これはBLE◆CHの「京楽×スターク」のSSの再掲です。
腐的表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。
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<幸せな籠の鳥>
何か羽ばたく音がして、スタークは障子を開け廊下に出た。
中庭を見遣ると小さな碧い羽根。
青い鳥なんて御伽噺の中にしか居ないと思っていたスタークは、
急いで縁石から庭に下り、羽根を拾い上げた。
まだ中庭の木に止まっているかもしれないと周囲を見渡し、その幻のような青い姿を探し求める。
しかし、時が止まったかのように静まり返った中庭に、青い羽根の持ち主は見当たらず、
スタークは小さく落胆した。
暫く縁側に腰掛けたまま掌の中でくるくると羽根を廻して弄ぶ。
小さな羽根は青く光り輝き、今にも消え入りそうな程儚く、綺麗だ。
幸せを運んでくれるという青い鳥。
物語では幼い兄妹が老婆に頼まれ青い鳥を捜し求める。
結末はどうだったのか。
余りにも昔に聞いた話なので、記憶が曖昧になってスタークには思い出せない。
自分がもし青い鳥を掴まえる事が出来たなら、
やはり籠に閉じ込めて幸せになるまで逃がそうとはしないのだろうか。
ふとそんな事を考えてしまう。
いや、結末は思い出せないが、幼い兄妹が掴まえた青い鳥は籠に閉じ込めると、
青くなくなったり、死んでしまったのでは無かったのか。
スタークは思う。
青くなくても鳥なら、自由な空を飛ぶのが何よりの幸せだろう。
それを奪われるのが辛いという事は、自分が良く知っている。
スタークは青い羽根を両掌に閉じ込め、胸に当てると、そっと目を閉じる。
スタークは技術開発局から京楽に助け出され、護廷十三隊の隊主会で保護され、
命を奪われないだけマシだったが、京楽邸に軟禁という条件で生かされている。
当初は羽根をもがれた籠の鳥である事を嘆き、
誠心誠意尽くしてくれる京楽や浮竹にも心を開けなかった。
でも、今は京楽や浮竹、隊長達や副隊長、隊士達でさえ、スタークを尋ね、
親切にしてくれる事を有難いと思うし、感謝している。
破面(アランカル)の身で、元第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)の身で、
いつ殺されてもおかしくない自分。
身体は衰弱して、いつ塵芥になってもおかしくない自分が、
こんなに愛されていいのだろうかと思い悩んだ時も少なくはない。
でも、こんな自分でも求めてくれる人がいるのならば、出来る限り生きたい。
スタークはそう思い直したのだ。
すると包み込むような大らかな霊圧を感じる。
「スターク。晩春とは言え、まだ風が冷たい。そろそろ部屋にお入りよ」
公務が休みの京楽が、いつまでも居室に戻らないスタークを心配して声を掛けにやって来た。
其処でスタークは物語の結末を思い出す。
長い旅をして捜し求めていた青い鳥は、自分の愛する家族の許にあったのだ。
気付かないだけで幸せはすぐ身近にあるのだという教訓の物語なのだ。
スタークは京楽の名を呼ぶと、大きな男は柔和な笑みを浮かべ、傍らにしゃがみ込んだ。
もう青い鳥を探す必要は無い。
幸せは今此処にあるのだ。
目を大きく見開く京楽に抱き着き、スタークはそっと愛する男の温もりに包まれたのだった。
<了>
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解釈間違いでしたら恥ずかしいんですけどw