした。

 (それでも要求に応じるだけの人道精神はあったんだ)

 そして 1時59分、「よど号」 はピョンヤンを目指して
再び離陸を開始したのでした。

 午後2時40分頃、北緯38度線付近を航行中に正体不明
の 2機の戦闘機が現れ、しばらくすると 「こちらピョンヤン
という無線誘導がコックピットに入ります。

 これに従って 「よど号」 が着陸したのは 3時16分の
ことでした。

 ところが、外を眺めていた赤軍派のひとりが叫びます。

 「ここはピョンヤンじゃない!!」

 なんとそこは韓国ソウルの金浦空港だったのです


 結果として 「よど号」 は、福岡の板付空港と韓国の
金浦国際空港を経由して、4月3日に北朝鮮の美林飛行場
に着陸し、犯人グループはそのまま亡命を果たすわけです
が、事は文面どおりに淡々と進んだわけではありません。

 金浦空港における偽装工作に激怒した赤軍派メンバー
は、北朝鮮に行かなければ人質の安全は保証できないと
通告し、日本国内ではピョンヤン行きを認めるべきだとの
意見が大勢を占めます。

 政府はソ連や国際赤十字社を介して北朝鮮に受け入れ
を打診し、朝鮮赤十字会から 「航行の安全を保証する」 と
の回答を 4月2日に得ていましたが、問題は人質の解放
帰還にありました。

 そこで、交渉にあたっていた山村政務次官が、自ら人質
となることを提案します。

 当初、この申し出を却下していた赤軍派も乗客の疲労が
限界に達していたことなどからこれを承諾し、機長以下の
乗員 3人と山村政務次官を除く99人を解放して、4月3日の
夕刻に、三度目の正直と言わんばかりに 「よど号」
ピョンヤンに向けて飛び立つわけなのです。

 それにしても何故に目的地である平壌(ピョンヤン)では
なくソウルの金浦空港に着陸してしまったのか

 symbol2 まずはその辺りの謎を、探ってみたいと思います。

 1970年 3月31日、午前 7時33分頃に羽田を飛び立った
「よど号」 は、富士山上空でハイジャックをされます。

 午前 9時前に福岡板付空港に着陸し、午後 1時59分に
ピョンヤンに向けて離陸したことは紹介したとおりですが、
その動きを逐一レーダーで監視していた日本の防衛庁は
、午後 3時前に同機が北朝鮮の領空内に侵入したことで
緊張の糸はピークにまで張り詰めていました。

 北朝鮮側が迎撃という手段に出ることも十ニ分に予測
されていたからです。

 ところが、「よど号」 は、ピョンヤンの南方約 60kmの
地点で突如方向を転換し、南下をはじめたのです。

 赤軍派はそれに気づかず、国籍不明の 2機の戦闘機と
こちらピョンヤン・アプローチ」 という管制塔からの無線
誘導を北朝鮮からのものと信じ込んでいました。

 そして 3時16分、「よど号」 は、韓国の金浦空港に
着陸します。

 のちに解放された石田機長は会見で、「着陸して初めて
韓国と気づいた」 と発言、これを受けて日本のマスコミは、
領空侵犯した 「よど号」国籍不明機だと判断した
韓国政府が、ソウルに強制着陸させたと報じます。

 以降において、謎は残されるもののこれが通説となって
いましたが、2006(平成18)年 3月30日、韓国外交通商省
がハイジャック事件についての外交文書を公開しました。

 それによると金浦空港着陸は、「老練な機長の計画的な
自意(自らの意思)によるものだった」との結論を公に発表
します。

 これに対し石田機長は 「韓国に降りるつもりはなかった」
と改めて否定しましたが、副操縦士の江崎悌一氏は福岡を
離陸するときの目的地はピョンヤンだったと強調しながらも
「管制塔との交信で韓国に降りることを確認した」 と述べる
など、機長の証言との微妙な食い違いをみせています。

