
今日も姉が家にやってきた日曜日
新しく買った楽譜に胸躍らせた、九月最初の日曜日
途切れ途切れに小さな鈴のような虫の声が
一つ二つ…三つ
静かに耳を澄ましていると聴こえてくる
扇風機の音も
パソコンのキーを打つ音も
さらに耳を澄ましていくと、
虫の声は三つばかりでなく、もっとあることに気付く
扇風機の風は僕の左頬に当たり
顔全体を包み髪は小さく揺らされて、
髪が一本、左頬から唇にかけて凭れかかっていることが分かる
感覚を行き渡らせると世の中は面白い
扇風機の回転は柔らかいけど
荒くも感じる、虫の声と比べたらそれは無邪気な程に
この世界は繊細でいて、
荒く、意地悪で、優しく、そして静かな存在が
ベルベットのように全てを包み込んでいると思った時には
『この世界は何て、生きにくいんだろう』
という気分になってはくる
一つ一つのことに気をとられていたら疲れきってしまうものだ
だから、少しでも或る部分を見つけては楽しんでいたいのだ
途切れ途切れでも
それともずっと続くスパイラルでも
軸の定まった光でも
さあ、安らかに息をして居たいと
目をつむるのだ
深く息を吸ってあの笑顔を思い出しながら
虫の音の帳に隠れて、詩を綴り、眠りの島まで漕いで行くのだ
これが詩と言えるのなら
島に着いたら花を渡そう
途切れ途切れでも、永遠のようでも
この世界が
髪一本分の繊細さで鈴のように鳴っているなら