あぽまに@らんだむ

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その噛み痕に牙を(京スタ)

2020年03月17日 | BLE◆CH関連

 

 

 

BLE◆CHの「京楽×スターク」です。露骨な腐の表現があります。

同棲して夫婦になる感じなので、

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<その噛み痕に牙を>


いっそ抱いてくれればいいのに。
スタークは積み上げられた座布団の中でぼんやりと考えていた。
今夜、この屋敷の主である京楽は居ない。
他の隊長数人と出掛けて行ったようだ。

「先に寝てていいわよ」

と京楽の秘書代わりの八番隊副隊長である伊勢七緒が言っていたので、今夜中には帰らないのかもしれない。
ふと顔を上げ外を見遣る。
月灯りが眩しい。
障子が蛍の光のように輝いて見える。
部屋の全面を覆っている障子は綺麗に透かしが入っていて、沢山の色の無い蝶が処狭しと舞っている。
暗闇は此処では珍しい。
昼は太陽、夜は月。
常に明かりが部屋を射し、スタークは一人にならない。
それに呼応するかのように、此処では必ず誰かがスタークを尋ねて来た。
主に主人である京楽だったが、副隊長である伊勢七緒や、京楽と同じ護廷十三隊隊長の浮竹十四郎も頻繁に彼の顔を見に来た。
伊勢は主にスタークの体調管理や身の周りの世話をし、浮竹は部屋に篭もりがちなスタークに色々な土産物を持って来た。
珍しい和菓子や玩具を並べて「さぁ、どれがいい?」と子供のように笑う浮竹に何度心を救われた事だろう。
浮竹は京楽とは幼い頃からの親友で、共に真央霊術院を出て110年もの長い間隊長を勤めていると言う。
二人の会話を聴いていると友人以上の絆を感じられるが、敢えてスタークの前では艶っぽい話は避けているのかもしれない。
あの日。
藍染達と共に現世侵攻の際。
京楽達護廷十三隊の隊長格の死神達と闘った時、確かにスタークは京楽に斬られ地に堕ちた。
闘いの中、半身であるリリネットを失い、主だと思っていた藍染が自分達を救うつもりが無い事を悟り、
このままリリネットの許に逝けると心は満たされた。
しかし、第1十刃、プリメーラ・エスパーダであるスタークを簡単に逝かせてくれる筈も無かった。
闘いの後、虫の息だったスタークは、涅マユリと名乗る十二番隊隊長等に拉致され、言葉では言い尽くせない程、残酷な目に遭わされた。
そして精神崩壊寸前まで追い込まれた処を京楽に救い出された。
錯乱し、子供のように怯えて泣きじゃくるスタークが落ち着くまで京楽は彼を強く抱き締め、
「もう大丈夫だよ」と耳元で何度も囁いてくれた。
心身共に傷が癒えてきたある日、京楽はスタークに言ったのだ。
「僕の家族にならないかい?」と。
リリネットを失い、仲間を失い、たった一人になってしまったスタークは信じられず言葉を失った。
家族の言葉が意味する事は知っている。
しかし人間だった頃の記憶は自分には無い。
そんな自分を何故、家族にしたいなどと考えるのだろう。
困惑顔で視線を彷徨わせるスタークに、京楽は哀しそうに微苦笑して、
スタークの下唇を親指で辿りながら
「答えは急がないから、ゆっくり考えて。いい答え、期待して待ってるから」
と答えを先延ばしにしてくれた。
あれから三日経つ。
京楽は言葉通り答えを急かしはしなかった。
毎日部屋にやって来てはスタークの顔色を確認し、額や目許にキスをすると伊勢に引き摺られて八番隊隊舎へ出掛けて行く。
その繰り返しだった。
京楽家の屋敷では、虚圏(ウェコムンド)の虚夜宮(ラス・ノーチェス)よりも同等か、
それ以上の待遇を受けている。
屋敷に働くものは少ないが、スタークの部屋には必ず誰かが訪れる。
寂しさを感じる暇も無い程に常に誰かが居てくれる。
京楽の家族になれば、永遠に一人にならなくて済むのだろうか。
京楽の家族になれば、彼はずっと自分の傍に居てくれるのだろうか。
スタークは細い形のいい眉を歪めた。
京楽とて護廷十三隊の隊長なのだ。
また藍染のような強い敵と闘う事になれば、傷を負い、死ぬ事もある。
心を許して、彼を受け入れて、半身であったリリネットのように自分の一部になってしまったら、
再び彼を失った時、自分は確実に壊れてしまうだろう。
そう考えると技術開発局で実験材料にされた時よりも恐ろしくなって心が震えた。

