今日の散歩はここから始めます。
モンパルナス駅に面した「メーヌ通り」を右折します、メトロ「ゲーテ」駅を通り越してすぐの「フォーワッドヴォー通り」Rue Foroidvauxに入ります。
そこはもう「モンパルナス墓地」ツタの絡まった古い壁が墓地の終わりまで続いています、秋の紅葉の季節にはツタの葉っぱが黄色に色づき美しく映えるので、墓地の壁沿いに歩くのも楽しみの一つとなります。
墓地の中にも入ることができます。
フランスの墓地は日本の墓地と違い、それぞれがゆったりとしたスペースを取り芸術的な墓石やモニュメントもたくさんあります。さあ入ってみましょう。
この墓地にはたくさんの有名な人が眠っています、私が手を合わせるのは並み居る有名人の中でもセルジュ・ゲンズブール(1928-1991)です。
ゲンズブールは歌手でデビューしました、その後作詞作曲家としても活躍し、フランス・ギャルやフランソワーズ・アルディーに楽曲を提供しました。彼の歌詞はかなりセンセーションで当時フランスで大きな物議を醸しだしました。
現在70代の人はフランス・ギャルの「夢見るシャン人形」を覚えていると思います、かなりヒットしました。しかしこの歌もかなり意味しんだということを知っていますか?
ゲンズブールのお墓にはいつも生前彼が好きだったたばこと、切符が置かれています。何しろ彼とパートナーのジェーン・バーキンとの仲がうまくいかなくなり、離婚にまで至った原因の一つがたばこだったというほど彼とたばこは切り離せないものだったんです。パリは去年でカルネの発売が停止されてカードになりました、これも時代というべきでしょうが置くものが一つなくなりました。
切符を置くのは彼の出世作である《リラの門の切符売り》にちなんで、ファンがお参りに来た時に置いていくんです。
墓地を歩きながらいつも想像します、ここに居るサルトル、ボーボワールをはじめ歴代の論客たち、音楽家、画家、彫刻家いずれも一癖も二癖のある人たちです。草木も眠る丑三つ時ぞろぞろと墓から起き出してきてたばこを吸い、お酒を飲んで喧々諤々とやり合っている姿が浮かぶんですよね、そしてここにはすでに時はないから19世紀20世紀21世紀の猛者たちが生前の位や貴賤の差もなく、わやわやと論争し、泣き、笑いさざめく様を。
いつか私もその仲間に加わりたいけど、もう場所がないだろうねここには。