きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

七夕(黄瀬・火黄前提)

2010-07-07 11:40:51 | 小説―黒子のバスケ
教室はざわついている。

今日は、担任の粋な計らいにより、ロングホームルームで七夕イベントをすることになった。
何人かの生徒は、「高校生にもなって・・・」とあきれていたが、楽しいからいいじゃないっスか、と言ったらほとんどの人が賛成した。


「んじゃ、短冊に願い事書いてー」
指示がとぶ。
短冊は、全てが凝っていて、二色でストライプやチェックなどの模様が描かれた紙だった。

なんだかこういうのも久しぶりだ。

それにしても、7月7日というのはなんの巡り合わせだろうか。
背番号が7。高校三年間は、七夕は特別な日に感じられるだろう。

そう考えると、やはり願い事といえばひとつしかない。

『全国制覇 7 黄瀬涼太』

やっぱり、制覇しなくちゃな。
一人でやるんじゃなくて、全員で。
黒子っちが教えてくれたように。
その想いも込めて、背番号を記した。

モデルも全国制覇すれば、と一人の女の子に言われたけど、やっぱ今はバスケ。





ふいに、クラス委員の声が響く。
「そこそこ枚数余ってるから、無記名で書きたい人とかはどうぞ~」

無記名。
・・・・・・よっし、書こう。

モデルをやってたらおよそ書けないであろう願い事も、無記名なら大丈夫だ。


誰にも見られないように、気持ちを込めて書き入れる。









全員分集められたカラフルな短冊は、全てが笹に取り付けられ、教室の隅に括られた。

その中でも、少し高めの位置に取り付けられた、赤と黄色の派手な短冊には、無記名でこう書いてあった。


『アイツとずっと一緒にいられますように』






fin.

Someday,I will #4(火黄)

2010-06-26 17:25:29 | 小説―黒子のバスケ
「火神っち」
「何だよ」
「帰ってくれないっスか」
「・・・!?」
「心配してくれるのは嬉しいし、ありがたいんスけど・・・ちょっと一人でいたい・・・・・・渇いて荒れてるんス」


「・・・嘘言ってんじゃねぇよ」
「嘘じゃねぇっスよ・・・俺はほっといてほしいんス」
「じゃあ、」

火神が声を荒げる。


「じゃあなんで泣いてんだ」

「え」


一筋の涙が、頬を伝っていた。
さらに涙は奔流となる。

泣いて渇いて乾いて渇いて、尽きてしまったと思っていた涙は、いつの間に潤いを取り戻したのか、一昨日と同じく頬を濡らした。

---きっと、火神の存在だ。
火神が現れたことによって、渇いていた心は急速に潤いを取り戻し、予測しなかった展開に堤防は耐えられず、涙腺は勢いよく決壊したのだろう。


「そんな顔して泣いてるヤツを、どうしてほっとけるんだよ」

ぎゅう、と力強く抱きしめられる。

「火神っちぃ・・・」
「渇いてなんかいねぇよ・・・泣けるんだから、十分だろーが」

頬を撫でられ、されるがままにキスされる。
傷を癒し、渇きを潤し、落ち着きを取り戻させる。
そんなくちづけ。




「・・・好きなだけ泣けよ、大丈夫だから」




黄瀬は、一昨日の勢いを取り戻して溢れ出た涙を止める術を、持ち合わせていなかった。




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Someday,I will #3(火黄)

2010-06-23 07:02:10 | 小説―黒子のバスケ
暫く髪を弄んでいた指が、髪から降りてきた。

そして急に、唇に触れられる。

予想していなかった行動に、今度は抑え切れなくて反応してしまった。
でも、それでも寝たふりを続行する。


「おい、黄瀬、起きてんだろ」
(やっぱりばれてるー!!)

しかし、ここまで寝たふりを決めていたら、逆にどう起きればいいのかわからなくて、そのままでいた。

(どうしよう・・・・・・)

「・・・起きねぇんなら、キスすんぞ」
「!!!!????」

突然の発言に、飛び起きてしまった。

「やっぱ起きてんじゃねーか」
「か、火神っち・・・!!」
まだ心臓がバクバクいっている。


「なんで寝たふりなんかしてたんだよ」
「ど、どーやって起きればいいかわかんなかったんスよ・・・」
「別に普通でいいんだろ」
困ったように返されてしまったが、ごもっともだ。


「とりあえずまあ・・・あの様子じゃあ、今頃死にかけてんじゃねぇかと思って、様子見がてら飯でも作ってやろうと思ったんだよ」
「火神っち・・・」

優しい。
言い方はぶっきらぼうなとこもあるが、優しいのだ、彼は。


・・・でもその優しさが、心の傷には沁みすぎて痛かった。



「火神っち」
「何だよ」
「帰ってくれないっスか」



.

