あぽまに@らんだむ

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夜明け頃の霧のよう(京スタ)

2020年03月18日 | BLE◆CH関連

 

 

 

 

最初に再掲した「その噛み痕に牙を」の続き的なSSSです。超絶短いです。

それでもいいよと仰る方は下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓ 甘~~~~いです。砂糖吐きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<夜明け頃の霧のよう>


何度目になるだろうか。
今日も執拗に、京楽はスタークに駄々を捏ねる。
無表情が多いスタークも最近はその所為で眉間に皺が寄って来ている。
此処は、京楽家の屋敷。
スタークに与えられている部屋だ。
朝餉を済ませてだいぶ日が昇って来ている。
いい加減に部屋を追い出さないと、京楽を迎えに来た八番隊副隊長の伊勢七緒にスタークが睨まれてしまう。
こんな情けない声を出していても、一応京楽は八番隊隊長なのだ。
この遣り取りも毎朝の恒例になりつつある。
次第にスタークの眉間の皺が深くなる。
そんなスタークの心配を他所に、京楽は、スタークの折れそうな程細い腰にしがみ付きながら、間延びした甘えた声を出し続ける。

「ねぇ、一回だけでいいから。ね。僕の名前呼んでよぉ」
「………、……、……、…その内な」

散々溜めた挙句、ぽそりと無碍に断られ、京楽は「ぇ~」とまた情けない声を出した。
スタークは大きく溜息を吐くと(俺は、本当にこんな奴に倒されたのか…)
と、がっくりと腰を斜めに落とし、膝を崩した。

「ホント、スタークはつれないねぇ。色町の花魁達だって、もっと優しいよぉ」
「………なら、さっさと女の処へ行け」
「そんなぁ…。冷たいなぁ……、お父さん泣いちゃうよぉ」

今度はスタークのこめかみに音を立てて怒りマークが浮かび上がる。
心無しか緩やかにウェーブした漆黒の髪が穏やかな旋風でも受けたかのように、ふわりと逆立った気がした。
これには幾ら鈍感な京楽でも気付いた。
悪戯が見付かった子供のように、静かにスタークの腰から手を離し、部屋から出て行こうとする。
すると、囁くようにスタークが口を開いた。
その言葉に京楽の琥珀色の瞳が大きく見開かれる。

「………俺が気に入る土産を買って来てくれれば……考えてやる」

背中を向けていても京楽が蕩けそうな程、目許を綻ばせて笑っている事が分かった。
そして京楽もスタークが顔中真っ赤になって照れている事も、その同じ色の耳を見て分かった。

「じゃぁ、頑張って仕事早めに終えて、お土産探して来るよ」

すとんと障子が閉まる音がした。
スタークは火照る頬を手の甲で冷ましながら、小さな吐息を漏らした。
掴みどころが無いから困る。
京楽は、凄く大人なのに、子供みたいなことをする。
分かり易い癖に、絶対に踏み込ませない。
容易く中に入れてくれるのに、彼の一部に永遠になれないような気もする。

「……じゃなきゃ、名前なんて呼べるか……」

スタークは座布団の山に再度寝そべると、浮竹に貰った色鮮やかな手毬を指先で転がしながら目を閉じた。


<了>

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まだまだ「春水」って呼んで貰えない京楽。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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