「身体だけの関係なら、捨てられても割り切れるのにな」

月灯りの中、スタークは独り呟く。
しかし答えてくれる半身はもう此処には居なかった。

 


京楽家にいる時とは打って変わって最近覇気のない京楽を心配して、浮竹が十三隊隊士を労う序でに京楽を呼び出した。
他の隊士達に適当に飲み食いして帰れと大広間に押し込めた後、贅沢な小部屋に二人で入る。
隙あらば自邸に帰ろうとする京楽を何とか宥め、浮竹は強引に酒を注いでやった。
杯を暫く眺め、京楽は大きな溜息を吐く。

「スターク君の事がそんなに心配か?」

何の前振りも無く、突然浮竹は切り出した。
長い付き合いなのだ。
二人の間で遠慮する事も無い。
京楽は少し間を空けて呟く。

「全てがまだ信じられない、そんな顔をするんだ。彼の名前通り、野生のコヨーテを飼い慣らしている気がするよ」

この僕が不器用なものだよねぇと微苦笑する京楽に浮竹も釣られて口許だけで笑みを作る。
いつも飄々として心情を明かそうとしない京楽が弱音を吐く程、今度の相手には真剣なのだと理解する。
スタークを少しずつ知り始めている浮竹でさえ、困惑しながらも浮竹の持って行く和菓子を口に運び、
目を細めるスタークが愛おしくて仕方無いのだ。
涅マユリの許から救い出し、一緒に暮らしている京楽はもどかしくて辛いだろうと自分の事のように胸が痛んだ。
浮竹の事は京楽が、京楽の事は浮竹が一番良く分かっている。
気の遠くなるような長い時を、当たり前のように共に歩んで来たのだ。
友の願いを叶えてやりたい。
浮竹はその思いを強くする。
一気に煽いで空になった杯にまた溢れんばかりに酒を注いでやる。

「お前の思いは、絶対に通じるさ。俺も協力するから」

病弱とは言うものの浮竹も護廷十三隊の隊長なのだ。
その浮竹に張り裂けんばかりに背中を叩かれ、流石の京楽も酷く咽る。
悪い悪いと焦る浮竹を掌で制し、京楽は苦しさで滲む涙を手の甲で拭った。
外を見遣れば、小さく開いた障子の向こう、高級料亭の中庭にも自邸と同じく優しい月灯りが射し込んでいた。
数時間しか経っていないのに、スタークの薄い灰色の瞳が酷く懐かしかった。
早く帰って彼の硝煙の匂いにも似た体臭を感じたかった。

 


京楽が自邸に戻ったのは、明け方にも近い頃だった。
紺色の空の向こうから淡い朱が滲んでいる。
夜明けが近いのだろう。
京楽は音も無く廊下を進むと、スタークの眠る部屋の前で立ち止まった。
せめて話せなくとも彼のあどけない寝顔を見てから眠ろうと思ったからだ。
京楽家に来た頃のスタークは、毎晩のように魘され京楽を苦しめたが、最近は眉間に皺を寄せる事も無く、
幼子のようなあどけない顔で眠っている。
幾ら力の大半を失ってしまったとしても、スタークは第1十刃、プリメーラ・エスパーダだった男だ。
京楽が気配を殺して部屋に入って来ても、すぐに気怠るそうに目を擦りながら起きてしまうので、
なかなか寝顔を見るのは難しくなっている。

「寝惚けてる顔も、まぁ、可愛いんだけどね」

声を殺してくっくと笑うと、日課となった夜這いに入る。
蝶の透かしが入った障子が音も無く開く。
しかし其処に寝ている筈のスタークは居なかった。
京楽の身体中の毛穴が一気に閉じて獣のように、毛が逆立った。
涅マユリに攫われたのか。
それとも体調を崩して何処かで動けなくなっているのか。
常に冷静沈着で思慮深い京楽が一瞬パニックに陥る。
しかし部屋の主は中庭からひょっこり姿を現した。
線の細い影が薄く伸びて彼を更に儚くさせていた。

