平成23年度における税制改正のポイント (23年7月1日現在)
◎今回成立したもの
●年金所得者の申告不要制度
●消費税95%ルールの見直し
●消費税事業者免税点制度の見直し
●期限切れ特別措置の延長 など
●今回成立せず先送りされたもの
●法人税率引き下げ
●相続税増税
●給与所得控除の見直し
●役員の退職所得課税の見直し
●成年扶養控除の縮小 など
成立の内容
1、個人所得税
1、上場株式等の配当所得及び譲渡所得等に係る10%軽減税率 を2年延長し、平成26年1月から20%本則税率とする。
これに伴い、少額投資非課税制度の導入時期を平成26年1月とする。
2、電子申告時の特別控除
1、5000円の税額控除(1回のみ)→ 2年延長し23年分は4000円。24年分は3000円。延長1回のみ
3、公的年金申告不要
1、年金所得者の申告手続の負担を軽減するため、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、年金以外の他の所得金額が20万円以下の者について申告不要制度の創設する。平成 23年分以後 の所得税について
4、申税告義務がある者の所得税の還付申告書の提出期限
1、その年の翌年1月1日から3月 15 日迄とする 平成23年分以後の所得税について
5、寄付金控除(所得控除)
1、認定NPO法人への寄附について
所得税において税額控除制度(控除率40%とし、個人住民税と合わせて50%まで)を導入する。公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人または更生保護法人への寄附についても同様の税額控除制度を導入する。
2、控除額
特定寄附金の額または総所得金額等の合計額×40%のいずれか低い方の金額
-2000 円×40% ※所得税額の 25%が限度
3、震災特例法による寄附金控除の拡充
6、法人税
1、中小法人の法人税率の特例延長
中小法人の法人税率の特例(年800万円以下の所得部分について22%を18%とする)法人税率を1年延長し、平成24年3月31日までの間に終了する事業年度まで
2、雇用促進税制
雇用や投資を促進するため、雇用を一定以上増加させた企業に対する特別税額控除制度(増加1人あたり20万円)
7、消費税
1、消費税~いわゆる「95%ルール」は平成24年4月から適用開始
2、売上高が5億円を超える事業者は、総売上のうち消費税がかかっている売上の比率が95%以上であっても支払った経費に含まれていた消費税のうち一部が、納付税額から控除できないこととなった。平成24年4月1日以降に開始する課税期間から適用。
2年前の売上高が1,000万円以下の事業者のうち、前期の半年分の売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の免税事業者から除外される。平成25年1月1日以降に開始する課税期間から適用。
※これまでは、2年前の売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の免税事業者とされた。
免税事業者の判定基準厳しく 改正前は前々年又は前々事業年度(基準期間という)の課税売上高が1,000万円以下の事業者に ついては、原則として消費税の納税義務が免除されていました。 今回の改正により、消費税の免税事業者の要件が見直され、基準期間の課税売上高が1,000万円 以下であっても、前年又は前事業年度開始日以後6ヶ月間における課税売上高が1,000万円を超え る場合は、納税義務が免除されないことになります。 新しい判定基準は、平成25年1月1日以後開始する年又は事業年度から適用されます。
仕入税額控除制度の「95%ルール」の見直し(適用対象者の縮減) 改正前は課税売上割合が95%以上の場合、全額仕入税額控除ができる制度(95%ルール)があり、 すべての事業者に適用されていました。 今回の改正により、課税期間の課税売上高が5億円超の事業者は、平成24年4月1日以後開始する 課税期間から95%ルールの適用が受けられなくなります。その結果、課税売上高に対応する消費税 しか控除できないことになり、納める消費税額は増加することになります。
8、相続税
1、源泉徴収
相続等保険年金については源泉徴収しない。
2、支払調書制度
提出省略基準(20万円以下)を撤廃する。
相続等に関する内容を記載事項に追加
平成 23 年 1 月 1 日以後の初年度分の支払調書について、相続等保険年金であることを明らかにする措置を講ずる。平成25年1月1日 以後の支払分から適用
3、「更正の請求」の特例
相続または贈与等に係る保険年金の保険金受取人等に係る「更正の請求」現行税法に 基づいて、所得税の還付を受けるため 所得税の申告をしている者が、その所得のうちに 保険年金所得が含まれているときには、平成 23 年6月 30 日から1年間、更正の請求 を行う ことができる特例措置を講ずる。
9、贈与税 ~住宅取得等資金贈与の非課税範囲の拡大~
1、贈与税非課税措置の要件緩和
~土地を先行して取得した場合も適用可能に~ 住宅取得等資金贈与の非課税制度とは、平成23年に父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資 金の贈与を受け、贈与年の翌年3月15日までにその資金の全額を充てて住宅を取得し、その住宅に居住 する等一定の要件を満たせば、贈与金額1,000万円までは贈与税が非課税となる制度です。 改正前は、居住用の家屋だけでなく、その土地を取得する資金についても非課税の適用を受けようとす る場合、家屋と同時にその土地を取得する必要がありました。今回の改正により、家屋に先行して土地を 取得するための資金贈与についても、非課税の対象とされました。ただし、この場合においても原則とし て贈与年の翌年3月15日までに家屋を取得し、居住する必要がある。
10、住宅・土地税制
1、既存住宅に係る特定の改修工事に
平成 22 年 12 月 31 日までに一定の居住者が自己の 居住の用に供する住宅について、一定の要件を満たすバリアフリー改修(高齢者等居住改修工事等)または省エネ改修工事(一般断熱改修工事等)を行っ た場合、住宅特定改修特別税額控除として、次の算式による金額が、所得税額から控除される。
控除額※1(最高 20 万円)
適用期限を2年延長 バリアフリー改修工事税額控除額の上限額を次のとおり引き下げる。
・平成 23 年 20 万円
・平成 24 年 15 万円※
11、登録免許税
1、所有権の保存登記 0.15%(本則:0.40%)
2、所有権の移転登記 0.30%(本則:2.00%)
3、抵当権の設定登記 0.10%(本則:0.40%)
適用期限を2年延長する。