生後4カ月が近づいた頃には、私たちはダイオもニャキエもふたりともうちの子にすると決めていた。将来、繁殖させるつもりがないなら、避妊手術と去勢手術をする日程が迫ってきていた。病院の先生が言うには、性成熟する前に手術したほうが良いということだった。特に雌は、乳腺が発達する前に手術をしてしまえば、将来、雌猫はかかりやすいと言われている乳腺の病気になるのを防げるという。クリスマスが近づいた頃、2匹一緒に手術することにした。
ダイオの手術は、精管を糸で縛るだけというもので、即日数分で終わった。
ニャキエは手術入院が必要だった。ニャキエを病院に残し、ダイオだけを連れて家へ帰った。
手術後のダイオは、術前とまったくと言っていいほど変わりがなく、手術した箇所を気にして舐めるようなこともなかった。元気に遊びまわっていた。
翌日、ニャキエのお見舞いに行った。病院に着くとゲージが並んだ場所へと案内された。
小さなゲージの中で、ニャキエが横たわっていた。トイレ代わりに新聞紙が入れてあった。
「これ、いつも食べているフードとおやつです」
と、私は持ってきた餌を看護士さんに手渡した。先生がゲージからニャキエを両手で持って取り出してくれた。
「お母さんが来たよ」
と、言って、私にニャキエのお腹を見せてくれた。
「こんなに綺麗な縫合」
先生は会心の出来、といった様子でニャキエの手術跡を示した。1センチほどの縫い目が規則正しくファスナーのように縦に15センチ程度並んでいた。なるほど綺麗な跡だった。
「ほかの臓器も見てみたけど、大丈夫でしたよ」
と、先生が言ったので驚いた。手術のついでに診てくれたらしい。後で知ったことだが、発育不良だと臓器が癒着したりして、異常の見つかることがあるという。先生はそれはない、大丈夫だと言ってくれたのだった。
ニャキエは3日間入院して、帰ることになった。餌を食べていなかったのだが、私が差し入れたご飯をやっと食べてくれたのだと、後で看護士さんが言っていた。
退院の日。ニャキエをキャリーバッグに入れて家へ帰った。
当時の我が家は、二部屋あるうちの一部屋にロフトベッドを置いて、そこを寝室としていた。子猫たちもロフトベッドの支柱に掛けてあるバスローブをよじ登って、ベッドの上で寝ていた。家へ帰ると私はニャキエをキャリーバッグから出して、ベッドの上に降ろした。
するとダイがやってきて、ニャキエの臭いを嗅ぎ、手術跡の周りの血で汚れた毛の部分をペロペロと舐め始めた。エリザベスカラーをつけているニャキエは仰向けになってじたじたもがいていた。ダイオは、そんなニャキエのお腹のまわり一帯を舐めて、すっかり綺麗にしてあげたのである。
「ダイちゃん、優しい」
私は感激してしまった。このことは今でもよく覚えている。
だから、ダイオが病院から帰ってくる度に、ニャキエが病院の臭いを嫌ってシャーと怒るのを見ては、「ダイは昔、お前が手術から帰った時に優しく舐めてくれたんだよ」と思わずにはいられない。
ニャキエの抜糸は1週間後だった。お腹を切っているため、バスローブをよじ登ることができず、ニャキエはロフトベッドの下に来ると、上げてください、と言っているかのような顔をした。両手で前足の付け根と後足の付け根を支えるようにして持ち上げて、ベッドの上に載せてやった。
一度だけ、エリザベスカラーを外してみたことがある。ニャキエはすぐさま縫合の糸に噛みついて引きはがそうとしたので、慌ててカラーを付けた。
1週間後、ニャキエを抜糸するために病院へ連れて行った。処置はすぐに終わり、手術の傷跡はきれいに塞がっていた。良かった、これでひと安心である。術後の縫合跡が引きつったりすると、雌猫は一生その痛みに悩まされるという。手術が上手くいってよかった。先生に感謝である。
ダイオの手術は、精管を糸で縛るだけというもので、即日数分で終わった。
ニャキエは手術入院が必要だった。ニャキエを病院に残し、ダイオだけを連れて家へ帰った。
手術後のダイオは、術前とまったくと言っていいほど変わりがなく、手術した箇所を気にして舐めるようなこともなかった。元気に遊びまわっていた。
翌日、ニャキエのお見舞いに行った。病院に着くとゲージが並んだ場所へと案内された。
小さなゲージの中で、ニャキエが横たわっていた。トイレ代わりに新聞紙が入れてあった。
「これ、いつも食べているフードとおやつです」
と、私は持ってきた餌を看護士さんに手渡した。先生がゲージからニャキエを両手で持って取り出してくれた。
「お母さんが来たよ」
と、言って、私にニャキエのお腹を見せてくれた。
「こんなに綺麗な縫合」
先生は会心の出来、といった様子でニャキエの手術跡を示した。1センチほどの縫い目が規則正しくファスナーのように縦に15センチ程度並んでいた。なるほど綺麗な跡だった。
「ほかの臓器も見てみたけど、大丈夫でしたよ」
と、先生が言ったので驚いた。手術のついでに診てくれたらしい。後で知ったことだが、発育不良だと臓器が癒着したりして、異常の見つかることがあるという。先生はそれはない、大丈夫だと言ってくれたのだった。
ニャキエは3日間入院して、帰ることになった。餌を食べていなかったのだが、私が差し入れたご飯をやっと食べてくれたのだと、後で看護士さんが言っていた。
退院の日。ニャキエをキャリーバッグに入れて家へ帰った。
当時の我が家は、二部屋あるうちの一部屋にロフトベッドを置いて、そこを寝室としていた。子猫たちもロフトベッドの支柱に掛けてあるバスローブをよじ登って、ベッドの上で寝ていた。家へ帰ると私はニャキエをキャリーバッグから出して、ベッドの上に降ろした。
するとダイがやってきて、ニャキエの臭いを嗅ぎ、手術跡の周りの血で汚れた毛の部分をペロペロと舐め始めた。エリザベスカラーをつけているニャキエは仰向けになってじたじたもがいていた。ダイオは、そんなニャキエのお腹のまわり一帯を舐めて、すっかり綺麗にしてあげたのである。
「ダイちゃん、優しい」
私は感激してしまった。このことは今でもよく覚えている。
だから、ダイオが病院から帰ってくる度に、ニャキエが病院の臭いを嫌ってシャーと怒るのを見ては、「ダイは昔、お前が手術から帰った時に優しく舐めてくれたんだよ」と思わずにはいられない。
ニャキエの抜糸は1週間後だった。お腹を切っているため、バスローブをよじ登ることができず、ニャキエはロフトベッドの下に来ると、上げてください、と言っているかのような顔をした。両手で前足の付け根と後足の付け根を支えるようにして持ち上げて、ベッドの上に載せてやった。
一度だけ、エリザベスカラーを外してみたことがある。ニャキエはすぐさま縫合の糸に噛みついて引きはがそうとしたので、慌ててカラーを付けた。
1週間後、ニャキエを抜糸するために病院へ連れて行った。処置はすぐに終わり、手術の傷跡はきれいに塞がっていた。良かった、これでひと安心である。術後の縫合跡が引きつったりすると、雌猫は一生その痛みに悩まされるという。手術が上手くいってよかった。先生に感謝である。
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