Someday,I will #2(火黄)

2010-06-19 23:11:12 | 小説―黒子のバスケ
長く続いた静寂を打ち破ったのは、自宅のインターフォンだった。

(誰だろう・・・・・・)

気にはなったが、動く気力はなかったので、このまま居留守を決め込むことを決意する。

何度かインターフォンが鳴った後、スピーカー越しに聞こえてきたのは、予想していなかった声だった。

『おい黒子、ここで合ってんだよな?・・・は?電話でくらいはっきり話せよ!!』

一瞬にして、目を見開いた。

(火神っち・・・?)

何しに来たのだろうか。

会話の様子から、黄瀬の家を黒子から知って来たはいいものの、裏返った表札や反応のないインターフォンに、不安になり黒子に確認の電話を入れている、といったところだろう。


(でも・・・・・・)

今は、独りでいたかった。

できれば、このまま帰ってほしい・・・


ほしかったのだが。

「あれ、鍵あいてんじゃねぇか・・・おい、黄瀬、いんのか?入るぞ」

入ってきてしまった。


仕方ないから、せめて寝たふりをしてやり過ごそうとした。


進入してきた火神の目線を感じる。

(ばれないかな・・・)


不意に、ベッドの片側が沈んだ。
火神が、ベッドに座ったらしい。

さらに、頭を撫で、髪を梳いてくる。
それがどうしようもなく心地よくて、反応してしまいそうだったけれど、何とかして堪えた。

今起きたら、自分が何をして、火神が一体何と思うかは、わからなかったけど少し恐ろしかった。




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Someday,I will #1 (火黄)

2010-06-17 07:21:21 | 小説―黒子のバスケ
汗も涙も、出てこなくなった。

体も心も、渇いてしまったらしい。


一昨日の出来事は、黄瀬をそうするのに十分過ぎるほど、彼の感情を揺さぶった。


・・・・・・元チームメイト、そして勝利を誓った男への敗北。

チームのために、信頼してくれる仲間のために、と戦った。

だからこそ、仲間と共に戦おうとしたのに。

『俺のバスケは------』

昨日の言葉が蘇る。

自分が誓った方法とは全く逆な意味。
それは、かつて最も憧れた男からの発言。


「・・・・・・・はぁ」

大きなため息をついて、動く気力もなしに、部屋の静けさに、目を閉じ意識を落とした。
眠くはないが気怠い体を、ベッドに横たわらせたままでいる。


どうせ今日も、誰も来ない。
家の鍵は開けてあるままだが、眠る気もないし、いざとなったら起きれば大丈夫だ。


とにかく今は、何もしたくはなかった。




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日本語とメールと君 side:seirin (火黄)

2010-06-07 08:20:55 | 小説―黒子のバスケ
ポケットの中で、携帯が規則正しく震える。
取り出してみると、一人だけ個別に設定されたランプの色が、メールの送り主を示していた。

顔が、一瞬綻んでしまったらしい。

「あら、メール?なになに彼女~?」
「えぇ!?火神、彼女いんの!?」

隣に、カントクと小金井先輩がいた。


・・・全く気付かなかった。

ぼーっとしていたせいで、好奇心の対象になってしまったことが悔しくなる。
それと同時に、横に来た先輩二人に気付かないほど、自分はそんなに、メールに舞い上がっていたのかと、情けなくも感じた。


「っか、彼女なんていねーよ!ですよ!!」
また妙な敬語を使ってしまった。
日本語はどうにも難しい。

「ふぅん・・・彼女、は、いないのね」
カントクは、やたら含みのある言い方をする。
カントクにはメール相手がバレてんのかな、と思ったが、幸いにも小金井先輩は気付いてないらしい。キョトンとしていた。

「バカガミにもとうとう春がきたか・・・まあバスケバカ同士通じんのかしらね」
想像通り。
バレている。
やっぱり日本語は難しい。
上手くごまかすこともできないときた。


とにかく、長居するとまた冷やかされかねない。

「・・・んじゃ、俺はこれで」
「あっ!火神逃げんなよ!!」
別れを告げたら、何も気付けていない小金井先輩がいろいろ叫んでいたが、気にせずその場を離れた。

・・・メールの内容も気になるしな。




○●○●○●○●○●○●




いつものようにテンションが高めのメールを読んで、思いっ切り顔がゆるむ。
自分でもはっきりわかるほどに。

「しゃあねぇな、今度スポーツショップでも連れてってやるか・・・」

デートの催促への返事にしてはそっけない場所だが、そこが1番、お互い話が合うところだろう。

それにもし、モデルであるコイツのファンに、うっかりテーマパークで二人きりなんてところを見られたら、何が起こるかわからない。


日本語は難しいが、拙くとも気持ちが伝わるように。
返信を、打つ。
やはり、難しいけれど。


同時に、別のことも考えていた。

(アドレス伝えてくれた黒子に、感謝しなきゃな。
やっぱし黄瀬のこと、

好きだ。)