あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

小さな翅のメロディ(フタバ×仔ニアス)

2020年05月23日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは、2008年4月11日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

80万ヒット御礼のリクエストSSとして書いたSSで、子供の天翅フタバが、仔ニアスと幼馴染だったら・・・

というif設定で書きましたので、腐的表現があります。ご注意下さい。

また、アポロニアスの設定は俺設定なので、予めご了承下さい。

それでも大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<小さな翅のメロディ>


堕天翅の都アトランディア。
生命の樹から生まれ出た高天翅達は、知識の豊富な年長の高天翅に養育される。
幼い天翅フタバはヨハネスの次に神話力の大きいシルハに養育されていた。
ある日、二体で一体の天翅であるシルハが、もう一人天翅を養育する事になった。
そのもう一人の天翅が、大天翅ヨハネスの神話力と技術を駆使して創聖された最後の創天翅だと聴かされる。
フタバも幼天翅ながら勉強は怠って居なかったので、創天翅とはどういう者かは知っていた。しかし知識のみで、限られた居住区内しか知らないフタバは、創天翅に逢うのは初めてだった。
自分やシルハなどの高天翅とは違い、生命の樹から直接産まれない創られた天翅。
自分のように喋るのか、ものを考えるのか、どんな翅を持っているのか、
フタバは好奇心を抑えられず、狭い自分の部屋を飛び廻った。
既にシルハが部屋に来ていて、興奮している様子のフタバを呆れた目で見ている。
シルハがふと顔を上げる。
扉の前に映る小さな影。
フタバの数倍はあろう大きなシルハの身体が起き上がるのを見てフタバはもう一人の天翅がやって来た事に気付いた。
シルハが入るように声を掛けると、少し躊躇うような間の後、滑るように扉が開く。
其処に立っていた天翅にフタバは声を失った。
食い入るように自分を凝視している碧の髪の幼天翅に驚き、その天翅は開いた扉の前で動けないでいる。
暫くしてシルハが部屋に入るように促した。
従順に返事をし、二体のシルハとフタバに何度か視線を遣った後、その幼天翅はフタバの部屋に入って来た。
片方の肩から腰へ巻かれたベルトのみの上半身。
燃えるような緋色の長い髪が、彼が歩いただけでふわりと宙に靡く。
強い光を放つであろう紅玉の瞳は、静かに伏せられ自分の足許を慎重に見ていた。
見れば下半身にも腰を隠す程度の衣服しか身に付けて居ない。
しかしそれが創天翅の証なのだ。
フタバは何故か、細い矢で射抜かれたかのように胸が痛んだ。

「初めてお目に掛かります。創天翅アポロニアスと申します」

幼い創天翅は低天翅がするのと同じように、一人と二体の高天翅に深々とお辞儀をした。
シルハは無言のまま頷くとフタバに自己紹介をするように促した。
何回か名を呼ばれて、自分がアポロニアスと名乗った創天翅に見惚れていたのに気付き、
フタバは青白い程白い顔を真っ赤にして大声で怒鳴った。

「ねぇ!!男の子の天翅だって言ってなかった?」

創天翅とは言え、女性型天翅ならば幼くとも胸は簡単に隠すように義務付けられている。
それが上半身裸となれば、この緋色の髪の創天翅は紛れも無く男性型天翅なのだ。
線が細く、愛らしいので、負けん気の強い少女の天翅にしか見えない。
フタバの主張にアポロニアスは侮辱されたと思ったのだろうか、仄かに顔を赤くして俯いている。
怒りたいのを我慢しているのだろう。
創天翅は低天翅同様、身分が低い。
成人すれば高天翅であるフタバに口答えをするなど許されなくなる。
唇を噛み、じっと耐える。
しかしそれをシルハが嗜めた。
アポロニアスに女天翅みたいだと連呼するフタバを黙らせ、自己紹介をさせる。
これから二人はシルハの許、共に学ぶ事になるのだ。
それは、数少ない幼天翅として我侭に育てられたフタバに、競
争心や協調性を身に着けさせる為であったが、事は思いも寄らない事に発展するのである。

 

緋色にも金色にも見えるアポロニアスの双翼。
それは神話力に比例するのか、彼の身長を遥かに超え、横に拡げると狭いフタバの子供部屋、一杯になる程大きかった。
フタバの神話力も幼いながら決して小さい訳ではない。
ただアポロニアスがずば抜けているだけなのだ。
戦闘訓練と称して何回かアポロニアスとフタバは模擬戦闘を行った。
その際フタバは10回に2回勝てればいい方なのだ。
勝てた二回だってまぐれだとしか思えない。
それ程にアポロニアスは強かった。
その細い腕から、折れそうな肢体から繰り出す重い攻撃は、
低天翅達との模擬戦闘しか知らなかったフタバには色々な意味で衝撃だった。
アポロニアスをもっと知りたい。
色々な事を話したい。
自分の事を知って欲しい。
その紅い瞳に自分だけを映して欲しい。
一日の勉強が終わり、アポロニアスは翼を畳み直し、
簡単に翅繕いをするとフタバの部屋を出て行こうと立ち上がった。
しかし扉の前で立ち尽くすフタバに、気の強そうな太い眉毛を不機嫌そうに寄せた。

