四枚の風景画 ルノワール
『ピエール・オーギュスト・ルノワール』(1841-1919)
今回は『ルノワール』の4枚の絵をご紹介します。
1881年『ルノワール』はイタリアのカプリに行きました。
そのころ彼はそこそこ有名になり代表作《舟遊びする人々の昼食》
を書き上げていました。
そして彼は、イタリアで『ワーグナー』に会いました、
紹介状を紛失して面会には苦労したようですが、無事面会することができ、
翌年1882年には『ワーグナー』の肖像画を描いています。
《The Capri Marina》(1881)油彩 カンバス
この作品は1883年のものです、前回にもお話ししたように、
『ルノワール』が行き詰まり絵が描けなくなった時代です。
最初の作品と比べると全体的に色が暗くなっています。
印象派として活躍していた時代は赤を置いてふんわりと明るい感じを出していました。
少しづ彼の作風が変わってきたということなのでしょうか?
《マリン ガーンジー》(1883) 油彩 カンバス
3枚目の作品は、1888年に書かれています、
1883年以降数年の間、『ルノワール』は『アングル』の作風にひかれていきます。
彼なりの古典への復帰なのでしょうか。
そしてこの年あたりがまた次の段階への移行期でした。
木や、柵の輪郭がはっきりして上の2作より具体的に物が見えます。
そして、空や海は、松の木の間から望む構造になっています。
左の松が前面に出てきて、右側の松は画面上から切れています。
浮世絵の影響でしょうか。
《ブージバル》(1888) 油彩 カンバス
体の自由が利かなくなってきた『ルノワール』は
田舎にコレット荘を建ててそこで過ごすようになりました。
やはり前面に松が描かれていますが、うっそうとした松の繁みは姿を消して、
中央が開け、遠くに雪を頂いた山が見えます。
中景にはまたあの彼らしい柔らかさが戻ってきています。
《カニユー近郊の松》(1910)
こうしてみていくと『ルノワール』の画風の変遷や
心の動きが見えてくるようで面白いです。
参考:アンヌ・ディステル著 『ルノワール』 創元社刊