これは、2005年10月8日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。
「アポロニアス20お題01.逞しい」で書かせて頂いた作品です。
シリウスがアリシア城時代のアポロニアスの子供という俺設定で展開してます。
大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。
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<逞しい腕は好きですか>
シリウスは鍛錬場までの階段を駆け降りている。
息が切れても構う事なく、その足取りは羽根のように軽やかだ。
今、父アポロニアスは一人鍛錬場で稽古をしているという。
アポロニアスが一人きりで居るのは珍しい事なのだ。
父を独占出来ると考えただけで自然と頬が緩む。
鍛錬場に近付くと剣が宙を斬る音が聴こえて来た。
太陽の翼の力を発現させるとその剣、「天照~アマテラス~」から紅蓮の焔が噴き出るという。
勿論戦場になど行った事のないシリウスには観ることは出来なかったが、
炎を纏う父の壮絶な美しさは容易に想像出来た。
鍛錬場に出るとアポロニアスが丁度剣を鞘に収める処だった。
一足遅かったようだ。
シリウスの姿を認めるとふわっと嬉しそうに微笑む。
どんな厳格な将軍でも魅了してしまう美しい微笑み。
シリウスは一気に駆け寄るとその腕に飛び込んだ。
逞しい腕に抱き上げられると首に手を廻しその顔に頬を擦り寄せる。
「シ…シリウス、汗が付いてしまうぞ」
抱き着いてくるシリウスに驚いてアポロニアスは身体を離そうとするが、
シリウスは逆にしがみ付いて来た。
無理矢理引き離すのを止め、アポロニアスは仕方無いなと背中をぽんぽんと叩く。
アポロニアスは人間ではない。
人間の敵、堕天翅族だ。
そのせいなのだろうか。
アポロニアスは逞しい身体をしているのに、汗を掻いでも何故か花のような香りがした。
それが本来の体臭なのだろうか、優しい仄かな香りは彼の魅力の一つとして多くの者に知られていた。
(ライルの父上などは汗の匂い凄いのに…不思議だな…)
アポロニアスは暫く大きくなった息子の重さに感動していたが、
シリウスを抱き上げたまま近くのベンチに移動するとそのまま腰を下ろした。
シリウスはアポロニアスの膝の上に跨る格好になる。
「乳菓子を貰っていたのだ。食べるだろう?」
ベンチには今で言う牛乳プリンが可愛い携帯用の容器に入って何個も置かれていた。
どう見ても料理番が作ったモノではない。
料理番達のデザートはもっと凝った物なのだ。
じっと不思議そうに見ているとアポロニアスがそれに気付いたように、言い訳する。
「女官達が…その…差し入れてくれたのだよ」
断れなかったのだろう。
乳菓子以外にも幾つもの菓子が横に山積みになっている。
シリウスが黙って見下ろしていると、アポロニアスは恥ずかしそうに俯く。
「甘い物は苦手なのだが…。断れなくて…な…。手伝って…くれるだろう?」
シリウスはにっこり笑うと大きく頷いた。
仄かな花の香りに生クリームとミルクの香りまで混ざって、
アポロニアスはさぞかし美味しそうだろうなと実父に危険な妄想を抱く。
シリウスは蜂蜜の甘さと格闘しているアポロニアスを暫く楽しむと、
ようやく銀スプーンに手を伸ばした。
<了>
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甘い物と格闘する逞しいお父さん萌え!