「私はこれからヨハネス様の処に行かないといけない。其処をどいて欲しい」

通常ならば、創天翅は高天翅には全て敬語を話さなくてはならない。
しかしフタバもアポロニアスもまだ幼天翅なのだ。
共に養育される者として、この期間だけは仰々しい敬語は使用しなくても良かった。
アポロニアスも敬語を少し崩してフタバに対処している。
しかしフタバは退かなかった。
口をへの字に食い縛り、射るようにアポロニアスを睨み付けてくる。
アポロニアスは小さく嘆息した。
フタバがアポロニアスに突っ掛かって難癖を付けて来るのは初めてではない。
寧ろ毎日の恒例となりつつあった。
余程創天翅である自分と机を並べるのが我慢ならないのかと陰鬱になったが、
幾ら自分が嘆いた処で身分が変わる訳ではない。
それに反発したとしてもフタバの怒りを煽るだけだった。
アポロニアスは自然と上手く対処出来るようになっていった。

「君が退くつもりが無いのは分かった。多少行儀は悪いが…仕方無い…」

フタバの部屋には出入り口のほかに直接外に出る為の窓のようなものが一つある。
普段は強力な透明シールドに覆われているのだが、一定の神話力を使えば解除して出入り出来るようになっている。
アポロニアスは其処から外に出るつもりなのだ。
アポロニアスの言葉にフタバはその真意を知り焦る。
一対の双翼を拡げ、アポロニアスは何回か、その場で羽ばたかせる。
抜け落ちた朱色の翅は美しく光を放っていた。

「待てっ!アポロニアス!僕の話を聴けっ!」

飛び立とうとしていたアポロニアスは突如強い力に腕を引かれ、その場に踏み止まる事になった。
そしてその腕の主、フタバを怪訝そうに見詰めた。
共に過ごすようになって長くなるが、こうやって直接触れられるのは初めてだった。
アポロニアスは奇異な者でも観るように、フタバの顔と自分の腕を掴むフタバの機械の手を交互に見た。
咄嗟に耐壊遮断シールドを貼らなければ、フタバの加減の無い力に腕が捻じ切られていたかもしれない。
アポロニアスはフタバの凶行に呆れて、真紅の瞳で睨み付けた。

「腕、痛い。話を聴くから放してくれないか」

フタバは余程思い詰めていたのか、アポロニアスに諭され、やっと我に返った。
そして自分の強引な行為に相手が呆れ返っている事に、更に羞恥を覚え縮こまるように「御免」と謝って来た。
益々フタバらしくない。
アポロニアスは解放された腕を擦りながら、
いつも自分が使っている椅子の上に舞い上がると、重力など何の意味も無いかのように、
ふわりと椅子の背凭れに腰を下ろした。
まるで小鳥のようだ。
細い脚を生意気そうに組んで肘掛に片足を乗せている。
フタバの話が終わり次第、その場をすぐに飛び立つ事が出来るように、
背中の翅は別の生き物のように閉じたり開いたりを繰り返している。
フタバはそれを気にしながら、重い口を開いた。

「あの…さ…、僕…お前に頼みがあるんだ」

この際、自分と同じ位の幼天翅に「お前呼ばわり」された事は我慢しよう。
アポロニアスは形の良い歯をきりりと噛み締め何とか堪えた。
フタバの「話」とやらが終われば、やっと一人きりになれるのだ。
ヨハネスに勉強の報告をしたり、天翅犬達と一緒にいつもの丘で遊ぶ事だって出来るのだ。
それまでの我慢だ。
アポロニアスは、必死に自分を抑え込み、いつまで経っても続きを話そうとしない相手に、先を促した。
頼まれたって相手はフタバなのだ。
幼天翅からの直接命令は執行力を持たない。
要するにフタバに何かを頼まれても言う事を聴く必要は全く無いのだ。

「…で?頼みって?」
「そ…その…、君の…を、僕に……れない?」

アポロニアスは更に眉を潜めた。
いつも大声で「女天翅」とからかってくるフタバとは別人のように歯切れが悪く、
声は小さい為、何を言っているか聞き取れない。
幾ら心の声とは言え、本人の伝える意志が弱ければ相手に、その声は伝わらないものだ。
本来激しい感情の持ち主であるアポロニアスは、はっきりしない事は大嫌いである。
寧ろ好き嫌いがはっきりしているフタバを別の意味で認めていたのだが、
こんな引き止め方は「ただの迷惑」である。
こめかみに怒りマークを浮かび上がらせアポロニアスは言い切った。

