あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

澄んで流れる水に似て(京浮スタ)

2020年03月24日 | BLE◆CH関連

 

 

「京浮スタ」の再掲です。腐的な表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<澄んで流れる水に似て>


雨乾堂は大きな池の中にある。
池の水は地下水の湧き水が水源で、水は池ながら近くの川に流れている。
循環されるので池の水は常に澄んでいて藻も少ない。
十三番隊隊舎から伸び、畔にも架かっている桟橋からも池の底が見える程に澄み切っている様は、
雨乾堂で療養する主人の心を表しているようだとスタークは思う。
畳に耳を当てるとさらさらと静かな水の流れる音がするのも気に入っていた。

「…で、浮竹さん、何やってんですか」

スタークは切れ長の目を半分開けて呟く。
畳に長い時間耳を当てていると畳の跡が付くと京楽にからかわれるので、
スタークは浮竹に借りた薄い布団の上に一人寝転んでいた。
処が、いつの間にか屏風を隔てて寝ていた浮竹が横に居て、
スタークの髪の毛を手櫛で梳いていたのだ。
最近、浮竹はスタークの髪の毛を触るのが好きで、よく結われたり編みこまれたりしている。
猫っ毛で柔らかい髪質なので、スタークの髪の毛は手触りがとても良い。
触っていると和むと言うのだ。
非難めいた口調だったが、スタークはそれ以上言わなかった。
浮竹がスタークの髪の毛を結って満足した顔で嬉しそうにしているのはスタークも嫌じゃない。
寧ろ、浮竹の体調が少しでも良くなればと思うのだ。
浮竹もそんなスタークの気持ちが分かっているのだろう。

「スターク君の髪は気持ちいいなぁ。頭の形もいい。撫でていると和むよ」

今度は犬にするように頭を何度も撫で続けている。
まるで犬の毛並みを確かめるように後頭部を撫でられ捲くっていると、
スタークも気持ちいいのか微睡んでくる。
次第に下がってくる瞼に抗えないのか、うとうとし出す第1十刃に浮竹は笑みを隠せない。

(可愛いなぁ…可愛いなぁ…)

子供のようににこにこと微笑みながら大の男の後頭部を撫でている姿は、
傍から見ると不気味な事この上ないのだが、
それを指摘してくれる突込み担当の副隊長は今は故人だ。
「独り占めはズルイよ」といつもなら笑って絡んでくるスタークを溺愛している護廷十三隊八番隊隊長も、
朝から虚退治で遠征している。
そう、今は浮竹が独占触り放題なのだ。
その為、自然と笑いが汲み上げて来る。
いつもは胡乱気な表情で憮然としている顔は緊張感が抜け切って、あどけない幼子のようだ。
眼光鋭い薄灰色の瞳も完全に閉じられるのは時間の問題だろう。
それでも力は殆ど失ったとは言っても、スタークは破面(アランカル)、
第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)だった男だ。
幾ら浮竹が顔見知りだとは言え、京楽以外の男に気を許すのは怖いのだろう。
必死に意識を浮上させようと抗っている様子は嗜虐心を誘う。
男なら強引に奪って屈服させたいと思ってしまう。

「京楽が迎えに来たら、起こしてやる。眠るといい」

季節の変わり目だからだろうか。
スタークはまた最近寝付きが悪くなったという。
いつもは飄々としている京楽も、スタークの事に関しては感情を抑えきれない。
遠征に経つ前、スタークを雨乾堂に送って来た際、心配そうに表情を曇らせていた。
そのスタークが眠れそうならば寝かせてやりたい。浮竹もそう思った。

「浮竹さんの手、何か…懐かしい気がするのは…何故なんだろうな」

呟くようにスタークがぽつりと漏らした言葉に、浮竹の手が止まる。
誰に似ているかなんて野暮な事は聴かない。
聴こうにも浮竹はスタークの過去に付いて知っていることは少ない。
京楽に保護されてからの彼しか知らないのだ。
暫くして浮竹はまたスタークを撫でるのを再開する。
スタークは寝息を立て始め、続きは語られることは無かった。
世界でたった一人になってしまった孤独な存在。
藍染に因って創られた不安定な存在。
浮竹はスタークを護ってやりたいと改めて思う。
小波と優しい手で眠りに誘えるのであれば、いつまでも此処に置いてやりたいと思う。
しかし暫くして、近寄ってくる霊圧に気が付き肩を落とすと残念そうに微苦笑した。