 韓国外交通商省が石田機長の発言を否定した理由は、

 1 着陸前に管制塔を呼び出した際に 「ピョンヤン」 と
   言わなかったこと。
 2 北朝鮮では使用されない周波数で交信していたこと。

 …などから交信相手が北朝鮮でないことは、十分に認識
できる状況にあったというわけです。

 ピョンヤンへ向かうべく板付空港を離陸する前に機長が
福岡で受け取っていた地図は中学生用の地図帳のコピー
のみで、航路の線も引かれていない粗末なものでしたが、
ただ、この地図の隅には 「121.5MCを傍受せよ」(MCとは
メガサイクルの略で、現在のメガヘルツと同じ。民間航空
緊急用周波数)と書かれており、石田機長はこれに従って
飛行をしていたわけです。

 「よど号」 は朝鮮半島の東側を北上しながら、午後
2時40分に進路を西に変更します。

 この前後、突如として右隣に国籍を隠した戦闘機が現れ
、戦闘機のパイロットは石田機長に向かって親指を下げ、
降下(または着陸体勢)に入るように … との指示を行うと
そのまま飛び去ってしまいます。

 このとき 「よど号」 は、北緯38度線付近を飛行して
いましたが、実際には38度線を越えていたのです。

   

 ただ、休戦ラインは完全に38度線に沿っていないために
まだ韓国領内にいたことになりますが … ase2

 北朝鮮に入ったと思い込んだ副操縦士は、指示された
周波数に対して英語で 「こちらJAL351便」 と何度も呼び
かけますが、なかなか応答が返ってきませんでした。

 その後、同機に対し「こちら平壌(ピョンヤン)進入管制」
という無線が入ります。

 無線管制は周波数を121.5MCから134.1MCに切り替える
よう指示し、機体は誘導に従うかたちで左に旋回し、再び
38度線を跨いで南下するわけです。

 これは明らかに韓国当局による誘い込みで、石田機長に
なんらかの考えがあったとしても、以心伝心 でこれだけの
アプローチが可能だとは到底思えません。

 ハイジャック犯の意思に反して、勝手に韓国に降りること
など、一機長の判断では考え難く 「よど号」 を北朝鮮
に向かわせないための行動であると考える方が自然です。

 そもそも、金浦空港ではピョンヤンを思わせる偽装工作が
ほどこされていたわけで、その点からも韓国の外交文書の
内容には疑問が残ります。

 韓国兵は朝鮮人民軍兵士の服装で待機をし、「平壌到着
熱烈歓迎
」 と記したプラカードを女性兵士が掲げるなどの
入念な工作が行なわれていて、江崎副操縦士も 「乗務員
の判断で韓国着陸を決められるような余裕はなかった」 と
韓国側の見解を否定し 「日本政府、日航、米軍、韓国政府
が緊急に協議をして」 韓国着陸を決定したのではないかと
推測しているようです。

 一方で、日本政府の与(あずか)り知らないところで米韓
両国が協議の結果、金浦空港への強制着陸が決められた
とする意見があります。

 富士山上空で発信したハイジャック・コードを最初に察知
したのは、横田基地の米軍で、午前 7時50分には同機に
米国人が搭乗しているのかどうかの照合が日本航空国内
旅客課にあり、2人の米国人の搭乗が確認されると直ちに
緊急連絡網で本国に 2人の身元を照会したといいます。

 「よど号」 がピョンヤンに着陸した場合、敵国である
米国人は日本人以上に過酷な扱いを受ける可能性が高く
、米政府は日本に対し福岡で事件を解決するよう強い要請
をしていたという話です。

 当時、対策本部にいた日航社員の証言として、3月31日
朝に米当局から本部長あてに、「搭乗している米国人の内
ひとりは重要な任務を持っている人物なので、北朝鮮には
行かせないように手をうってくれ」 という旨の連絡が入った
ことを記しています。

 その人物は、ダニエル・マクドナルドという名前の神父で
乗客開放後に、日本が用意した旅客機に搭乗せずに忽然
と姿を消しているのです。

 日航では乗客が1人消えたと大問題になったそうですが、
韓国政府は曖昧な返答で不問に付したということです。

 そして、この件に関しては米政府も、一切、口をつぐんだ
ままなのです。

 また、金浦空港への誘導を行なった管制官は事件後に、
韓国中央情報部(KCIA)から 「理由は聞かずに金浦空港
に着陸させろ!」 との指示を受けたと証言しています。

 つまるところ、

 これらの証言を検証するとマクドナルド神父は、CIA
エージェントであり、米国としては何としてもマクドナルド氏
の北朝鮮行きを阻止すべく、米政府の主導のもとに CIA
KCIA との密接な連携プレーによって 「よど号」 を
金浦空港に着陸させたと考えることができます。