「ちゃんとはっきり言い給え!」
「僕に君の翅をくれないかっ!」
「……え?」
「……あ…」

売り言葉に買い言葉では無いが、アポロニアスの喝にフタバは思わず本音を叫んでいた。
咄嗟に出た言葉に思わず自らの口を押さえ茫然と相手を見返した。
茫然としてしまったのはフタバだけでは無い。
言われたアポロニアスでさえ、嫌われているとばかり思っていた相手からの申込みに上手く対処出来なくなっていた。
「相手へ翅の要求をする」という事は、天翅で言う世界の「告白」なのだ。
「君の身体を全て下さい」と言われているようなもの。
熱烈な愛の告白と同じなので、この言葉を遣う天翅は最近は居ない程だ。
翅なしと呼ばれる人間と同様に「好きだ」「愛してる」「翅の契りをしたい」など、
直接的な言い回しが多く遣われているのだ。

「……力一杯お断りだ」

羞恥からなのか、怒りからなのか分からないが、アポロニアスは頬を真っ赤に染めて呻くように言い放った。
フタバは駄々っ子のように「ええええええええ」と不平の声を漏らした。
その返答はアポロニアスの怒りを更に煽った。
いつも冷静沈着な彼とは違って声を抑えようともしない。
歳相応の反応を示した。

「そう言われて「はい、どうぞ」と私が簡単に翅を渡すとでも思っていたのか、傲慢な!
毎日口を開けば私の悪口ばかり言っている君に私が好感を持っている筈が無いだろう!
然も私は君と同じ男性型天翅だぞ?高天翅として将来を約束されている君なら、
どの女性型天翅とでも婚約出来る。寝言は寝て言い給え!」

長い台詞を一息で言い切ったアポロニアスは、
激しく息をしながらもう用は無いと言わんばかりに背の双翼を数回羽ばたかせた。
今にも飛び立つつもりだろう。
しかしフタバは諦めて居なかった。

「僕は君が好きだっ!」

形振り構わず叫んだフタバに驚いて、アポロニアスは再び彼を見た。
今度は不快を示す眼差しでは無かった。
今、初めて告白されたような驚いた幼天翅の顔をしている。
フタバも、いつも人を小馬鹿にしたような表情ではなく必死で、
何とかアポロニアスをこの場に止めたい、それだけを願う純粋な瞳をしていた。
アポロニアスは、その瞳の奥から真実を見抜こうとして、ことんと首を傾けた。
伺うような紅蓮の瞳に、フタバは胸をときめかせながら更に告白を続けた。
アポロニアスは黙って聴いている。

「これからは…苛めたりしない。ちゃんと僕が本気だって事、証明するから。だから…」

アポロニアスは開いた翼を大きく振ると、その背に綺麗に畳み込んだ。
フタバはほっと安堵の吐息を漏らす。

「だから、いつか、それが証明出来たら、…僕の婚約者になってよ」


「それで…フタバがアポロニアスにプロポーズしたと言う噂は本当なのか?シルハよ」

謁見の間。円卓の13席に集まる高天翅達の上空。
闇から降臨した大天翅ヨハネスはそれが嘘であって欲しいと願うかのように多少上擦った声で、
自分を護るかのように左右に座する智天翅達に尋ねた。
聴かれたシルハ達も言い辛いのか、口篭りながらも最後には「………はい」と肯定するしか無かった。
勉強の合間にもフタバはアポロニアスに猛烈アプローチを執行し続け、
最初は力一杯嫌がっていたアポロニアスも、フタバの必死な様子と真っ直ぐな本気に絆されて、
最近は余り拒む事も無くなりつつあると言うのだ。
このままではフタバの要求通り、いつかアポロニアスは婚約を受理し、自分の翅を渡しかねない。
そうなればアポロニアスの産みの親でもある大天翅ヨハネスは、
孫同然に可愛がって来た幼天翅フタバに、命の次に大事なアポロニアスを奪われかねない。
心の葛藤は想像を絶する。
シルハは揃って引き攣る顔を懸命に堪えた。

「わしは絶対反対だ!婚約は断じて許さん!」

こうなればヨハネスとて「頑固爺さん行使」である。
創天翅アポロニアスはまだ幼い。
成人していれば天翅同士の結婚に文句は謂えないが、今はまだ彼も幼天翅である。
創造主であるヨハネスに了解を得なければ、婚約とて出来ない身である。
孫のように可愛いフタバに恨まれようともアポロニアスを嫁にやる訳にはいかない。
円卓の13席に座する高天翅達は、これから勃発するであろう、婚約大騒動に痛む予定の頭を抱えたのだった。


<了>

 

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そうしている内にアポロニアスがすくすく育ってしまったとかだったら面白かったのに。
そしてトーマに掻っ攫われるとか。フタバvsトーマとか面白いですね。

 

 


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