KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

ハチクロその3〜追いかける恋しのぶ恋、そしてきらめく恋の瞬間

2019年12月26日 | カノンの記録

ハチクロで一番多く出てくる場所は多分、花本先生の研究室。

浜美大の卒業生で先生となった花本修司は花本はぐみといとこ関係にありますが、はぐみにとっては兄であり父であり、そしてかけがえのない大切な人となります。

ここではぐみに出会った竹本くんは恋に落ち、それを目撃した真山巧。

しかし、はぐみはやがて天才森田と出会って、二人は恋に落ちてしまいます。

一方、真山は修司の学生時代の同志である原田の嫁となった理花に密かに、しかし熱烈に恋をしています。

理花は事故で無くなった夫への罪の意識もあって、新たな恋など受けつけようとしない。

そして陶芸科の山田あゆみは真山が好きでたまらないのに、その思いは叶わず、

恋する乙女の一途さで真山の後をつけ、理花と対峙したりもします。

 花本研究室前の廊下

 花本研究室。奥にはぐみの作業部屋があります。

天才はぐみの傑作が生み出される場所。

原田デザイン事務所兼の理花のマンション。クールでネガティブな雰囲気なので全体にブルーグレートーンでまとめました。

 

花本先生を中心にそれぞれの叶わぬ恋がトライアングルに展開していくわけですが

あゆみの切ない恋が一番読者の共感を呼び、恋敵の理花さんはどちらかというと嫌われキャラかもしれません。(根暗だし)けれどその壮絶で寂しい過去が明かされてくると、彼女の心もまた切なくて悲しいことがわかります。

ハチクロにはそれぞれ好みはあれど本当に嫌な奴は出てきません。どのキャラも愛おしく描かれている、そんな感じです。

ちょうどこのオブジェのように、周囲のいろいろなしがらみに束縛されながらも、恋に、人生に悩みながら、互いに絡み合って成長していくものなのかもしれません。

 

「ハチミツとクローバーパート2」は2007年の記録でまた紹介したいと思います。


ハチクロその2〜昭和臭漂う若者たちの巣窟

2019年12月25日 | カノンの記録

竹本祐太や真山巧、森田忍らが暮らすアパートは、「平成」といえども「昭和」30〜40年代ぐらいに建てられた古い木造アパート。共同玄関、共同炊事場、風呂なしなんて、今時の美大生がいかに貧乏でもチョイスしないのでは?というぐらいレトロです。(このレトロ建築が好みとなると話は別ですが)

 

3畳一間でない分、フォークソングの「神田川」の世界よりは新しい感じです。

昭和へのノスタルジーでこういうアパートを舞台にした漫画作品結構ありますね。

トキワ荘や「めぞん一刻」へのオマージュでしょうか。

 

外観の設定として杉並区、中野坂上あたりの木造家屋など取材しました。

(そういえばこのアパートの名前なんでしたっけ?)

ハチクロには羽海野先生お好みのイケメン男子や老人がわんさか登場しますが、(あとオネエキャラも)このアパートの住人にも伝説のローマイヤ先輩なんてお方がいらっしゃいました。普段は姿がないのに突然帰還するとローマイヤハムやソーセージをたくさんもってきて飢えている住人を喜ばせ、後光がさすほど頼りになる先輩でした。

  

「初期イメージボード」 こんな感じでいきますがいかがでしょうか?と提示した最初のボード。

で、本編はもう少しかっちりと収まりました。

 玄関とドアのガラス格子はちょっとおしゃれ。

玄関の靴箱の上にある昔の牛乳瓶箱はカンパ用募金箱として使用されています。

 何気に置かれたみかん箱も誰かの実家からの差し入れでしょうか。

竹本くんの部屋は2階の202号室でした。

室内は6畳。入り口にスリッパを脱ぐ三和土があります。

中古ですが、小型のテレビとVHSビデオデッキがあります。結構本がいっぱいで勉強家ですね。

俯瞰で見るとこんな感じ。

 共同の台所。湯沸かし器もあります。手前の103 号室がローマイヤ先輩の部屋。

ここから2階への階段があります。ぺらぺらのサンダルが懐かしい感じ。

 

 勝手口を出ると、森田が使用しているシャワーコーナーがあります。

森田は室内もかってに改造して怪しいコクピット風異空間になっていました。

 

つづく。


2005年の仕事②〜美大生の恋はハチミツの味?

2019年12月24日 | カノンの記録

☆ハチミツとクローバー  第1期   2005年4月〜9月放送(ノイタミナ)

監督 カサヰケンイチ

シリーズ構成・脚本  黒田洋

キャラクター監修   羽海野チカ

キャラクターデザイン  島村秀一

総作画監督 吉田隆彦

サブデザイン  都築裕佳子

美術監督   柴田千佳子

色彩設定   石田美由紀

映像設計  大河内喜夫

撮影監督 黒澤豊(

編集      西山茂

アニメーション制作 J.C.STAFF

「ヤングユー」という女性漫画誌に連載された人気コミックのアニメ化作品。(のちに「コーラス」に転載)

美大に通う男女の切ない恋愛や将来の不安など、ギャグも満載に、総じてリリカルに描いているストーリー。

アニメはほぼ原作のイメージを壊さないように、丁寧に描いた感じです。

背景的には、ほぼ「フルーツバスケット」路線ですが、用紙も変えて水彩画風の滲み効果を出し、セピアの色鉛筆タッチも多用しました。

何しろ舞台が美大なので下手な絵は描けない、と言ってリアル過ぎても合わない、と色々悩むところですが実はほとんど悩むことなく好きなように描かせていただいたので、楽しい仕事となりました。

原作を愛するスタッフが多く揃ったことで、互いに一生懸命描こうとする相乗効果が生まれて良い作品となった好例です。

 

 けれど美術としては単独にフィーチャーされることはほとんどなかったというか、

撮影効果で全体に白っぽかったせいか、背景手抜きとか楽な仕事している、なんて思われていたのかもしれません・・・。実際は描くところはちゃんと描いていたつもりですが。

 

舞台となる美大として、まず武蔵野美術大学を取材。

まあ設定としてはほとんどそのまま?だったような。

浜美大正門

校舎色々  アンティークモダンな壁が素敵。

 掲示板にはクラブの勧誘など様々な情報が満載です。

 キャンパスのあちこちにアート作品が無造作に置かれています。

 描きかけの絵と散乱した道具が美大っぽい雰囲気。

 陶芸部などがある部室棟。 敷地の奥にあります。

 

 紹介したい画像が多いので次回につづく。