
シルバーグレーの髪が印象的な品の良いおばあさんが
梅の木を見上げながら
『綺麗ですねぇ』
と、ニコニコ笑いながら僕に言った二月
おばあさんに付き添っていた
優しげな面立ちの女性も、同じようにニコニコしていて
体全体を包み込むまろやかな風が
まるで、おばあさんと女性の存在そのもののようで
僕はしばらく
おばあさんと女性の空気まで梅の花と一緒に愛でた
僕も多分、一緒に笑った
その日は
梅の精に会ったかのように春の魔法にかかってしまって
夢と現実の狭間で
白髪のおばあさんに憧れのような気持ちを持って
眠りについた
ほんの一瞬の出会いだったけれど
毎年この時期になると
あの、おばあさんの魔法にかかってしまう
人との出会いは
本当にリアルな魔法だと
梅の香りと、おばあさんが気付かせてくれたのは
こんな暖かな二月のこと