前回までのあらすじ:
オーストラリアミッションのある朝、ジョギングからのストレッチ中のひで氏に話しかけてきたオーストラリア人男性。他愛もない会話からの急展開で「うちに夕食に来ないか」というオファーが。海外ならではの大らかさなのか、それともこれは何かの罠なのか…疑心暗鬼な気持ちも否定できないひで氏が最終的にとった行動は果たして…
「ス」
「スケジュールを一旦確認して、こっちから連絡してもいいだろうか」
と一旦は保留という形を選択した私ひで氏。その時はこれが最善の様に思えた。
「もちろんだ。その名刺のアドレスにいつでも連絡を」
という返事をして、男性は去っていった。
当然のことながら私ひで氏は悩んだ。
とりあえず現地の、周りの同僚にそれとなく聞いてみる…が、いくら狭い街だと言っても10万人近くの人口はあるところである。
たまたま知っているという人もいるはずもない。
ただ、気になったのは「こうこうこんなことでディナーに誘われた」というと、現地のみんなが同じようにかなり驚いたことだ。
そんなことある?というような驚きをストレートに見せられると、オーストラリアの大らかな文化なのではないかと微かに予想していたことにもじわじわと疑惑の影が忍び寄る。
そして返事しあぐねたまま二日が過ぎた。
頭にはずっとひっかかっていたので、返事をしなければなぁと思っていた矢先、また朝のジョギングコースで遠くから歩いてくる男性を見た。
その彼のシルエットを見た時に、私ひで氏は妙な確信を得た。
要は、この川沿いジョギングが彼にとってのルーチンワークであることに確信が持てたのである。
そしてお互いに手を挙げ再び声を交わした時には、私ひで氏は
「ディナー、まだ行っても大丈夫?」
と大きな声で聞いた。
「もちろんだとも」
そんなことで警戒心が解けた?と思われる方もいるかもしれないが、私ひで氏にはあの朝もやの中、遥か向こうから巨体を揺らしながら汗だくでやってくる彼のシルエットを見た時に、何かこうとても真摯なものを感じたのである。
その夜、迎えに来てくれた彼の車に乗り込み、ご自宅に招いていただいた私ひで氏は、それはもう楽しい時間を過ごした。
彼の奥さんも考えられないくらいの素晴らしいご婦人で、手料理でもてなされ、それはバンダーバーグに来てからの一番のごちそうであり、間違いなくもっともあたたかいディナーだった。
食事の後、彼は広々としたリビングに私ひで氏を座らせ、食事中の会話でわかった互いの音楽的な嗜好を聴き比べるために彼自慢のオーディオシステムで色んな音楽を聞かせてくれた。そしてもちろん、アランスミシーバンドの音楽を聴いてもらったところ、
ご夫婦ともにいたく気に入ってくれ、早速iTunesから最新アルバムをダウンロードしてくれたのである。
ちなみに、意外にも彼が最も気に入ったのはColor of Mineであった。
こうして忘れられない夜を過ごした私ひで氏は、この後も、今もまさに彼と連絡を取り合い、好きな音楽をSNS経由で交換したり、ギフトを送り合ったり、はたまた彼等が今真剣に考えている来年あたりの来日について真剣に話しあっている。
昔何かで見たのだが、「傘を持たない」という考え方がある。
傘を持たない事で急な雨によって雨宿りしたり、どこかの店に駆け込んだりして、思いもかけない新たな経験をすることで人生の幅が広がるというものだ。もちろん、実際に傘を持たずに生活するということではない。
私ひで氏はこの考え方が好きだ。
今回もこの出会いがあるとなしでは、全く滞在の記憶も違ったものになっていたに違いない。
これからも私ひで氏は、傘を持たず生きようと思う。
オーストラリアミッションのある朝、ジョギングからのストレッチ中のひで氏に話しかけてきたオーストラリア人男性。他愛もない会話からの急展開で「うちに夕食に来ないか」というオファーが。海外ならではの大らかさなのか、それともこれは何かの罠なのか…疑心暗鬼な気持ちも否定できないひで氏が最終的にとった行動は果たして…
「ス」
「スケジュールを一旦確認して、こっちから連絡してもいいだろうか」
と一旦は保留という形を選択した私ひで氏。その時はこれが最善の様に思えた。
「もちろんだ。その名刺のアドレスにいつでも連絡を」
という返事をして、男性は去っていった。
当然のことながら私ひで氏は悩んだ。
とりあえず現地の、周りの同僚にそれとなく聞いてみる…が、いくら狭い街だと言っても10万人近くの人口はあるところである。
たまたま知っているという人もいるはずもない。
ただ、気になったのは「こうこうこんなことでディナーに誘われた」というと、現地のみんなが同じようにかなり驚いたことだ。
そんなことある?というような驚きをストレートに見せられると、オーストラリアの大らかな文化なのではないかと微かに予想していたことにもじわじわと疑惑の影が忍び寄る。
そして返事しあぐねたまま二日が過ぎた。
頭にはずっとひっかかっていたので、返事をしなければなぁと思っていた矢先、また朝のジョギングコースで遠くから歩いてくる男性を見た。
その彼のシルエットを見た時に、私ひで氏は妙な確信を得た。
要は、この川沿いジョギングが彼にとってのルーチンワークであることに確信が持てたのである。
そしてお互いに手を挙げ再び声を交わした時には、私ひで氏は
「ディナー、まだ行っても大丈夫?」
と大きな声で聞いた。
「もちろんだとも」
そんなことで警戒心が解けた?と思われる方もいるかもしれないが、私ひで氏にはあの朝もやの中、遥か向こうから巨体を揺らしながら汗だくでやってくる彼のシルエットを見た時に、何かこうとても真摯なものを感じたのである。
その夜、迎えに来てくれた彼の車に乗り込み、ご自宅に招いていただいた私ひで氏は、それはもう楽しい時間を過ごした。
彼の奥さんも考えられないくらいの素晴らしいご婦人で、手料理でもてなされ、それはバンダーバーグに来てからの一番のごちそうであり、間違いなくもっともあたたかいディナーだった。
食事の後、彼は広々としたリビングに私ひで氏を座らせ、食事中の会話でわかった互いの音楽的な嗜好を聴き比べるために彼自慢のオーディオシステムで色んな音楽を聞かせてくれた。そしてもちろん、アランスミシーバンドの音楽を聴いてもらったところ、
ご夫婦ともにいたく気に入ってくれ、早速iTunesから最新アルバムをダウンロードしてくれたのである。
ちなみに、意外にも彼が最も気に入ったのはColor of Mineであった。
こうして忘れられない夜を過ごした私ひで氏は、この後も、今もまさに彼と連絡を取り合い、好きな音楽をSNS経由で交換したり、ギフトを送り合ったり、はたまた彼等が今真剣に考えている来年あたりの来日について真剣に話しあっている。
昔何かで見たのだが、「傘を持たない」という考え方がある。
傘を持たない事で急な雨によって雨宿りしたり、どこかの店に駆け込んだりして、思いもかけない新たな経験をすることで人生の幅が広がるというものだ。もちろん、実際に傘を持たずに生活するということではない。
私ひで氏はこの考え方が好きだ。
今回もこの出会いがあるとなしでは、全く滞在の記憶も違ったものになっていたに違いない。
これからも私ひで氏は、傘を持たず生きようと思う。