あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

花冷えし真白の脚に(京スタ)

2020年03月26日 | BLE◆CH関連

 

 

BLE◆CHの「京楽×スターク」です。マイナーCPですが愛はあります。

腐表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<花冷えし真白の脚に>


冬の寒さも終わりを告げ、日中暖かくなって来た初春。
京楽邸の中庭を陣取る白縞の大木を指差し、
スタークは京楽に「あれはどんな花が咲くんだ」と問うた。
大木は数え切れない程の小さな薄桃色の蕾を膨らませて居て、
蕾達は今にも音を立てて咲かんばかりだ。
京楽は一瞬目を見張るが、すぐに優しい笑みを浮かべ、
「もうすぐ咲くよ。そしたら、一緒に花見をしよう」とスタークの頭を撫でながら囁いた。
記憶の欠損。
先の闘いで重傷を負った処を秘密裏に拉致されたスタークは、
十二番隊隊長涅マユリに拷問紛いの実験を繰り返された。
その為、京楽達に救出、保護されてからも日常生活の中でさえ度々記憶の欠損が見付かった。
支障とまでは行かない。
それは些細な事ではあったが、桜を見て花見をする事や、
食べ物であるかの判断など誰かが付きっ切りで見てやらないと心配な状況ではあった。
京楽は春の日に桜が舞い、その樹下で笑うスタークを想像してみた。
それは胸を打つ程美しいのに、何故か寂しく、物悲しい情景だった。
その日の夜。
荒い息の音と乱れた霊圧の波動に、京楽はすぐに目を覚ました。
いつも胡乱気な眼差しは獰猛な肉食獣のように光り、すぐに状況を把握する。
俊敏に身を起こし、隣の部屋に通ずる襖を勢い良く開け放つ。
部屋の真ん中に敷かれた布団から覗く、女性のような細い肩が小刻みに震えて居た。
京楽はすぐに駆け寄り、身体を抱き起こした。
額に浮かぶ玉のような汗が寝巻きの襟に染みを作る。
スタークは眉間に皺を刻み、ぶつぶつと何かを呟いていた。
目の焦点が合って居ない。
悪夢から逃れ、現に戻って来たというのに、心はまだ戻り切って居ないのだ。
誰かに教えて貰わないと戻って来れないのだ。
戻って来たとしても辛く、哀しい現実しか彼には残って居ないとでも言うのか。
京楽は誰にも見せた事のないような憔悴し切った顔で声を荒げた。

「スターク!!スターク!!目を醒ますんだ。此処は僕達の屋敷だよ。大丈夫。もう大丈夫だから!!」

何度も身体を揺すり、軽く頬を叩く。
暫くして稚魚のように、びくりと身体を跳ねさせると、
スタークは京楽の顔を見上げ、恐慌状態に陥った。
抱き締めるその腕から逃れようと、必死に抗い泣き叫ぶ。
その声音は悲痛に京楽邸を響き渡る。
京楽とて八番隊隊長を勤める男だ。
暴れるスタークのか細い腕を繋ぎ止め、怪我をさせないようにその胸の中に抱き込む。
京楽より一周り程細いスタークはすぐに力で敵わない事を理解し、怯えて啜り泣き始めた。
京楽は眉尻を下げて何度もスタークの耳元で囁く。

「僕は何もしないよ。何もしない。ほら、顔を見て。君の知ってる京楽だよ。思い出せるかい」

気の済むまで泣いて、落ち着いたスタークは漸く顔を上げる。
その灰色の瞳に光が戻っていた。
涙に濡れて赤い目許が色香を放っている。
暴れた為、体温が上がったのか肌蹴た寝巻きに汗が染みて、目の毒だった。

「…京…っ……楽さ…っ……」

無意識に零れる涙を堪えているのか、スタークは度々しゃくり上げるが意識は戻ったようだった。
京楽は大きく安堵の吐息を漏らす。
スタークはまた自分が発作を起こしたのだと悟ると、申し訳無さそうに項垂れた。
京楽は微苦笑すると、その汗に濡れた額にキスした。
薄桃色の胸元が覗いているのを必死に見ないようにする。

「そんな顔しない。僕がしたくてしてるんだからね。ほら、風邪を引くから新しい寝巻きに着替えて寝なおそう。
明日はきっとあの花が咲くよ」

桜の開花は安易に予想出来た。
枕元に用意されていた新しい寝巻きに着替え終わると、スタークは不安そうに京楽の袖を握り締めた。
つんと袖引かれ、京楽は現実に引き戻される。

「……汗掻いて気持ち悪いから……京楽さんの布団……行っちゃ駄目か」

寝乱れた布団の上で崩した脚が紺の寝巻きから白く覗いて浮かび上がる。
京楽は無意識に唾を飲み込んだ。
断ることは出来ない。
スタークは不安そうに視線を彷徨わせている。
大の男が添い寝をして欲しいと頼む事が異常だという事は彼も理解出来ているようだった。
そしてそれが彼の自尊心を傷付けている事も判った。
しかしそれ以上に悪夢は彼を苦しめ、追い詰めているのだろう。
京楽はそんなスタークに胸を痛め、覚悟を決めた。
元はと言えば、これは自分が撒いた種だ。
先の闘いでスタークに止めを刺さず、安易に生かした為に彼を永遠の責め苦を強いてしまった結果なのだ。
責任を取らなければならない。
救おうなんて御大層な事は言わない。
だがせめて、彼が生きている限り、これ以上苦しまぬよう、
笑顔で居られるよう寄り添っていこうと決めていた。
掛け布団を捲くり手招きすると、スタークが一瞬花のような笑顔になった。
恥じらいながら横になり、ぽすんと京楽の胸の中に収まる。
太い腕に抱き込み京楽はスタークの柔らかい黒髪に顔を埋めて目を閉じる。
今夜はどうやら花の夢が見れそうだった。

<了>

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9年程前のSSですが、大塚さん×力ちゃんとか萌えしかない。

 

 

 

 

 


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