「今回の功績で明日、八番隊は休暇を貰えたんだ。だからボクも泊まって行っていいかい?」

京楽はスタークが眠っている事に随分遠くから気が付いていたようだった。
その為、気付かれないように霊圧を下げて雨乾堂にやって来た。
公務を労いつつ招き入れた浮竹に開口一番告げた内容がそれだった。
本人の希望ではなく、折角眠ったスタークを起こしたくないというのが本音だろう。
そして眠っているスタークを眺めていたいというのが真の目的に違い無い。
成長した愛娘を見詰める父親のように、満面の笑みを湛えてスタークの寝顔を見入っている。
飽きないのか出したお茶が冷め切っている。
浮竹は呆れたように溜息を吐いた。

「俺はいいが、お前の寝る布団は無いぞ?スターク君の横になんか寝てみろ。容赦なく蹴るからな」
「え~。ボクはこの子の保護者なんだよ。それに今日は頑張って仕事したんだし、一緒に寝る位許してよ」
「情けない声を出すな。スターク君が起きちゃうじゃないか」

びろんと口許を大きく引っ張って浮竹が京楽をスタークから引き剥がす。
騒がしい周囲を気にも止めず、スタークは珍しく熟睡しつつ夢を観ていた。
小柄でお節介な少女。無邪気で常に自分の事を一番に考えてくれた少女。
大雑把な癖に思い遣りで溢れていた少女。
その半身だった少女は今はもう居ない。藍染の命令を守り、スタークを護る為、
魂の欠片が砕けるまで闘い、独り逝ってしまった。
何故浮竹に触れられて彼女を思い出したのか。そうなのだ。
浮竹はリリネットを思い出させるのだ。
勿論二人は相違点ばかりだ。
だが、無邪気な処や自分に構いたがる処、時折見せる優しい表情など、
幾つも重なる処がある。
だからこそ傍に居て、触れられて落ち着くのだろう。
リリネットがいると言う安心感を浮竹に感じるのだ。
半身を削がれた時の痛み、不安感から解放されるのだ。
それは京楽に因って満たされる気持ちとは少し異なっていた。
虚圏(ウェコムンド)の虚夜宮(ラス・ノーチェス)の自室に居た時のような騒がしさに安堵しつつも、
目を擦り瞼を開けた。

「あ、ほら、スターク君、起きちゃったじゃないか。京楽の所為だぞ」
「酷いなぁ…ボクだけの所為じゃないでしょ」

上半身を起こして幼子のように首を傾げると、
二人の護廷十三隊隊長は副隊長達が危惧する程緩み捲くった顔をした。
スタークが目を擦り京楽を見止めると、小さく「お帰り」と呟いた。
京楽の顔が更に緩む。
浮竹が流石に心配する。
こんな顔を彼の副隊長である伊勢七緒に見られたら、隊長職降格の申請でもされかねない。

「スターク君。今晩は京楽も此処に泊まらせるから、ゆっくり寝ていいぞ」

そう言って浮竹は薄い布団の下に硬めのマットレスを敷き、掛け羽根布団も出してくれた。
療養中とは言え、だいぶ体調は回復しつつあるようだ。
「埃を立てちゃ駄目なんだからボクがやるよ」という京楽の主張も押し切って世話を焼きたがる浮竹に、
スタークは先刻見た夢を思い出した。

「………浮竹さん」

促されて横になってから、スタークがぽそりと呟くのを浮竹は聞き逃さなかった。
顔を近寄らせ「ん?」と笑顔で聴くと、スタークは頬を仄かに染めて視線を逸らす。
暫く迷ってから漸く口を開いた。

「また……先刻みたいに頭、撫でて欲しいんだけど」

えぇぇぇっと涙目になる自称保護者の八番隊隊長を尻目に、浮竹はにっこり笑うと
「あぁ、勿論いいぞ」と力強く頷いた。
不貞腐れて浮竹の布団を占領し拗ねている京楽を無視し、
浮竹はスタークの傍らに座り込むと、再びスタークが寝入るまで、頭を撫でて続ける。
スタークの耳元、遥か下で、雨乾堂の池の水は静かにさらさらと流れ続けていた。


<了>

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リリ=浮竹はちょっと似てる。そんな気がしたのです。

 

 

 

 

 


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