立ちすくむ青年がいた。
渋谷駅南口、
多くの人々の行きかう流れを阻むように、
青年の周りを、流行りのスーツを身に着けた二十代前半と思しき男たちが、
半円に取り囲んでいる。
青年の傍らには、小柄の少女がすがるように立っていた。
ひときわ長身のスーツの男が、
青年の胸ぐらをつかむような体制で一歩足を踏み出した。
だが、おびえているように見えていた少女は、
両腕を大きく広げて
「やめて!」
と叫びながら長身の男の前に立ちふさがった。
その瞬間少女は踵を返し、青年の手を取り走りだした。
雑踏の中へ走りゆく二人に、スーツの男たちは
「待てよ このやろう!!」
と大声をだし、二人を追って行った。
私は、先ほどので出来事を思い浮かべながら
東横線の、ひしめき合うほどの混雑した車内で、電車の揺れに任せ
他人に全体重を委ねていた。
目的の駅で電車を降りた大勢の人々が、出口方向の階段へ流れて行く。
私も自然に流れにのっていた。
そして前方に先ほどのあの二人の男女を見つけたのだ。
私の住まいと近いのかもしれないな。
そんな事を思いながら階段へ足を運ぶ。
人々の流れの後方から、けたたましいほどバタバタと靴音を立て、こちらに向かってくる集団が居た。
振り向いた私は、はたと立ち止まった。
「 息をのむ 」
とは、此の事のようだ。
渋谷で見かけたスーツの一団だったのだ。
上りかけの階段の中ほどにいたあの男女二人も、立ち止まって振り向いている。
あっと云う間に二人の傍らを電車を降りた人々の流れは行き過ぎる。
気が付くと、ホームの階段付近に残っているのは、
その男女と、男たち。
そして、この私。
「 なんてこった!! 」
と、心の中で叫んでいた。
・・・・・・TUZUKU・・・・・・?