あぽまに@らんだむ

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脆い心を封じ込めて(セリニアス)

2020年05月20日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは2007年10月26日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

また、「アポロニアス20お題07.脆い心」で書かせて頂いた作品です。

出逢いに関しては俺設定ですので、ご注意下さい。

それでも大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<脆い心を封じ込めて>


同盟国軍の合同会議は平行線のまま、閉会になった。
アポロニアスは退室していく各国の代表を見送りながら人知れず嘆息した。
翅なしの事はナイトシェードやセリアンに聴いて理解したつもりではあったが、
これ程に権力・利益・私欲に貪欲だとは思わなかった。
結局、同盟国軍はアポロニアスがいるアリシア王国に殆んどの責務を押し付け、
いざとなれば真っ先に自国を守護せよと主張してきたのだ。
隣に控えるナイトシェードも微苦笑して小さな声で話し掛けて来る。

「失望しただろう?だが、まだこんなものじゃないぞ」

アポロニアスはぎくりとしてナイトシェードを振り返った。
そして嬉しそうに目を細めると「私が愛したのがアリシア王家のセリアンで良かった」と微笑んだ。
ナイトシェードも微笑み返す。
先代の王が急死し、病で臥せっていた先代王の弟がセリアン姫の父親だった。
先代王は嫡子を授からなかったのだ。
伯母である王妃が女王になるという話も上がったが、結局は男子である現国王が後を継ぎ、
身体の弱い王に代わって姫将軍であるセリアンが殆んどの指揮を取っていた。
そんな戦の中、アポロニアスとセリアンは運命的な出会いをした。
アポロニアスはセリアンと最初に心を交わした日に思いを馳せた。
最初はただ出会えば剣を交えた。
しかし剣に真っ直ぐに向かい合い、打ち込んでくる乙女の真摯な瞳に、
アポロニアスは次第に心惹かれていった。
そしてセリアンは、殺戮の天翅アポロニアスの瞳の奥の哀しみを見抜いた。
そしてセリアンはある日、アポロニアスにこう言ったのだ。

「何故、あなたはそこまで1人なの?」

衝撃だったのだ。
その短い言葉に全てが詰め込まれていた。
アポロニアスの孤独も、哀しみも、彼女からの労りも、愛も、その全てが包まれていた。
セリアンと闘う際にいつも使う短剣の手が止まる。
勢い余ったセリアンの片刃の剣がアポロニアスの手甲に食い込んだ。
セリアンは息を呑む。

「私にそんな事を言ったのは、お前だけだ。翅なしの女よ」

セリアンは用心しながらも、ゆっくりと剣を引いた。
アポロニアスの瞳から戦意が消えているのを確認すると鞘に素早く剣を収める。
血を流すままにしているアポロニアスの手の甲を気遣い、
懐から清潔な手拭を取り出すと、口で端を咥え引き裂く。
そしてセリアンは躊躇いながらもアポロニアスの手の甲に触れた。
アポロニアスは一瞬びくりと硬直するが、セリアンの心配気な表情に警戒を解く。
大人しくされるがまま介抱された。

「あなたは強い。太陽の翼。でも、私は…」

手の甲に布を巻き終えると、言い難そうにセリアンは口を噤んだ。
アポロニアスは促すように顔を傾ける。
セリアンはちらっと彼を見遣ると意を決して口に出した。
羞恥に頬を染めている。

「私はあなたを倒さなければと思いながらも、あなたを護ってあげたいと思ったのよ。
おかしいでしょ。笑えばいいわ」

アポロニアスはきょとんと有り得ない表情をセリアンに見せた。
その顔を見て、今度はセリアンが呆然としてしまう。
何て無防備な顔をするのか。
彼は本当に太陽の翼、殺戮の天翅なのか。
セリアンは目を疑う。
もしこの表情が彼の真の姿なのであれば、この闘いは彼をどれだけ傷付けているのか計り知れない。

「名を…、いや、最初に名乗っていたな。…セリアン。君はセリアンだったな」

立ち上がった深紅の髪の男にセリアンは手を取られ、共に立ち上がる。
紅玉の瞳に自分が映っている。
幻想的な程の美しさだ。しかし炎のような赤は冷たく、そして寂しい。

「そうよ、アポロニアス。私はセリアン。アリシア王スヴェンの娘、セリアン」

意志の強い瞳が見返して来る。
澄み切った空の様に深い蒼。
非力な翅なしの王女でありながら、自分を護りたいと言ってくれた娘。
アポロニアスはその時、本当に恋に堕ちたのだ。
彼女はアポロニアスの認めたくない弱い自分を見抜いた。
そしてその上で彼を愛してくれたのだ。
薔薇色の頬を染め、微笑むセリアンにアポロニアスは全てを捧げようと誓ったのだ。
例え、何を犠牲にしても。

「アポロニアス、シリウス王子の処にでも行くか?」

傍らに控えていたナイトシェードが物思いに耽っていたアポロニアスを気遣って声を掛けて来る。
我に返ったアポロニアスは恥ずかしそうに頷くと促されて会議室を出た。
各国の代表達が滞在している棟を通ると、
視覚・聴覚など感覚が人間の何倍もあるアポロニアスは聴きたくもない彼等の会話が聞こえてくる。
それは耳を塞ぎたい程の内容で、アポロニアス自身を疑うものもあった。
哀しそうに唇を噛み締めると足早に去ろうとするアポロニアスに、
ナイトシェードは大体の事情を察し離れず付いて来る。
アポロニアスは再度思い出す。
あの時、誓ったのだ。
セリアンを護る為なら何でも犠牲にすると。
それが彼の心だろうと。
セリアンにはそれ以上のものを与えて貰ったのだ。
真の安らぎ、そして彼の存在理由を。

「そろそろ王子、喋り出す時期だぞ。楽しみだな」

気遣うナイトシェードが後ろから声を掛けて来る。
アポロニアスは愛する愛息子を思い浮かべ、綺麗に微笑んで見せた。
ふとすると崩れ落ちてしまいそうな脆い心を封じ込めて。


<了>


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捏造ですが、OPの時、こんな会話があったのではないかと妄想してみました。

 

 

 

 

 

 


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