クリスマス、年末年始のお祭り騒ぎがようやく過ぎ、
なにかぼーっとした気分↑で向かえてしまう2月。
…朝起きても夜。寒い。すぐ日が暮れる。1日曇り空。
なーんにもしなくても自分がどんどんウツ気分に落ちていくのがわかる…
この時期にあるカーニバルという、“ひたすらバカ騒ぎ”というか、“踊らにゃそんそん”的
伝統的な行事というのは、「皆でこのウツウツ気分を晴らそうじゃないか?!」という
気持ちが動いてできたものと思われる。
このカーニバルの前哨戦というか、またバレンタインデーよりも早く、
聖女アガタ(サンタ・アゲダ)祭というのが2月5日~7日まで毎年この国の各地で祝われる。
一言で言えば、スペインの女正月である。
(*地方によって違いがあります)
年末年始、料理や接待に多忙を極めた主婦らを労い、慎ましく祝う
女正月…と聞いてこんな↓場面を想像したあなた、違います。
1.スペインでの女正月とは?
まず役所にて市町村長より、厳かに官杖の譲渡式が行われ、
その日1日の街の権威を女性らが占めることが宣言される。
その後女性の団体は歌い踊って街を練り歩き、運悪く(?)通りかかった
男性らに“お布施”を要求。これを軍資金にして、その日のパーティーが開催されるというわけ。
この日が近くなるとあちこちのレストランやメソンで見る、
「聖女アガタ祭特別ランチ、ディナー団体予約受けます!」の広告。なぜか「ショー付」が多い。
この日は「既婚未婚を問わず、女同士でわいわい騒いでOK!無礼講の日」。
それを見込んでボーイズストリップショー付ディナーというのも近年流行ったわけで。
2. そもそもこの祭の主人公、聖女アガタ(スペイン名はアゲダ)とは?
3世紀。シチリア島のカタニアの貴族の娘として生まれる。
美しく、教養豊かなアガタは、島の知事からの求婚を断ったことから恨みを買い、
キリスト教徒であった彼女は法廷に引き出された。ローマ皇帝による厳しいキリスト教弾圧下、
信仰を捨てさせるためアガタは乳房を切り取られる(ひぃぃぃっ!)という拷問を受けた。
衰弱しきってもなお祈り続ける彼女のところに聖ペトロが現われ、その奇跡によって治癒される。
決して信仰を捨てない彼女は、ついに炭火と焼けつく石の上を引きずられ、牢獄の中で息を引き取った。
よって聖女アガタは“女性性の守護神”である…とのこと。
3.女正月、やがて悲しきの理由
この祭、ここサラマンカを含むカスティージャ・レオン州に多く見られる。
街角でおばさん集団に囲まれて、泣く泣く財布を空にしてるおっさんも見たし、
夜にはハデハデスーツに身を固めた女性陣がディスコで沸き返っている様子も見た。
とにかくそのテンションの高さが引くほど。
(写真は聖女アガタにちなんだおっぱいパン)
が…この祭、年々流行らなくなってる気配あり。
参加者はおばあちゃんの年齢域の方々のみになっている。
そりゃそうだ、女性が好きな時に出かけられる自由な時代が来て久しいのだから。
農村出身の年配の男性が、はっきりと「消えて欲しい因習だな」と語る。
「ちょっと前までは、女性が遊びに出かけるなんて本当にこの日しかなかった」
「出かけたのはいいが、帰りが遅いだなんだと旦那に散々叱られ」
「聖女アゲタの日の“おしおき”なる傷跡、やけど跡をかかえた女性を何人みたことか」
…はっきり言おう。この国のマチズモの風潮は未だ根強い。
この話だけでいくらでも書けるが、そもそも“女~”なる伝統がある事自体がそれを語る。
昨年の2016年だけで、パートナーからの暴力で40名の女性が命を落としている。
彼女らが聖女アガタのご加護の元にあらんことを…
4.そしておっぱい
女性性の象徴である乳房を切り取られた、聖女アガタは絵画の題材としてしばし登場。
切り取られたおっぱいをにこやかに抱える姿がちょっと怖いが(涙)
このおっぱい型から、昔はパン職人、鐘職人の守護神であったそう。
近代においては乳がん患者の守護聖人となっている。
奇しくも先月23日、この国で有名なアーティスト、世界的なモデルとしても活躍していた
ビンバ・ボセ氏が41歳の若さで亡くなった。乳がんだった。
2014年に手術。その後肝臓や脳への転移が見つかり、闘病生活を
公開し、活動を続けていた。
マニッシュな雰囲気の素敵なモデルで、叔父の歌手ミゲル・ボセとの共演など
なかなかおもしろい活動をしてた人。
…彼女の死後、ツィッターでまさに死者を踏み躙るような嘲笑コメントが散見され、
(訳すのさえ気分が悪くなるような無記名コメント)警察も動いたスキャンダル
となっている。
セクシュアリティをネタに、他人の人生をほじくり返す魔女狩り行為-
おっぱい切られた聖女アガタの3世紀の時代と、なんの変わりがあるのかね?怒
まだまだ遠い春の訪れをじっと…いつまで待つんだろう?
おっぱいパンを齧りながら、ため息一つもでるってもんです…