これは、2007年4月3日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。
アポロニアスに関しては俺設定が入っているので、ご注意下さい。
尚、再掲にあたり部分的に改訂していますので、予めご了承下さい。
大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。
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<真昼の舞踏会>
リエール大公の城でパーティが行われていた。
機械天翅アクエリオンの完成とその連勝という活躍を祝うものだった。
勿論、数人のエレメントと搭乗者であるセリアン姫、アポロニアスは招待されていた。
しかし北の都がケルビム兵に襲われ、機械天翅アクエリオンは先程まで出撃していたのだ。
大きなバルコニーから空中庭園に繋がる中庭で真昼のパーティが催されている。
その果てしなく広がる空から金色の機影が現れる。
人々はその雄姿に目を細めた。金色に輝く機械天翅は眩いばかりの荘厳さを秘め、
貴婦人達はその輝きに小さく溜息を吐いた。
着陸地点を探し、機械天翅は周囲を迂回する。
そしてバルコニーの中にリエール大公を見付けるとベクターソルの乗り込み口から、
エレメントが出て来た。
「おぉ、アポロニアス様。お待ちしておりました。さぁ、どうぞ」
リエール大公が親しみを込めて中庭に手招きする。
アポロニアスは既にいつもの緑の甲冑では無く、薄紅色にも見えるシルクの衣装に身を包んでいた。
既に正装して出撃したのだろう。
セリアン姫ともう一人のエレメントはアクエリオンを近くの着陸地点まで移動させるのだろう。
先に主賓でもあるアポロニアスをパーティに送り込むつもりでもあった。
それに、機械天翅から空中を移動出来るのはアポロニアスしか居ない。
アポロニアスは機械天翅から踊るように宙に舞った。
「あぁ!」と言う婦人の声がした。
しかし天翅であるアポロニアスは神話力で飛ぶ事が出来る。
既に背の翅は失ってしまったものの、飛行するのに翅は必要無かった。
踊るようにベールを靡かせバルコニーに、ゆっくりと舞い降りて来る姿は、
老若男女問わず皆、見惚れた。
着陸した途端、ベールが風も無いのにアポロニアスの発する神話力で舞う。
その幻想的な姿に、紳士淑女全て彼を取り囲んだ。
先にパーティに参加していた蒼い髪の剣士ナイトシェードは、想定外の反応に出遅れてしまう。
その為、何重にも取り囲まれた人の壁にアポロニアスに近付く事が出来ない。
元々人との触れ合いが苦手な性質なのだ。
酷く動揺しているだろうとナイトシェードは焦った。
近くに居たリエール大公は気の優しいアポロニアスの性格を把握していた為、
咄嗟に彼を庇い自分のソファまでリードする事に成功した。
しかし、元々社交性のあるリエール大公のソファは広く、沢山の者が座り込んでしまう。
アポロニアスの横には何故か若い公爵や男爵が陣取り、貴婦人達は近寄る事も出来ない。
「太陽の翼…、いえ、アポロニアス様と呼んで宜しいでしょうか?」
「え…?あ、あぁ、構わない」
「美しい髪ですね。花の香りがします」
「…え?あ…そ、そうか?」
矢継ぎ早に質問攻めに遭い、アポロニアスは既に半泣き状態になっている。
体格のいい麗人が優男達に翻弄され酷く狼狽している姿は、幻滅する処か、
何故か皆ときめいてしまっていた。
何とか救い出してやりたいリエール大公も接客の為、中々アポロニアスに近付く事が出来ない。
ナイトシェードもセリアン姫が来るまではエレメントとして、
アリシア城の騎士として対応しなければならなかった。
その内、若い男爵や公爵達は上手く立ち回れないアポロニアスに味を占めたのか、
一人が手を軽く握って来る。
「この手から炎を繰り出すなど…私は信じられません」
「な…何を…。放してくれ」
力加減が出来ない事を恐れ、アポロニアスは自ら人の手を振り解く事が出来ない。
勢い余って人を傷付けてしまえば、自分の身どころかセリアン、
そしてパーティの主催者リエール大公にまで迷惑を掛け兼ねない。
アポロニアスは小刻みに振るえながら視線を逸らした。
その余りもの初々しさに好色な若き公爵は、大胆にもアポロニアスの腰に手を回して来る。
慣れたこの男にはただの冗談、好奇心であったとしてもアポロニアスはどうしていいか分からず、
緊張しすっかり身体を硬直させてしまった。
「こんなに身体を硬くして…。アポロニアス様、我公爵家のソファにいらっしゃいませんか?
11年もののワインを召し上がって…少し緊張を解してさしあげましょう」
「い…いや…、もうすぐセリアンが来る…から…」
アポロニアスは目尻に涙を浮かべながら、機械天翅アクエリオンの開発兼、
設計者として招かれているのに、何で自分は此処で翅なしの男に弄ばれているのかと自己嫌悪に陥る。
それに、他力本願ながら、いつもならナイトシェードが駆け付けてくれて、救ってくれるのにと思う。
しかし彼に頼り切ってばかりいる自分に更に自己嫌悪する。
ナイトシェードが居なくても、翅なしに対応出来るようにしなければと自分を奮い立たせる。
しかし、窮地の姫を救うのは王子様の役目であった。
「まぁ、アポロニアス。リエール大公に先に挨拶してくれたのね?
私も挨拶して来なくちゃ。エスコートしてくれるわよね?
あ、皆様、主人の相手有難うございます。さぁ、アポロニアス」
太陽の女神と言わんばかりに輝きを放つセリアンの美貌に、男達はすっかり魅了される。
若い公爵もアポロニアスの腰に回されていた腕を、うっかり緩めてしまう。
その隙を逃さずアポロニアスはふわっと宙に舞うと、差し延べてくるセリアンの手を握った。
自信に満ち溢れた金の女神にアポロニアスは微笑み返す。
「私は命尽きる迄、何度でもあなたを救い出すわ」
軽く耳元で囁くセリアンにアポロニアスはつい噴出してしまう。
それは普通逆なんじゃないのか?と囁き返すと、その薔薇色の頬にキスを送る。
その絵画のような二人の行為に、パーティ参加者はただ感嘆の吐息を漏らすのだった。
<了>
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王子様を救いに行くのが王女様でも問題ないですよね。