 であるとすれば、少なくとも韓国外交通商省の外交文書
は恣意的な虚偽文書であり、わざわざそのような嘘を公表
する裏には、日本を外したうえでの米韓両政府の間で何か
重大な決断がなされたと考えるのが、一番、真相に近いの
かもしれませんね

 ところで、4月3日の午後 6時5分に金浦空港を離陸した
「よど号」はピョンヤンに向けての、3度目のフライトと
なったわけですが、この時点でもなお、機長にはまともな
地図が手渡されてはいなかったのです。

 北緯38度線を越えて北朝鮮の領空に入ってからも無線
への応答も北朝鮮空軍による スクランブル もなく、
ただひたすらにピョンヤンを目指して飛行を続けたものの、
夕闇が迫り肉眼で確認できた小さな滑走路に向かいます。

 午後 7時21分に無事着陸を果たしますが、この滑走路は
ピョンヤン郊外にある朝鮮戦争当事に使用されていた美林
(ミニム/ミリム)飛行場跡地でした。

 中国が設けた防空識別圏にあたふたしている現在から
は随分と 隔世の感 がするスクランブル事情ですが、
この事件の13年後には領空侵犯をした旅客機に対しての
ソ連軍戦闘機によるミサイル攻撃が実行された大韓航空
機撃墜事件
が起こります。

 はてさて

 「よど号」 が垣間見せてくれた景色や風景はあなた
の目にいったい何を映し出しているのでしょうか

 スクランブル エッグ medamayaki でないことは

 どうやら確かなようですが … piyopiyo ase2

 

コメント一覧

明日はどっちだ
左が危険で狂気に満ちていることが、今回の米大統領選挙の顛末に如実にあらわれた。

右傾化は防衛本能の発露だったんだ!
左向け、右!
若い時はどうしても、それも純真であればあるほど左に傾くものである。

それにしても、昨今の右傾化は、時代の本能の為せる業か!
ノンポリのひとりごと
もしも北朝鮮に生まれていたらと考えると絶望しかない。

新型コロナの影響も感染者ゼロなどあり得ないのに、それが堂々とまかり通ることにも失望以上の絶望なのに、世界は何もできない。

偽装され、嘘の情報に刺激され続けて、理想を燃やし求めた若き学生たちの情熱が何とも悲しい。

「ああ、よど号」という思いである。
風まかせ
スクランブルエッグの方が、朝鮮半島の混ぜ合わせの韓国や北朝鮮よりはマシに見えるし、なにより、ずっとおいしいぜ!

ルート1/2
直近の航空機事件として、ハイジャックも含めていろいろな憶測が絶えない行方不明のマレーシア航空370便にしても、真実はうやむやのうちにごまかされ、忘れ去られて新しいトピックニュースに愚衆の民の目と耳は向けられる。

それが愚民社会の現実です。
ココナン
降りた場所がピョンヤンでないことに気付いた理由としては諸説あるようですよ!

 ①航空燃料タンクの商標
 ②シェル石油のロゴのついた給油トラック
 ③空港内に駐機していたノースウエスト航空機
 ④ラジオから流れるジャズやロック
 ⑤ジープに乗った黒人兵
 ⑥空港内を走るフォード車  etc

 おいらさんの言うシェルの看板というのは②に符合する話ですね。

 これらから想像するに、いそいで偽装工作をした韓国側の慌てぶりが見えるようです。

 それにしても稚拙ですよね!
おいら
ハイジャック犯が着陸した空港が平壌ではないことに気づいた原因は、シェルの看板だったとか。服装やプラカードで平壌を装っていたのに、目立つ看板を偽装するのを忘れていたとは詰めが甘かった。

防空識別圏問題で日米中が駆け引きしてるようですが、詰めが甘いのはどの国かな・・・?
バカボンのパパのパパ
中国が設定した防空識別圏に関するアメリカの対応の変化だけど、仮に軍用機が落とされた場合は殉教者的な英雄扱いとなるが、民間機が犠牲となると政府はもたなくなる。
さすがは、ダブルスタンダードの国なのだ!
皮肉のアッコちゃん
よど号事件の赤軍派メンバーって、日本人拉致事件とも関係があるだよね。
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