あぽまに@らんだむ

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風に舞うは紫煙と蝶(京+浮スタ)

2020年03月18日 | BLE◆CH関連

 

 

 

 

BL◆ACHの「京スタ」で腐的な表現が有りますので、自己責任でお願いします。

分からない方は廻れ右して下さいね。

大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。

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<風に舞うは紫煙と蝶>


「ほら、この桃色のお菓子を食べて御覧。桜と餡子で桜の花を模しているのだよ。
素晴らしいだろう。これは栗の毬を抹茶の餡で作ってあるんだ。
勿論、栗は栗の餡で出来ている。どれも美味しいぞ」

若草色の瞳を少年のように輝かせ、十三番隊隊長、浮竹十四郎は説明を続けた。
大きな重箱に丁寧に並ぶ色取り取りの和菓子は皆、職人が精魂込めた一品ばかりのようで、
スタークは姿勢を崩したまま聴く訳にもいかずのろのろと畏まり、ちょこんと正座する羽目になった。
浮竹の熱弁は続く。
スタークが技術開発局から助け出され、京楽の屋敷に囲われてから数ヶ月が経った。
十刃(エスパーダ)として力の大半を失い、体調を崩しがちのスタークは
虚圏(ウェコムンド)の虚夜宮(ラス・ノーチェス)に居た頃のように、
居室に篭もりがちになり、クッションの代わりに高級綿の入った座布団を積み重ね、
その上で寝入るようになった。
一日の大半を眠りに要し京楽の帰りを待つ。
そんな毎日だった。
そんな中、スタークを心配して八番隊副隊長である伊勢七緒や、十三番隊隊長の浮竹が毎日のように居室を訪れた。
今日も昼ご飯を食べて暫くして、午後の惰眠を貪っていたスタークの元に、いつものように浮竹がやって来たのだ。
一通り説明を聴き、どれから食べるか執拗に聴かれ答えを窮したスターク
視線を彷徨わせた挙句、「あんたが好きなのでいい」と呟いた。
浮竹は一番食べ易そうな栗を模した和菓子を笹の葉の形の硝子皿に移し、スタークの前に置いてやった。
元々食べる事に余り執着しないスタークは、浮竹が持って来る物全てが初めてみるものばかりで、いつも驚いている様子だった。
特に和菓子に興味を持ったようで、綺麗に形作られた菓子が全て甘過ぎず美味なものばかりなので、口に合ったようだ。
ゆっくりとした動作で、一口ずつ口に入れては少し悲哀に満ちた瞳を細める。
浮竹はスタークのその表情に気付いていた。
甘い綺麗なお菓子。
恐らく彼の一部だった少女、半身だと言っていた少女を思い出しているのだろう。
浮竹はすぐに想像出来た。
自分の中に少しでも残っているかもしれない少女が喜ぶのではないか、
スタークはそう思い、和菓子を口に運んでいる。
その哀しそうな瞳が全てを物語っていた。
全てを諦めたような薄い銀にも見える灰色の瞳。
それは、彼の居た世界、虚圏(ウェコムンド)の空をまだ映しているようで、浮竹は哀しくなる。
彼はまだ、あの男から解放されていない。裏切られても、人形のように捨てられても、
未だあの藍染のものだと言われているようで、苦しくなった。

「ほら、餡子が口に付いているぞ」

いつの間にか横に移動していた浮竹に気付き、スタークが顔を上げる。
すると乳白色の柔らかそうな肌が間近に迫って来て、口許に生温かい濡れた感触があった。
スタークは何をされたのか理解出来ず、伏せられた睫毛を見詰めながら、
(髪の毛は白いのに、睫毛は黒いんだな…)などとぼんやりと考えていた。

「ん、取れたぞ」

獣の親が仔にするかのように、数回口許を舐め終えると浮竹が顔を離した。
どう反応すればいいのか判断出来ないのだろう。
食べ掛けの菓子を掴んだまま、ぽかんと自分を凝視するスタークに、浮竹は暫く笑いを堪えていたが、
とうとう我慢し切れずに盛大に噴出した。
漸く自分がからかわれている事に気付いたスタークは、薄い唇を小さく尖らせ、
「あんたも人が悪いな」と拗ねてしまう。
つんとそっぽを向いて菓子の残りを口に放ったスタークは、「もう寝る」と浮竹に背を向け、ごろりと横になってしまう。
暫く笑っていた浮竹は、そんなスタークに覆い被さると肩に顎を乗せ、線の細い腰に手を当て、
辿るように太股まで手を滑らせていく。

「綺麗な着物だ。純白なのに内側は漆黒なんだね。足許に舞う蝶の刺繍も色取り取りで豪奢だし、君に良く似合ってるよ。
京楽の趣味とはいえ、これ、恐らく特注なんだろうなぁ」

身体の線を辿る浮竹の熱い掌に、時折身を震わせながらスタークは浮竹の言った言葉を頭で反芻していた。
藍染から与えられ着ていた十刃(エスパーダ)の服は、技術開発局で無残に引き千切られてしまったので、
京楽の屋敷に来た頃は、「僕のお下がりで悪いね」と京楽の着物を与えられていた。
傷が癒えて起きられるようになった頃、京楽は「外を歩くのに、いつまでも僕のお下がりじゃ悪いしね」
と今の着物を持って来たのだ。
夜の月のような控え目だが薄く輝くような柄。
物静かなスタークには確かに良く似合っていた。
京楽が職人に特別に注文して作らせたスタークの為の着物。
大事にされている象徴だと思った。頬が熱くなってくる。

「もうすぐ、京楽が帰るよ。一緒に玄関まで迎えに行こう」

急に浮竹が話題を変えると、確かにあの力強い包容力のある霊圧が近くまで来ている事がスタークにも感じられた。
スタークは居ても立っても居られなくなり、畳みに手を遣り半身を起こした。
そして浮竹の存在を忘れてしまったかのように、玄関先の方を向き起き出すと、
障子を開け覚束ない足取りで廊下を行ってしまった。
浮竹はのろのろと重箱の蓋を閉めながら小さく微苦笑した。

「京楽。どうやらお前の片恋ではないようだぞ。…ちょっと妬けるがな」

スタークの半身だった破面(アランカル)の少女、リリネットを救えなかったという小さな胸の痛みを、
淋しそうなスタークを見る度に思い出していた浮竹は、スタークを構う事によって、
その罪悪感から逃れようと思っていた。
しかし償おうという気持ちはいつしか愛しさに変わり、京楽の気持ちを聴きながらその思いを共感するまでになっていた。
スタークの部屋を出ると、京楽の「ただいまぁ」という野太い声が屋敷に響き渡る。
その後、京楽の驚いたような声と笑い声が続く。
恐らくスタークが出迎えに来てくれた事に気付いたのだろう。
満面の笑みでスタークを抱き上げる京楽の姿が容易に想像出来た。
浮竹は数回深呼吸して、自らの両頬を勢い良く叩くと「よし!」と小さく気合を入れ、
玄関に向かって歩き出すのだった。


<了>

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あくまでも「京+浮×スタ」なのです。浮竹は京楽もスタークも大好きな訳で。
でも恋愛とかじゃなく、家族愛的な何か。浮竹も性格が豪傑だからなぁ…。

 

 


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