☆本記事は、Youtubeチャンネル『本の林 honnohayashi』に投稿された動画を紹介するものです。
ご興味を持たれた方は是非、動画の方もチェックしてみて下さいね!
●本日のコトノハ●
第百二十四段
むかし、男、いかなりけることを思ひけるをりにか、よめる。
思ふこと言はでぞただにやみぬべき
われとひとしき人しなければ
『新版 伊勢物語』石田穣二訳注(1979)角川書店
「自分の考えを言うのはやめよう。どうせ自分と同じ考えの人などいないのだから」というこの和歌がしみじみ心に響いたのは、高校生の頃でした。
家族にさえ、自分を理解してもらえないでいた私は何とかして、自分の気持ちを誰かに分かってもらいたいという欲求にとり憑かれていたかもしれません。
それでいて、どうせ話しても分かってくれる人はいないだろうと諦めてもいたので、結局誰にもこの鬱屈した気持ちを言うことはできないでいました。
自分と比べて周囲の人たちは、のびのびと楽しそうに生活しているように見えましたし、私が抱えている胸の苦しさなど信じてもらえないだろうと思っていました。
ですから、こんなことで苦しんでいるのは私だけだと思って、そんな自分が社会の中で異端者のように仲間外れにされているような気でいたのです。
そんな時に、ふと手にした本『伊勢物語』の中にこの和歌を見つけたのです。
そして、私は自分がうっすら感じていたことが間違いではなかったと思い嬉しくなりました。
同時に、在原業平という決して身分が低くなく、才能に恵まれた人でさえ、そんなふうに人間関係に悩んでいたということに驚かされました。
私が生まれる何百年も前に、私と同じような悩みを抱え、同じような結論に到達していたことをその時初めて知りました。
この種の問題に関しては、良い解決方法がないということも。
今の私は、意見の一致を見ない人とは話し合いの場を持たないようにしています。
話し合うだけ、時間と体力の無駄だということを今までの経験から悟っているからです。
また、人の心理について解説や考察している本を多く読んだりもしました。
私の場合、最も身近な人間関係である親との関係があまり良好ではありませんでしたし、学校や職場での人間関係をどう構築したらいいのかも分からないままでいることをストレスに感じていたので、無意識のうちに、日常生活の中で問題解決のヒントになりそうなものを探すようになっていたと思います。
今でも人間関係で悩んで傷つくことがあると、この和歌を心の中で思い返します。
すると、憤りや不満が少なからず解消されるのです。まさに、言葉の魔力とでも言えそうですが、とはいえ、あまりにも真理を言い当て過ぎていて、寂しいような、悲哀のようなものを感じることもあります。
おそらく、それが人間関係というものなのでしょう。
ヒトコトリのコトノハ vol.42
=====
▼本の林の管理人ハヤシさんがお送りしています。
☆Tumblr www.tumblr.com/honnohayashi
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第百二十四段
むかし、男、いかなりけることを思ひけるをりにか、よめる。
思ふこと言はでぞただにやみぬべき
われとひとしき人しなければ
『新版 伊勢物語』石田穣二訳注(1979)角川書店
「自分の考えを言うのはやめよう。どうせ自分と同じ考えの人などいないのだから」というこの和歌がしみじみ心に響いたのは、高校生の頃でした。
家族にさえ、自分を理解してもらえないでいた私は何とかして、自分の気持ちを誰かに分かってもらいたいという欲求にとり憑かれていたかもしれません。
それでいて、どうせ話しても分かってくれる人はいないだろうと諦めてもいたので、結局誰にもこの鬱屈した気持ちを言うことはできないでいました。
自分と比べて周囲の人たちは、のびのびと楽しそうに生活しているように見えましたし、私が抱えている胸の苦しさなど信じてもらえないだろうと思っていました。
ですから、こんなことで苦しんでいるのは私だけだと思って、そんな自分が社会の中で異端者のように仲間外れにされているような気でいたのです。
そんな時に、ふと手にした本『伊勢物語』の中にこの和歌を見つけたのです。
そして、私は自分がうっすら感じていたことが間違いではなかったと思い嬉しくなりました。
同時に、在原業平という決して身分が低くなく、才能に恵まれた人でさえ、そんなふうに人間関係に悩んでいたということに驚かされました。
私が生まれる何百年も前に、私と同じような悩みを抱え、同じような結論に到達していたことをその時初めて知りました。
この種の問題に関しては、良い解決方法がないということも。
今の私は、意見の一致を見ない人とは話し合いの場を持たないようにしています。
話し合うだけ、時間と体力の無駄だということを今までの経験から悟っているからです。
また、人の心理について解説や考察している本を多く読んだりもしました。
私の場合、最も身近な人間関係である親との関係があまり良好ではありませんでしたし、学校や職場での人間関係をどう構築したらいいのかも分からないままでいることをストレスに感じていたので、無意識のうちに、日常生活の中で問題解決のヒントになりそうなものを探すようになっていたと思います。
今でも人間関係で悩んで傷つくことがあると、この和歌を心の中で思い返します。
すると、憤りや不満が少なからず解消されるのです。まさに、言葉の魔力とでも言えそうですが、とはいえ、あまりにも真理を言い当て過ぎていて、寂しいような、悲哀のようなものを感じることもあります。
おそらく、それが人間関係というものなのでしょう。
ヒトコトリのコトノハ vol.42
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