「驚かせないでおくれよ」

京楽は額の汗を大袈裟に拭って縁石に置かれた草鞋に足を滑り込ませた。
縁側に佇む京楽に歩み寄りながら、スタークはまるで吸い込まれるかのように、京楽の胸にぽすんと収まった。
京楽の垂れ目が驚愕に見開かれる。

「あんたに、聴きたい事があって、ずっと待ってたんだ」

さり気無く背中に廻される力強い腕を感じながらスタークは言葉を続ける。

「待ってる内に、何か、不安になって来て、部屋の外に出た。それで、縁側から空が明るくなっていくの、ずっと見てた」

京楽がスタークの緩やかにウェーブする漆黒の髪を撫でながら頷く。

「そしたら、外からあんたの霊圧を感じて、暫くしたらあんたが帰って来た」

スタークの頬が心無しか仄かに染まっているような気がする。

「聴きたい事って、何だい?」

スタークの話が一先ず終わった事を確認すると、京楽が話を振る。
スタークは暫く言葉を考えているようだった。
そして躊躇いながら口を開く。

「何で、俺を家族にしようなんて思ったんだ?」

途切れてまた話し出す。

「俺は十刃(エスパーダ)で敵だった男だ。主である藍染の命令で剣を振るい、
あんたにも酷い傷を負わせた。その俺を何故救い、家族にしなきゃならない」

次第に彼には珍しく声を荒げる。

「半身であるリリネットを失い、破面(アランカル)として力の大半を失った俺など、
いい実験材料と思われても仕方が無い。それなのに、」

そこで言葉を区切る。
自分自身で言うのは流石に憚ったのだろう。
唇を噛み、京楽の胸から顔を離すと哀しそうに俯いた。
そんなスタークに京楽は微苦笑すると顎に手を当て上向かせる。
彼が好きなスタークの灰色の澄んだ目が京楽の顔を映し、ゆらゆらと揺れていた。

「困ったね。僕は君にそんな顔をして欲しく無かったから、家族になって欲しいと思ったんだよ」
「え…?」

スタークは一瞬何を言われているのか分からず呆ける。
そしてスタークの問いに答えるように、京楽がゆっくりと語り始めた。

「僕が君と二回目に闘った時の事、あの時の事は常に僕の頭の中から離れなかった。
君はあの時、半身と言ってたリリネットちゃんを失い、迷子の子供のように何度も彼女の名を呼んでた。
窮地に立たされ、藍染を見た時の君の表情。
僕はあの時の君の顔を忘れる事が出来なかったよ。
結果的に君を倒す羽目になったけど、力加減をしてしまった所為で君がマユリに捕らえられたと聴き、魂が凍った」

スタークは京楽の言葉を必死に心に刻み付けているようだった。
スタークの反応を興味深そうに見守っていた京楽を見上げて続きを請う。

「何故…なんだ」

京楽は可笑しなことを聞くとでも言うかのように小さく笑った。
「また君と出逢ったら、君を幸せにしたいと思ってたからだよ」

スタークの瞳が潤む。

「……何で……」
「独りが嫌で、淋しいと死んでしまいそうな君を甘やかせて蕩けさせたいって思ったからだよ」

スタークの冴えた月のような灰色の瞳に小さな涙が浮かぶ。

「……あんた、馬鹿だ…」

頬を染め、困ったように微笑むスタークに、京楽は嬉しそうにはにかむ。

「うん、そうかもねぇ、でも人を見る目はあると思うよ」

そして新しい家族の額に愛おしそうにキスをする。
スタークの精悍な頬に一粒の涙がころりと落ちた。
京楽は羽根枕ほどしかないスタークの痩躯を軽々と持ち上げると、
夜明けと共に薄っすらと消えていく月を二人で飽きるまで眺める。
そう、愛する者を失う辛さは全部自分が背負う。
この孤独な魂を二度と哀しませはしない。
京楽は胸の内で誓う。
そして抱き上げられ、恥ずかしがるスタークに、
「取り敢えず二人の時は、僕を名前で呼ぶこと、ほら、呼んで御覧」
と真顔で言って殴られるのだった。


<了>

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マイナー万歳!!

 

 

 


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