これは2005年10月23日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。
アポロニアスはアトランディアから出奔し、アリシア城へ身を寄せ、
セリアンと結婚している俺設定になっています。ご注意下さい。
大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。
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<お着替えをどうぞ>
甲高い悲鳴が上がって女官達の軽やかな足音が近付いて来る。
蒼い髪の剣士こと、ナイトシェードは会議の書類をまとめアポロニアスの部屋へ持って行く途中だった。
女官達の悲鳴は確かにこの先アポロニアスの自室から聞こえて来たのだ。
悲鳴と言うには少し違う様だ。
その声色は何故か楽しそうな嬉しそうな感じがしたからだ。
するとまるで脚に翅でも生えているのか全く脚音がしなかったのに、
石畳の階段をアポロニアスが走って降りて来たのだ。
いや、アポロニアスらしき人物と言った方が正しいかもしれない。
その紅い髪の麗人はその豊かな長い髪を右側のみゆるく編み上げ、左側は軽く靡かせている。
その髪で染め上げたかのような薄い桃色のシャツは繊細なレースで品良く飾り立てられている。
細いウエストで絞られ下は鳶色のズボンが良く似合っている。
ナイトシェードはその余りもの美しさに主君を一瞬忘れ見惚れてしまう。
しかし、次の瞬間我に返る。
「シェード!た…助けてくれ…!」
その麗人は確かにアポロニアスの声で助けを求めて来たのだ。然も半泣きの状態で。
「君は居なかったし、態々会議の書類を集めているのに呼びつけては…と、
セリアン直属の女官に着替えを頼んだのだ」
彼を追っているのはやはり女官達だというのだ。
余りにもアポロニアスが怯えているので、追っ手から匿う為に、客人用の控えの間に二人身を隠す。
一息を吐くとアポロニアスは事情を話し始めた。
女官達はぞろぞろと5人もやって来て、
今着せられている服やらびらびらの付いた華やかな衣装ばかりを着せようとしたと言う。
普通の服でいいと必死に訴えても何故か却下され、女性に手を出せないのをいい事に、
羽交い絞めにされ無理矢理着せられたというのだ。
ナイトシェードは段々アポロニアスの親衛隊の勢力が増してきているのを実感した。
最近は自粛させたのだが、プラーナしか採取出来ないアポロニアスへの
「食べ物プレゼント大作戦」が流行った時期があった。
断れないお人好しのアポロニアスは少しずつでも無理して食べてしまい、
軽く衰弱してしまった事があったのだ。
まさか今回の流行は「着せ替え人形で遊んじゃおう大作戦」とでも言うのだろうか。
ナイトシェードは頭を痛めた。
堕天翅族は女性型天翅が少なく、然も慎ましやかな性質な天翅ばかりだったと言う。
その為、女性に免疫の無いアポロニアスはセリアン以外の女性に不慣れだった。
その圧倒的な精神力の強さに押され、嫌と言えないのだ。
セリアン王女もそういう処が無い事も無い。
寧ろその強靭な心に惹かれたのだろう。
しかし、セリアン以外の女性はその面ばかりが目に付いて、すっかりアポロニアスを怯えさせていた。
「こんな服着て…外など歩けない…。それにセリアンやシリウスに見られる位なら霧散した方がマシだ…」
目尻に涙を浮かべ半泣きになっている人間界の救世主に、ナイトシェードは笑いを堪えるのに必死だった。
そして「すぐに着替えを持って来てやる」と三つ編みにされた髪の毛を解きながら、
頬をきゅっと摘んでやる。
むぅと軽く剥れる緋色の主君に蒼い髪の剣士は、更に囁く。
「俺は中々似合っていると思うがな?今度の着替えもビラビラにしてやろうか?」
「なっ…!シェード!!」
真っ赤になって掴み掛かってくるアポロニアスの拳を華麗に避け、
高らかに笑うとナイトシェードは控えの間を出て行った。
<了>
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アポロニアスの正装とか凄く観たかったけど、本編では無かったんですよね。
確か劇場版では緑の甲冑を着ていた気がします。裏覚えですが。